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しおりを挟む二つ折りにされていた紙を拾う。
もし手紙だったら、私が先に読んで良いものかしら……。
触った感じ特に危険はなさそうだったため、灯りと紙を交換する感じでそのままマッジョルド殿下へ渡した。
紙を広げたマッジョルド殿下の目が大きく見開く。
次の瞬間、ガチャリ、と鍵の開く音が響き、マッジョルド殿下の肩がビクッと震えた。
「……俺ひとりだけなら部屋に入ってもいい、と」
「よかったですね」
明るい声を出した私とは違って、マッジョルド殿下の表情は暗い。
不安……なのかな。
兄弟ふたりきりで話なんて、今までしたことが無いのかもしれない。
「あの、廊下で待っていても良いか、クルーフォス殿下に聞いていただけますか? マッジョルド殿下が戻られるまで、ここに居たいのです」
話を終えて戻ってきた時の表情によっては、慰めて差し上げたい。
兄弟での話し合いが上手くいかず、つらい想いをしているかもしれないから。
わかった、と言って部屋に入り扉を閉めたマッジョルド殿下。
まずは私がここで待っていて良いかどうかだけ確認して、すぐに戻ってくると思っていたけれど。
予想していたよりも長めの時間が過ぎてから、再びドアが開いた。
「兄上が、貴女は向かいの部屋で待つように、と。あと、これを渡された。暖炉に火がついていないからって」
マッジョルド殿下の手には、ふわふわで暖かそうな毛布。
待っている間、寒くないようにこの毛布を使ってもいいという事かしら。
クルーフォス殿下……お会いした事は無いけれど、もしかしたらお優しい方なのかもしれない。
「ありがとうございます」
「それと先日、我が国で行われた武術大会でアルアスラ王国の参加者が腕に怪我をしたようだが、その者が回復したかどうか知っているか?」
武術大会で腕に怪我をしたアルアスラ王国の参加者……
あの大会に、アルアスラ王国からの一般参加者はいなかったはず。
だから今の話はきっと、シャルマンのフリをして来賓枠で参加した私の事よね。
「怪我はすっかり治っていますし、傷もまったく残ってないです。でもなぜ今、その話を?」
「兄上の席から見えて、気になっていたそうだ」
毛布を私に渡すと、マッジョルド殿下は向かいの部屋のドアの鍵を開けてくれた。
マッジョルド殿下に続いて中に入る。
「自由に過ごしてくれて構わない。では、行ってくる」
マッジョルド殿下が出て行ってしまうと、静かになった部屋がすごく寒く感じた。
貸してもらった毛布の存在がありがたい。
クルーフォス殿下……前世でやったゲームの世界では、亡くなっていて存在感のなかった王子様。
せっかくこうして生きているのだから、戦争の心配がない国になるよう兄弟で手を取り合ってほしい。
毛布も貸してくれて、隣国の怪我人を心配するくらいだから、クルーフォス殿下は思いやりのある方だと思う。
直接話をする事で、ふたりが歩み寄る事ができるといいけど……。
灯りをローテーブルに置く。
ここは人と会う時に使う部屋なのかしら。
応接用のソファとテーブルがあるから。
毛布にくるまり、ソファの端の方に座ってマッジョルド殿下が戻るのを待つことにした。
暖かい……
夕方になり涼しくなってくると、私の身体が冷えないようにクリフがひざ掛けを用意してくれたのを思い出す。
なんか、涙出そう。
クリフと一緒にいられるようになったら、今度は私がクリフのためにひざ掛けを用意しよう。
そしてクリフのためにお茶を淹れて。
クリフの好きな、甘いクッキーを焼くの。
そんな日が来るといいな……
いつの間にかウトウトしていたみたい。
マッジョルド殿下がドアを開く音でハッと現実に引き戻された。
クリフがいない、探す事ができなかったという現実の世界に。
今回もメルヴェイユ王国に滞在できる期間は短い。
クンベル殿下と一緒に明日出国する予定となっている。
いつかクリフに会える日は来るのかな――
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