悪役令嬢は婚約破棄されて破滅フラグを回収したい~『お嬢様……そうはさせません』イケメンツンデレ執事はバッドエンドを許さない~

弓はあと

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「クリフ、とりあえず今日はもう寝なさい。すぐに温かいお粥を作って持ってくるから」

「別に看病なんてしていただかなくても、俺は風邪なんてひかないから大丈夫ですよ」


 学園から帰って濡れた服を着替えたクリフが、目を離した隙にお父様の仕事を手伝っていた。
 ピシッとジャケットを着こなしたクリフの襟首を捕まえる。

 そのまま無理矢理クリフの部屋まで連れて行き、ベッドに寝かせて布団を首までかけた私に対して呆れたような口調。
 私の前でだけ、自分のことを俺って言う生意気な態度。

 そんなところも好きなんだから、イヤになってしまう。
 惚れた欲目というものかしら。


「水遊びをした日の夕方から必ず熱を出していた人が、どの口で言うのかしら」

「それは小さな頃の話でしょう。あの頃とは違いますから」


 上体を起こしベッドに座るクリフ。
 すぐにでも部屋を出ていき仕事に向かってしまいそう。

 熱、本当に大丈夫なの?

 ギシ……とベッドを軋ませて少し乗り、クリフの首筋に左手を当てる。


「え……ヴェレ?」


 時々小さい頃のように愛称で呼んでくれる低い声も好き。

 私の経験上、熱を手で計るにはおでこに当てるよりも首筋や脇の下の方が体温が分かりやすいと思う。
 もう片方の手をクリフのシャツの裾からスススッと差し入れて脇の下に当てた。

 うわ、心臓の音、速くない? 大丈夫?
 でも首筋も脇の下もそこまで熱は高くなさそう、かな?

 ……ん?


「顔、真っ赤よ。これから熱が出るかも。お粥作ってくる間、おとなしく寝ていなさい」

「はい……」と蚊の鳴くような弱々しい声が聞こえた。クリフらしくない声。本当に、大丈夫かしら?



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