【R18】婚約破棄後に異世界召喚されたけど誰かの童貞奪わなきゃ帰れないの！？～誰にでもできる簡単なお仕事と言いますが処女の私にもできますか～

ハグされて

　魔王の顔が、近いっ！

　男性の顔がこんなに目の前にあるなんて、小さな頃お父様にあやされて以来。

　ベッドに沈む私の身体は、腰の辺りで私に跨り私の顔のすぐ横へ手をついた魔王によって閉じ込められていた。

「さっさとしようなんて、そんな簡単に初めてを失うなんて、絶対に許さない」

　怒ってるの……？
　私が、軽く言ったりしたから。
　もしかしたら魔王にだって、初めてを失う時の理想だとか、そういったものがあったのかもしれない。

　魔王の眼の力が強くて、なんだか怖い。
　乱暴に、されたらどうしよう。

　先ほど緊張が解けたのが嘘のように身体が強張った。
　止めようとしても歯が勝手にカチカチ鳴ってしまう。

　そんな私の様子を見て呆れたのか、魔王が小さくため息をつく。

「こんなに震えて、初めてだから怖いのだろう？」

　そっと頬に手を添えられた。
　魔王の手は、思ったよりも温かい。

　そのまま優しく頬を撫でられる。
　なんだか心地いい。

「俺も初めてだが……できる限り優しくするから」

　思わず目を見開いてしまった。
　まさか魔王から、優しくすると言われるなんて。

「だからさっさとしようなんて、そんな風に言わないでくれ」

　魔王が私の上からどいて、私のすぐ横であぐらをかいた。
　そして纏っていたマントを外すと、下に着ているシャツのボタンも外していく。

　ベッドに仰向けになったままその様子を見上げていたけれど、バッと魔王がシャツを脱いだ途端、程よく鍛えられた上半身が露わになったので慌てて目を逸らした。

　何かが面白かったのか、魔王が小さく笑ったような気がする。

　上半身裸になった魔王は私の身体を起こすようにヒョイと持ち上げると、自分の膝の上に座らせた。
　目を柔らかく細めた魔王の、慈しむような視線を感じる。

「こんな感じの服も、よく似合っているな」

　そう言われて初めて、自分の服装が変わっていたことに気がついた。
　大学に通うためのカジュアルな服装とは違う、大きな白い布をパレオのように身体に巻きつけた感じの長い裾のドレス。

　言われるまでこんな事すら気がつかなかったなんて、思った以上に自分は気が動転していたのかもしれない。
　ペタペタと自分の身体を触って確かめてみると、前でクロスした布が首のうしろで縛られていて背中は大きく開いているのがわかった。

「白い肌がとても綺麗だ」

　肌の色を褒められたことなんて無かったから、ボンッと火が点いたように顔が熱くなる。
　白い、と言われたのにきっと身体も薄く色付いてしまったと思う。

　魔王の腕がそっと私を包み込む。
　だから逞しい胸板に、自然と寄りかかるようになってしまった。

　男の人の胸板がこんなに硬いなんて、知らない。

　心臓がバクバクして破裂しそう……。

「これから肌を重ねるのだから、まずは俺に慣れろ」

　大きな手で、頭をゆっくりと撫でられた。