【R18】婚約破棄後に異世界召喚されたけど誰かの童貞奪わなきゃ帰れないの！？～誰にでもできる簡単なお仕事と言いますが処女の私にもできますか～

お互いに初めてですよね

　眩しくてギュッと瞑っていた目を恐る恐る開けてみる。

　目の前に広がる世界は、先ほどまでの宇宙のような光景とはすっかり変わっていた。

　どこかの、部屋……？

　旅行でフランスを訪れた時に見た、皇帝のための夏の宮殿内にある寝室に似ている。
　そして何者かが、キングサイズよりも大きいのではないかと思うくらい巨大なベッドに浅く腰をかけていた。

　時空の番人との話の流れからすると、
　恐らく――

「あ、あなたは、魔王、ですか？」

「いかにも」

　口の端を片方上げて、魔王が笑う。

　意外だった。
　魔王というくらいだから、もっとおどろおどろしい外見を想像していたのに。

　服装は黒いマントを纏っていかにもという感じだけれど、魔王自体は普通の日本人のように見える。

　…………あ……違う。
　『普通』ではない。

　目の前の魔王は、日本人男性の平均よりもだいぶ背が高く足も長いし、顔もかなり優れた部類に入ると思う。
　ダークブラウンの少しふわりとした髪型と端整な顔立ちが、友達が持っている雑誌に載っていた恋人にしたい男性芸能人ランキングで２位だった俳優さんによく似ている。



「愛理」

　魔王に名前を呼ばれた。

「な……ぜ、私の、名前を」
　知っているのですか？と問いたかったのに、喉がカラカラで声が詰まってしまう。

　ふ、と魔王が笑った。

「俺は何でも知っている。愛理がここに来た理由も」

　カーッと顔が熱くなる。
　時空の番人との会話を思い出してしまった。
　ここに来た理由……。


　――童貞を、奪う


「愛理は初めてなのに、できるのか？」

　私を揶揄うような、少し意地悪な声音。
　何でもお見通しだぞ、という感じの魔王の余裕な表情。

　恥ずかしくて、思わず俯いてしまった。

　あ……、でも……、

　顔を上げ、キッと魔王を睨みつける。


「あ、あなただって、初めてのくせにっ！」
「ぐ……ッ！」

　怖い存在なはずの魔王が、私の目の前で顔を耳まで赤く染め視線を逸らした。

　あら？
　なんか、可愛らしいかも？？

　恥ずかしい秘密を暴露され、少し悔しそうに唇を軽く噛み俯く魔王。
　私よりも年上だと思うけれど、まるで少年のようにも思える。

　そんな魔王の様子を見ていたら、自分の中で緊張が少し解けてきたのが分かった。

　今なら、勢いで何でもできる気がする。

　だから、言えた。

「私はあなたの童貞を奪えば元の世界に戻れるんです。だからさっさと性交渉しましょう」

　その瞬間、空気がサッと冷えた気がした。

　許さない……、と呟いた魔王の視線は、鋭い。

　身体がフワッと浮いたと思ったら、次の瞬間には柔らかいベッドに背中を受けとめられていた。