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DTP?
しおりを挟む気がついたら、見知らぬ場所で寝そべっていた。
ゆっくりと上半身を起こし、あたりを見回す。
宇宙って、こんな感じかもしれない。
まわりは夜空みたいに暗いけれど、星のような無数の光が煌めいている。
その幻想的な雰囲気の中で、私が寝そべっていたのは魔法の絨毯のように浮かぶ6畳ほどのコンクリートの塊のような場所だった。
少し離れたところに立つ、銀髪の長いストレートヘアの人物と目が合う。
中性的な容姿を持つその人物は、大きく目を見開いた。
「うひゃぁ、あなたみたいに美しい人、20年以上前に召喚して以来だよ。黒髪が艶々で綺麗だねぇ」
この場所にはふたりしかいなそうだから、今の言葉は私に向けられた言葉だと思うけれど。
私の事を美しいと言うこの人物の方がよっぽど美しい。
妖艶な顔をしているけれど、恐らく男性……かな。
「ここはどこですか?」
よく見ると高校の頃友達が貸してくれた本に出てきた神官のような服装をしている彼に尋ねてみた。
「時空の狭間……ってよく言われる。僕はここの番人。他の世界から召喚された人を、召喚先の世界へ案内するのが仕事」
現実とは思えなくて話についていけない。でもふたりきりだし、お願いするならこの人に伝えないと。
「私、元いた世界に帰りたいのですが」
「あなたは聖女として召喚されたから、勇者が魔王を倒す力をつけるために30年祈り続ければ元の世界に戻れるよ」
ますます話についていけない。
混乱している私に向かって時空の番人だという銀髪の男性が微笑みながら告げる。
「祈るって言っても難しく考えなくて大丈夫。誰にでもできる簡単なお仕事だと思ってくれていいから」
祈り方を教えてくれたけれど本当に簡単だった。
勇者が強くなるように頭の中で念じれば良いだけ。それなら私にもできそう。
でも30年祈った後は元いた場所に戻れるけれど、異世界で年をとった分の年齢は戻らないと言われ愕然としてしまう。
大学のあの場所に戻れるのが30年後……。
そして戻った時に、私は50歳になってるの!?
一大決心して合コンに行こうと思っていたのに!?
「もっと早く元の世界に戻ることはできませんか?」
「早く帰りたいなら、あなたは女性だからDTP貯めれば元の世界へ帰れるよ」
「DTP?」
聞いたことのない言葉。
「それって何ですか?」
「何って、童貞ポイント。知らないの?」
知らない。
え、普通知ってるの?
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