たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。

エピローグ（愛馬チェスナット視点）

「チェスナット、すまないがアイラの方へ行ってくれないか？」

　ん、アイラ様……？
　今日はまだここにいらっしゃらなかったはず。
　
　僕の背中に座るご主人様の重心が動くのにあわせて視線を動かすと、確かに遠くの方からこちらへ向かって歩いてくるアイラ様の姿が見えた。

　僕よりも早く気がつくことができるなんて、ご主人様のアイラ様に対する想いは本当に人間離れしている。

　すぐにでもアイラ様のもとへ行きたいご主人様のために走りだす。
　でも、アイラ様を驚かさないようにしないと。
　お腹の中にいる赤ちゃんがびっくりしたら大変だもの。
　少し手前でスピードを落として、ゆっくりと近づいていく。

　ご主人様は僕から降りるとアイラ様に向かって微笑んだ。

「アイラ、体調は大丈夫かい？　なぜこちらへ？」
「はい、体調は大丈夫です。今日はカムラッド様とチェスナットを絵に描かせていただければと思いまして」
「そうか、でも座って絵を描いていて冷えたらいけない。ブランケットを持ってくるから、少しだけ待っていてくれ」

　着ていた上着を脱いでアイラ様の肩へかけると、ご主人様は僕の背中に跨った。
　ご主人様の合図と共に動き出す。

　アイラ様のそばでは砂埃を立てないようにゆっくりと離れ、充分な距離がとれてからスピードをあげた。

　建物の入口に着くとご主人様は僕からおりて中へと入っていく。
　そんなに時間が経たないうちに、左腕いっぱいに布を抱えて戻ってきた。

　左腕が塞がっているにもかかわらず器用に僕へ跨り、先ほどの場所へと戻る。

　僕からおりると、アイラ様の身体へ次々にブランケットを掛けていくご主人様。

「カムラッド様、これでは手が動かせなくて絵が描けませんよ」

　アイラ様が柔らかく微笑む。
　まるで雪だるまのようになってしまったアイラ様。
　なんだか可愛い。

　そんなアイラ様を見て、ご主人様も目を細めて笑う。
　仲が良くて、羨ましい。

　ああ早く、来週にならないかなあ。
　エマデマド王国に残してきた僕の仲間たち。
　来週になったらエマデマド王国から僕のいるイチーズ王国へ来るらしい。
　約一年ぶりの再会。
　早く会いたい、会いたいよ。



　【完】



　◇　◇　◇　◇　◇　◇　◇
　


　【あとがき】
　ちょっとバタバタしておりまして……っ
　m(__)mエピローグをお待たせしてしまい大変申し訳ありませんでした。
　最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

　年末ですね……慌ただしくて体調も崩しやすい時期なので、読者様もどうぞお身体に気をつけて健やかな新年をお迎えください。