上 下
6 / 8

ゲット♪(第四十四王女スルーフィ視点)

しおりを挟む


「俺ももうすぐ父親かぁ」

 オジャッツが、大きくなった私のお腹を撫でている。
 あの頃、すぐに結婚できてラッキーだったわ。
 
 ひとつ上の学年の卒業パーティーが行われていたあの日。
 人と会うために庭園にいた私は、オジャッツの修羅場を見てしまって。
 それから間もなく、オジャッツが本当に婚約破棄したことを知ったの。

 すぐにでも結婚したい、と伝えたら承諾してもらえて、婚約もせずに結婚した私たち。
 神が味方してくれたのかと思うくらい、ラッキーだった。

「生まれてくる子は男かな、女かな。俺に似ているだろうか、それともキミか、どう思うスルーフィ?」
「ふふ、どうかしらね」

 私に似るといいけれど。
 少なくともオジャッツ、あなたには似ないわね。

 オジャッツは金髪だけど、私の髪の色は赤。
 そして私のお腹にいる子の……父親の髪の色は、青。

 絶対に金髪の子は生まれてこないのよ。

 子どもが生まれたら、自分と似ていない事をオジャッツは訝しがるかしら。

 んー、ま、いっか。怪しまれても。
 オジャッツに文句は言わせないわ。
 だってオジャッツは侯爵家の出身だもの。
 この子は本当に俺の子か、なんて侯爵家出身の分際で王女の私に生意気な口をきいたりしたら許さないから。

「結婚してすぐに子どもを授かって、俺は本当に幸せ者だなぁ」
「そうね、私もこんなに早く母親になるなんて思わなかったわ」

 ほんっと、誤算。
 まさか卒業パーティーのあの日、たった一度の性交渉で孕んでしまうなんて。

 あの日はヤリゲニー王国から短期留学できていたひとつ年上のジョージ第四王子に呼び出されていて。
 卒業パーティーの賑わいに隠れて庭園でシちゃった。

 その後、月の障りが来ないから妊娠を疑って、すでに国へ帰っているジョージ王子に手紙を書いたのに。
 学年の違う私の事なんて知らないという返事に、内心げげッと焦ったわ。

 この国では王家の男性に側室を認めているくせに。
 王女は貞淑さを求められている。

 立場上、人知れず堕胎することも難しい。

 だから考えたの。
 すぐ結婚して、夫となる人に子どもの父親になってもらえばいいと。
 
 赤ん坊は早く生まれてくることも多いから、妊娠期間が少しくらい短いのはよくある事。

 オジャッツはあの日、元婚約者の女性に『たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな』と言っていたくらいだし。
 結婚前の私のたった一度の情事ぐらいでガタガタ騒がないわよね。

 ほーんと、結婚するのに適任の人がいて良かったわぁ。

「ねぇあなた、また少し指がきつくなってきたわ。明日にでも宝石商を呼びましょう、指輪を一緒に選んでちょうだい」
「ぇ、また買うの? そんなにしょっちゅう高価な買い物をして大丈夫なのか?」

 やだわオジャッツったら貧乏くさい心配をして。
 私は四十四番目とはいえこの国の王女なのよ。

「ほら、競馬場とかイチーズ王国の王子たちが運営している施設が国内にいくつかあるでしょう? あの国からの地代収入でこの国は金持ちなのよ。この国の金は王家のお金でもあるの、だから心配しなくても大丈夫よ」

 イチーズ王国といえば同じ学年のリオン第三王子、好みだったのよね……。
 婚約者もいないからモテてたのに誰とも付き合ってないらしくて。
 私もさりげなくアプローチしてたけど見込みが無さそうで、ヤリゲニー王国のジョージ王子に声をかけられたからついそっちに行っちゃった。

 オジャッツもまぁまぁ顔はいいんだけど……、リオン王子の方が断然いい男。
 同じくらい美丈夫なリオン王子のお兄様は、オジャッツの元婚約者と結婚したらしいし。

 あーあ、私ももう少しがんばってみればよかったのかなぁ~





しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」  ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。  何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。  えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。  正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。  どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

処理中です...