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ゲット♪(第四十四王女スルーフィ視点)
しおりを挟む「俺ももうすぐ父親かぁ」
オジャッツが、大きくなった私のお腹を撫でている。
あの頃、すぐに結婚できてラッキーだったわ。
ひとつ上の学年の卒業パーティーが行われていたあの日。
人と会うために庭園にいた私は、オジャッツの修羅場を見てしまって。
それから間もなく、オジャッツが本当に婚約破棄したことを知ったの。
すぐにでも結婚したい、と伝えたら承諾してもらえて、婚約もせずに結婚した私たち。
神が味方してくれたのかと思うくらい、ラッキーだった。
「生まれてくる子は男かな、女かな。俺に似ているだろうか、それともキミか、どう思うスルーフィ?」
「ふふ、どうかしらね」
私に似るといいけれど。
少なくともオジャッツ、あなたには似ないわね。
オジャッツは金髪だけど、私の髪の色は赤。
そして私のお腹にいる子の……父親の髪の色は、青。
絶対に金髪の子は生まれてこないのよ。
子どもが生まれたら、自分と似ていない事をオジャッツは訝しがるかしら。
んー、ま、いっか。怪しまれても。
オジャッツに文句は言わせないわ。
だってオジャッツは侯爵家の出身だもの。
この子は本当に俺の子か、なんて侯爵家出身の分際で王女の私に生意気な口をきいたりしたら許さないから。
「結婚してすぐに子どもを授かって、俺は本当に幸せ者だなぁ」
「そうね、私もこんなに早く母親になるなんて思わなかったわ」
ほんっと、誤算。
まさか卒業パーティーのあの日、たった一度の性交渉で孕んでしまうなんて。
あの日はヤリゲニー王国から短期留学できていたひとつ年上のジョージ第四王子に呼び出されていて。
卒業パーティーの賑わいに隠れて庭園でシちゃった。
その後、月の障りが来ないから妊娠を疑って、すでに国へ帰っているジョージ王子に手紙を書いたのに。
学年の違う私の事なんて知らないという返事に、内心げげッと焦ったわ。
この国では王家の男性に側室を認めているくせに。
王女は貞淑さを求められている。
立場上、人知れず堕胎することも難しい。
だから考えたの。
すぐ結婚して、夫となる人に子どもの父親になってもらえばいいと。
赤ん坊は早く生まれてくることも多いから、妊娠期間が少しくらい短いのはよくある事。
オジャッツはあの日、元婚約者の女性に『たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな』と言っていたくらいだし。
結婚前の私のたった一度の情事ぐらいでガタガタ騒がないわよね。
ほーんと、結婚するのに適任の人がいて良かったわぁ。
「ねぇあなた、また少し指がきつくなってきたわ。明日にでも宝石商を呼びましょう、指輪を一緒に選んでちょうだい」
「ぇ、また買うの? そんなにしょっちゅう高価な買い物をして大丈夫なのか?」
やだわオジャッツったら貧乏くさい心配をして。
私は四十四番目とはいえこの国の王女なのよ。
「ほら、競馬場とかイチーズ王国の王子たちが運営している施設が国内にいくつかあるでしょう? あの国からの地代収入でこの国は金持ちなのよ。この国の金は王家のお金でもあるの、だから心配しなくても大丈夫よ」
イチーズ王国といえば同じ学年のリオン第三王子、好みだったのよね……。
婚約者もいないからモテてたのに誰とも付き合ってないらしくて。
私もさりげなくアプローチしてたけど見込みが無さそうで、ヤリゲニー王国のジョージ王子に声をかけられたからついそっちに行っちゃった。
オジャッツもまぁまぁ顔はいいんだけど……、リオン王子の方が断然いい男。
同じくらい美丈夫なリオン王子のお兄様は、オジャッツの元婚約者と結婚したらしいし。
あーあ、私ももう少しがんばってみればよかったのかなぁ~
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