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面倒を見る
しおりを挟むフォッグ様の財布紛失事件をきっかけに、変わった事がふたつある。
ひとつは、僕に関する事。
シュトルム王太子殿下の勧めで、時期をみて僕がクラウド様とレイン様の恋人だと公表しようという話になった事。
そうすれば僕が平民だという理由で蔑まれる事もやってもいない事で疑われる事も無くなるから、というのが殿下の考え。
それが実現するのはまだいつになるか分からないし、そもそも実現しないかもしれない。
宰相と騎士団長の恋人が同じ人で、しかも男だなんて聞いたら嫌悪感を抱く人も多いだろうから。
「公表するタイミングを作るために私も努力するよ。皆が受け入れられるような状況にしていきたいね」とおっしゃってくれたシュトルム王太子殿下。
もし実現しなかったとしても、シュトルム王太子殿下がそう言ってくれただけで僕は嬉しい。
そしてもうひとつ変わった事は、フォッグ様ご自身の変化。
財布紛失事件前はミチェーリ様のおしめなんて替えた事が無かったフォッグ様。
最近は率先して替えてくれている。
替えられるのはお小水の時だけで、大きい方の時におしめを替えるのはまだ無理のようだけど。
それでも凄い事だ。
前だったら「なんか臭うぞ」って言って部屋を出て行ったっきり、大の時はもちろんお小水の時でもおしめの交換が終わるまで戻ってくることは無かったのに。
それに絵本の読み聞かせも。
前は「言葉も分からない赤ん坊に本を読み聞かせるなんて、そんな無駄な事をしてお前は馬鹿か」と僕に言っていたけれど、今は僕がミチェーリ様に本を読んでいてもただ見ているだけで口を出してくることは無い。
今はまだ、フォッグ様おひとりでミチェーリ様の面倒を見る事はないけれど。
いつかフォッグ様と交替でミチェーリ様のお世話をするようになるのだろうか。
そんな日が来たら、凄く嬉しい。
そういえば昨日フォッグ様は、僕にお茶を淹れろと命じるだけじゃなくて、お茶を淹れる所を一緒に見ていた。
もしかしたらフォッグ様は、自分でお茶を淹れられるように学ぼうとしているのかもしれない。
フォッグ様が淹れてくれたお茶を、一緒に飲める日が来たらなんて幸せだろう。
そうだ思い出した。一昨日は、僕が両手いっぱいに荷物を持っていたら、フォッグ様がドアを開けてくれた。
些細な事かもしれないけれど、前に比べたらフォッグ様が別人のように優しく感じる。
ネージュ様とマリベルさんから最近のフォッグ様の様子について聞かれたので、子どもの面倒を見る事に前向きだと思いますと答えた。
「そうなのね……。実はもう少ししたら、ミチェーリをお城に残して私もシュトルムの公務について行かなければならない日があるの。一泊の予定でできたらマリベルも、私と一緒に来てもらえたらと思っていて……」
「私が一緒に行くのはフォッグ様がもう少しミチェーリ様のお世話をする事ができるようになったら……という話ですが。そうでなければデュオン様の負担が大きくなってしまうので、私はこちらに残ります」
「そうなんですね……」
ネージュ様はマリベルさんに一緒について来て欲しそうだし、その時までにはフォッグ様がもう少しミチェーリ様の面倒を見る事ができるようになっているといいな……。
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