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すっかり打ち解けました
しおりを挟むクラウド様との面談から戻り、フォッグ様の靴を磨く。
その後、部屋で本を読み始めたらフォッグ様が戻ってきたのでお茶を淹れた。
フォッグ様にお茶をだしていると今度はコンコンと部屋の扉をノックする音。
ドアを開けたら、訪問者はマリベルさんだった。
「ネージュ様がお話をされたいとのことです。ミチェーリ様の部屋までお越しいただけますか?」
フォッグ様がすぐに立ち上がる。
「わかった、行こう」
「いえ、ネージュ様が呼んでいらっしゃるのは、デュオン様おひとりです」
「は……、なんだと?」
「ではデュオン様、こちらへ」
怒りの形相のフォッグ様を部屋に残し、なぜ呼ばれたのか不安に思いながらマリベルさんのあとについていく。
部屋に入ると、泣いているミチェーリ様を抱っこしたネージュ様がオロオロしていた。
「来てもらってごめんなさい。ミチェーリが泣き止まなくて」
ミルクも飲んで、おしめも替えたばかりだという。
部屋の温度や湿度も、問題なさそう。
眠たくて、ぐずっているのかな。
許可をもらいネージュ様と交代してミチェーリ様を抱っこする。
そのままゆっくり室内を歩いていたら、ミチェーリ様はすやすやと眠り始めた。
「どうしてかしら、私だといつもなかなか寝ないのに。私の何がいけないのかしら」
「僕は孤児院育ちで子どもを抱っこするのに慣れているから、身体を支える時の安定感とかが長年の経験で身についているだけです。ネージュ様は何も悪くありません」
「でも、私は母親なのに……」
18歳で隣国から嫁いできたネージュ様は、今回が初めての出産だったと聞いている。
王太子殿下と同い年。
ちなみに僕も同じ年齢だ。
「ネージュ様は母親として0歳になったばかりだから、周りの人にたくさん甘えましょう」
「母親なのに甘えていいのかしら……」
「もちろんです。むしろ母親だからこそ周りに甘えるべきだと思います」
思わず力説してしまった。
ネージュ様が、ふふ、と笑う。
「ありがとう、そんな風に言ってもらえて嬉しいわ。ね、これからもミチェーリの事で相談に乗ってくれる?」
「ぼ、僕でよければ喜んで」
「試験の時から、デュオンはみんなと違ったので気になっていたの。もう少し話をさせてもらってもいいかしら」
ベビーベッドが見える位置に配置されたテーブルの席をすすめられ、ネージュ様の向かいの椅子に座る。
マリベルさんが僕の分までお茶を淹れてくれたので恐縮してしまった。
ミチェーリ様はベッドでスヤスヤと寝ている。
最初は緊張したけど、子育てであるあるの話をしていたらいつの間にか打ち解けてきた。
孤児院で僕が赤ん坊のおしめを替えようとした時にお小水を顔へかけられそうになった話をしたら、声を上げて笑っていたネージュ様。
「そうだわ、渡そうと思っていたものがあったの。マリベル、用意して」
マリベルさんが用意してくれたのは、シャツとトラウザーズが数枚。
「これは……?」
「シュトルムが袖を通したもので申し訳ないけれど、よかったら使ってもらえないかしら」
シュトルムって、王太子殿下のお名前……。
「そ、そんな、殿下の服を僕がいただくなんて、恐れ多いです」
「王太子という立場上、献上される品が多くて。あまり着ないでしまったままより、着てもらった方がありがたいの」
確かにその通りかもしれない。
せっかくの服が宝の持ち腐れになってしまうのはもったいないと思う。
ネージュ様にお礼を言って、服を受け取る。
「その服はどうした。ずいぶん上質じゃないか。どこからか盗んできたんじゃないだろうな」
自分の部屋に戻ったら、フォッグ様に声をかけられた。
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