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……病弱な妹?
しおりを挟む「センティア、君との婚約は破棄させてもらう。病弱な妹を苛めるような酷い女とは結婚できない」
……病弱な妹?
はて……誰の事でしょう??
今目の前で私に婚約破棄を告げたジラーニ様は、男ふたり兄弟の次男ですし。
私に妹は、元気な義妹がひとりしかいないけれど。
そう、貴方の腕に胸を押しつけるようにして腕を絡ませているアムエッタ、ただひとりです。
「申し訳ありませんジラーニ様。私には、酷い女と言われる心当たりが無いのですが」
そう伝えたら、ジラーニ様に思いきり睨まれた。
ジラーニ様はシクスセブ侯爵家の次男で私はフォーファイ伯爵家の長女。
自分よりも爵位が下の者に反論されると、すぐに機嫌が悪くなるのはいつもの事。
一部の女性たちからは顔が良いともてはやされているのに、性格が残念でもったいない。
「今朝、食欲が無くて朝食を残したアムエッタを罵っただろう!」
ジラーニ様にベッタリとくっついているアムエッタが、目をウルウルさせている。
ここはフォーファイ伯爵家の応接間。
婚約者のジラーニ様がいらしたと聞いたから顔を見せたら、私より先にアムエッタがいた。
おそらく何かよからぬことをジラーニ様にお伝えしたのでしょう。
「あの時は怖かったですぅ……」
「罵った…もしかして、あの事かしら……?」
昨日私は部屋で本を読んでいて、夕食に向かうのが少しだけ遅くなってしまった。
そうしたら妹のアムエッタが、大きなお肉の入ったビーフシチューとデザートのプリンを私の分まで食べてしまっていて。
今朝、食欲がないと言うアムエッタに、昨日食べ過ぎたのが原因じゃないかしら今度から気をつけてと注意した。
「『あの事』と言うからには、やはり心当たりがあるんだな。まだあるぞ。先週の日曜日、体調が悪くて寝ていたアムエッタを無理やり起こして屋敷の外へ追い出したそうじゃないか!」
「先週の日曜日……ぁぁ、午前中ジラーニ様がこちらにいらした時の事でしょうか? あの日は確かに、寝ていたアムエッタを無理やり起こしましたね」
ジラーニ様は婚約者の私とお茶を飲んだあと、帰ったふりをしてこっそりアムエッタの部屋へ行った。
アムエッタのベッドで、二人が激しい運動をしていたのを私は知っている。
ジラーニ様の浮気については、私が見て見ぬふりをすればいいだけだから誰にも言っていない。
でもあの日の午後、アムエッタは数少ない友人のご令嬢からお茶会に誘われていた。
それなのに、少し昼寝をしたいから、と約束をキャンセルすると言う。
直前までジラーニ様と裸になってあんなに激しい運動をしていたのだから、病気では無いはず。
だからアムエッタを起こして、お茶会へと送り出した。
ただでさえ少ないアムエッタの友人が、これ以上減っては大変だもの。
「悪事がバレて開き直るのか! 本当に酷い女だな、来い、フォーファイ伯爵の所へ行くぞ! 婚約は破棄だ!」
婚約破棄、ですか……。
私たちの婚約はお互いの家の利益のために、両家の親が決めたものですよ?
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