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「挿れるよ」

 お尻の穴にキュッと力が入っているところへ、ゆう君が摘まんでいるであろう座薬が触れる。

「だめッ」

 このまま入れられたら皮膚がひきつれて痛くなる予感しかしない。
 慌てて私は両手をついてグッとベッドを押し、ハイハイの姿勢で首だけゆう君に向ける。

「だめって言われても……自分だと挿れられないだろ?」
「でも、ゆう君、絶対に痛くするもん……」
「そうか……陽奈は痛いの苦手だもんな……」
「うん……」

 ゆう君が、困ったように少し眉間を寄せながら指で摘まんだ座薬を見つめる。
 そして目線は座薬に向けたまま、もう片方の手は自分のネクタイを掴んで器用に首元を緩めていた。

 その何気ない仕草に思わずドキッと心臓が跳ねる。
 なんか、ゆう君が大人の男の人だなぁって感じがして。

 今日のゆう君のネクタイは、以前私がプレゼントした赤いネクタイだった。
 自分でネクタイを選ぶと青系になることが多いゆう君だから、あえて選んだ赤。
 プレゼントしてから、ゆう君がこのネクタイをつける率はかなり高い。

「そういえば、昔、陽奈が自転車で転んだ時に消毒しようとしたら殴られたの思い出した」
「あの時は、傷が沁みて痛かったから……」

 私も、憶えている。
 母の日の花束を買って自転車なのに持ちながら運転して帰った日、ただでさえ危険な運転だったのに下校途中のゆう君を見かけてよそ見までして。

 運転をミスし転んだ私に気付いたゆう君が家に連れ帰って傷の消毒をしてくれたのに、私は消毒が沁みた痛みに驚いてゆう君の肩を拳で殴ってしまった。

 ゆう君を殴ったことは怒られなかったけど、花束を持ちながらという危険な運転をして怪我したことについては、ゆう君にもの凄く怒られたのをよく憶えている。
 
「わかった、陽奈が痛くならないように気をつけるから」

 シュル……と、ゆう君が首からネクタイを外してスーツの上着を脱いだ。

「もう一度、さっきみたいに頭、下げて」
「うん……」

 恥ずかしいけれど、痛くならないように気をつける、と、ゆう君が言うならおそらく本当に痛くならないはず。
 こんな事なるべく早く終わらせたい、という思いもあって素直に最初の体勢に戻った。

 ゆう君に向けてお尻を突き出して、肩と顔はベッドにつける。

「いい子だね、陽奈」

 やった、ゆう君に褒められた。

 こんな状況だというのに、嬉しくなってしまう。

「でも、あの時みたいに殴られたくないから、手は動けないようにしておこうか」
「え……?」

 今、なんて言ったの、ゆう君?
 
 自分で動かしてないのに、両手が自分の背中にまわる感覚。
 驚いて首をひねって後ろを見たら、さっきまでゆう君の首につけられていた赤いネクタイが視界の隅、私の背中のところに見えた。
 背中にあたってくすぐったい。
 手で払いのけようとした……のに。
 両手首がくっついてしまったかのように動かせない。

 あれ……??
 もしかして、ゆう君……
 私の手首、ネクタイで縛った???





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