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公爵令嬢リーベの想い②
しおりを挟むまさか手首を掴まれるとは思わなかったので、目を見開いてストルグ様を見つめる。
ストルグ様は自分でも驚いたように、ぅわ、と声を上げ慌てた様子でパッと手を放した。
「ぁ、えっと……それなら温室の花を見ていかないか? 前に、花が好きだと言っていただろう?」
お茶の席などで話したことを、覚えてくれていたのだろうか。
確かに花は、好き。すごく、好き。
眺めているだけで、幸せな気分になれるから。
本格的に王太子妃教育が始まってからは、ゆっくり眺める時間さえないけれど。
「去年は少ししか咲かせることができない花もあったけど、今年は無事に育てることができたから、ぜひ見てほしい」
「育てる? もしかして、ストルグ様が、ですか?」
信じられない気持ちで尋ねると、そうだ、と肯定の言葉が返ってきた。
逞しく鍛え上げられたストルグ様の立ち姿を眺める。
まだ若いのに、成人した騎士たちに混ざって訓練していることの多いストルグ様。
『王子様』というよりも『騎士』と言った方がしっくりくるような精悍なお姿。
そんな彼が、可憐な花を一生懸命育てている姿を想像してしまった。
花が無事に咲くよう願いを込めながら水をやり、花に元気がなくなると気を揉んだりしていたのだろうか。
「ふふ、可愛い」
思わず心の声が漏れてしまう。
ん……?
ストルグ様が、目を見開いて私を見ていた。
何かに、驚かれている?
あ……、可愛いなんて言ってしまって、失礼だったかしら??
私の心配を打ち消すように、目尻を下げたストルグ様は白い歯を見せて、満面の笑みを浮かべた。
「よかった、そうやって笑えるんだな。笑ったところを見たことが無かったから、心配していたんだ」
笑ったことが無い? 私が??
おかしな事を言う方だ。
先ほど一礼した時も、私は笑みを浮かべていたではないですか。
私、いつも笑っているはずですよ。
王太子妃教育の先生方からも、常に微笑みを絶やさずにいなさい、と言われているから。
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