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王太子アフェクトの想い②
しおりを挟む王太子として生まれた以上、政略結婚からは逃れられない。
だからその相手がリーベであったことは、自分にとって本当に幸運なことだと思っていた。
政略結婚にもかかわらず、好きな女性と結婚できるのだから。
いつか自分の事を好きになってくれるかもしれないと期待していた。
ストルグの温室で眠る、リーベのあどけない姿を見るまでは。
振り向いてもらおうと事あるごとに宝飾品や高級な菓子をプレゼントしてきたけれど、リーベが心から欲していたものは何ひとつ与えることができていなかったと痛感する。
私では、君を本当の意味で幸せにしてあげることができない。
リーベ、できることなら君には好きな相手と結ばれて幸せになってほしい。
ストルグがリーベに好意を持っていることはずっと前から分かっていた。
自分も同じ女性の事が好きだったから、気付くのも当然のことかもしれないが。
周りの者たちは、未だに気付いていないだろう。
18歳から結婚が認められるこの国で、先日18歳の誕生日を迎えたリーベと同い年のストルグに今まで婚約者がいなかったのには理由がある。
私が陛下に、政略に使える駒を手元に残しておくべきだと勧告し続けたからだ。
国内外の情勢は変わるから、と。
実際、私とリーベが婚約した後のラファルツ家でも、領地運営が一時不安定になったことがある。
今は盛り返しているけれど、あの頃は陛下も気を揉んでいたことだろう。
陛下を牽制しつつリーベと円満に婚約解消する方法を模索していたが、イーバル公爵の強勢によりストルグの婚約を遅らせるのももう限界だった。
そんな時に舞い込んできた、隣国フィーネ王女の婚約者の訃報。
あらゆる方面へ情報網を張り巡らせギリギリまで待った甲斐があった。
他国への影響力も強く隆盛を誇る我が国と比べて見劣りする国ではあるが、資源となる有用な鉱物が豊富であることがここ数年で判明した国。
資金難によりその発掘は遅々として進んでいないようだが。
王命により、当時リーベを婚約者として差し出すことになったラファルツ公爵。
野心家ではないから、できることならリーベを王太子妃とすることなく婿をとって自分のそばにおいておきたかっただろう。
良い意味で貴族らしくない方だから、婚約破棄を告げても内心では嬉々として受け入れるにちがいない。
弱小国との婚姻関係を渋る陛下に将来国へもたらす利益をちらつかせて説得し、リーベとの婚約を破棄する承諾を得る。
イーバル公爵のことがあるから、陛下がストルグとフィーネ王女を婚約させることができなかったのは好都合だった。
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