【R18】王太子に婚約破棄された公爵令嬢は純潔を奪われる~何も知らない純真な乙女は元婚約者の前で淫らに啼かされた~

弓はあと

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婚約破棄①

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「リーベ、単刀直入に言うよ。君との婚約を破棄させてもらう」

 まさに『王子様』という肩書に相応しい金髪碧眼の美丈夫が、婚約者を前にしてサラリと口にした。

「……どういうことだ、兄上?」

 王太子の執務室の温度を下げそうなくらい静かに低く響く、第二王子ストルグの怒気を含んだ声。
 兄と同じ髪と瞳の色をしているけれど、王子様然とした容姿の王太子に比べ、ストルグは騎士のように精悍な風貌をしている。

 ストルグの横に少し距離を置いて座っていた公爵令嬢のリーベは、何も言えずに王太子の言葉を受けとめていた。
 王太子アフェクトから婚約破棄を告げられ、固まったように身体を強張らせている。

「よくある話さ。隣国の第一王女であるフィーネ王女の婚約者が先日亡くなられた。そこで国同士の結びつき強化を考えた陛下は、私にフィーネ王女と婚約をさせようとお考えになってね。その話にあちらの国も乗り気なようだ」

 ストルグの怒りをあしらうように、アフェクトが軽く告げる。
 執務室内の応接用ソファで、アフェクトとローテーブルを挟んで向かいに座るリーベの顔は、血の気が感じられないくらい青ざめていく。
 大きめの三人掛けソファに、リーベと間を空けて座っていたストルグは、俯く彼女の様子を横目で見るとグッと膝の上で拳を握った。

「兄上は、それでいいのか?」

「いいも何も、王族にとってより大きな利益をもたらす婚姻関係が優先される。ただそれだけだよ」

「……リーベは、どうなる?」

「恐らく、いやほぼ確実に、カリタスの婚約者となるだろうね」

 アフェクト王太子がそう告げた瞬間、リーベがバッと顔を上げると彼女のピンクゴールドの髪がふわりと揺れた。

「だ、だめ。カリタスにはエレンがいるもの」

 ラファルツ家は一人娘のリーベが王太子の婚約者になることが決まると、リーベの二歳年下のカリタスを跡取りに育てるため親戚から養子に迎えた。
 そのカリタスは、リーベの幼馴染であるエレンとの婚約が決まっている。

「実の娘のリーベと男爵令嬢のエレンなら、君のお父上であるラファルツ公爵はどちらとカリタスを結婚させるかな」

 お金さえつめば、公爵家から男爵家へ婚約解消を言い渡すのは容易いことだ。
 そしてカリタスも、養子の身で自分の婚姻について口を挟むことは難しい。

「嫌です。私のせいで二人の婚約が解消されるなんて、絶対に嫌」

 リーベが手で顔を覆い声を震わせる。
 幼い頃に王太子との婚約が決まっていたリーベは、小さな頃から王太子妃教育のため城に出入りをしていた。
 話をする機会があったから、ストルグもカリタスとエレンのことはリーベから聞いて知っている。
 お互いに愛情を育んできたカリタスとエレンが婚約することを、リーベは自分のことのように喜んでいた。

「……兄上、それなら俺が、リーベを婚約者にもらう。俺にはまだ婚約者がいないし、それで問題はないはずだ」

「ストルグ、君は自分が政略の駒だということを分かってないね。第二王子である君の婚約者の席はイーバル公爵が自分の娘にと狙っているよ。もうすぐ陛下にも打診があるはずだ」

 え……、と目を見開くストルグをアフェクトが一瞥した。




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