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11(太陽視点)
しおりを挟む逃げられないように、琴莉の身体へ覆い被さり唇を重ねる。
――ぁぁ、ようやく俺の腕の中に……。
薄く開いた口へ舌を入れ、琴莉の舌を探して絡めた。
そうしたら驚いたのか、俺から逃げるように奥へと動く琴莉の舌。
ゆっくりと、時間をかけて深く口付ける。
琴莉が怯えないように、優しく抱きしめ頭を撫でながら。
少しずつ、琴莉の身体から力が抜けていった。
小さい頃、怖いテレビを見た日の夜こんな風に琴莉を抱きしめて頭を撫でてあげたのを思い出す。
もちろん今みたいにキスなんてしていないけれど。
あの頃は怖がる琴莉を安心させるために抱きしめていた。
でも実のところ琴莉を抱きしめて安らぎを得ていたのは俺の方だったのかもしれない。
琴莉の身体は、ぷにぷにしていて柔らかくて。
抱きしめているだけで不思議と心が安らぐ、特別な存在。
大切な、大切な宝物。
琴莉はよく自分の事を、そこらへんに石を投げれば当たるようなレベルのいたってフツーの女の子だと言う。
俺にとっては唯一無二の存在なのに。
小学三年の時、クラスのほとんどの女子に好きだと言われた事が原因で、同じクラスの男子ふたりから苛めを受けていた俺。
下校時に傘でつつかれたり、背中を強く押されたりとか、些細なものではあったけど。
そんな時はいつも、一年生でまだ小さな琴莉が泣きながらいじめっ子を追い払おうとしていた。
自分だって怖いだろうに、必死で俺を守ろうとして。
それがきっかけだったと思う。
守られる方じゃなくて、琴莉を守れるような強い大人になろうと決意した。
そのためには勉強も運動も、頑張らないと。
琴莉のためなら努力するのが楽しくて。
俺のした事で琴莉が笑顔を見せてくれると、嬉しかった。
琴莉の笑顔は可愛くて好きだ、俺に力を与えてくれる。
……いや、違うな。
どんな時でも琴莉は可愛くて、存在自体が好きだ。
眉を寄せて真剣に漫画を読みながら、突然泣いたり、頬を膨らませたり、ころころ変わる琴莉の表情が可愛い。
ふっくらとしているからか、頬に触れるだけでいつも癒された。
そんな事を思い出しながら、キスをしたまま琴莉の頬を手のひらで撫で、指先で琴莉の耳を弄る。
苦しそうな、でも甘さを含んだ声が琴莉の口から漏れた。
その瞬間、ズクン、と熱が滾る俺の下半身。
琴莉が愛しいという想いは、幼い頃から変わらない。
純粋に妹として琴莉の事が好きだった、あの頃からずっと。
でもいつからか琴莉に対して感じる好きの意味合いは変わっていった。
妹への愛情から、異性に対する好意へと。
最初にそう気付いたのは、確か中学一年の時。
妹が大好きだなんて俺って変なのだろうか、どうしてこんなに妹を可愛いと思ってしまうんだろう、と毎日のように悩んでいた。
そして俺が中学二年の時に母が――琴莉の母さんが亡くなり、俺たちに血のつながりが無い事を知って。
ショックだったけど、どこか安心もしていた。
琴莉を好きでいてもいいんだ、将来結婚する事もできるんだ、と。
父は琴莉が社会人になったら伝えるつもりでいたようなので、その時が来たら琴莉に好きだと告白しようと決意する。
だからそれまでは、周りにいる男たちから琴莉を守る事にした。
琴莉に彼氏ができないように。
それなのに、俺が就職して海外出張中に彼氏ができてしまうなんて。
学生の時はよかった、すぐそばで守ってあげられたから。
だんだんと慣れてきたのかそれとも抵抗したかったけど諦めたのか、力を抜いてなされるがままに俺の深い口付けを受け入れている琴莉と舌を絡ませながら、俺は高校の頃を思い出していた。
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