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8 最後の花
しおりを挟むリシャードの吐息がかかるだけで熱くなってくる。髪の毛が触れるだけで甘く痺れる。鼻先がかすめるだけで身体の奥がきゅっと切なくなる。
「リシャード……、リシャード……」
まぶたを閉じたフルーラの頬や身体を、何度も花が撫でていく感触がする。恥ずかしくなるほどたくさん降っているのだろうが、もうそれを気にしている余裕はなかった。
「だいすき、あっ……あ、んっ」
リシャードは花芽を優しく吸うと、潤みきったフルーラの秘裂にそっと指を挿し入れた。
「――痛くない?」
自分の身体から聴こえてくる水音を聴きながら、フルーラは切れ切れに返事をする。
「大……丈夫、だけ、ど、熱い……。すごく、熱いの」
リシャードが指と舌を動かすたびに、甘い香りとともに花が増えていく。
「あっ、んん……はぁっ」
息が上がる。心地よさがどんどん高まっていく感覚に、フルーラの身体は震え始めた。
薄暗がりの中、小さな明かりが次々と灯るように色とりどりの花が咲いていく。
小さいころ一緒に見た夕焼けの色。
追いかけっこをした野原に咲いていた花に似た黄色や紫。
リシャードが剣の試合のときに巻いていた帯革と同じ朱。
ダンスを申し込んでくれたリシャードが着ていた深い青。
ダンスを断ったときのフルーラのドレスみたいな薄紅。
純白に一刷毛の紅。リシャードの髪の金、大好きな瞳の琥珀。
「ああぁっ……!」
蝶のように花々が舞う中、フルーラは身体を弓なりに反らせて、生まれて初めて昇りつめた。
「ルラ……」
脱力したフルーラが呆然としながら胸で息をしていると、脚のあたりで衣擦れの音がした。
「リシャード……?」
見てみると、リシャードは何かに急き立てられているかのように着ているものを脱ぎ捨てていた。
少し前にフルーラの衣服を一枚一枚取り去ってくれたときのような丁寧さはなく、勢いよく肌を露わにしていくさまに、フルーラは星のような小花を散らしながら慌てて目を逸らす。
「――フルーラ」
聴いたことのないような熱のこもった声で呼ばれ、思わず視線を戻したフルーラは息を呑む。新しい花たちが躍るように落ちてきた。
引き締まったその身体を、とても美しいとフルーラは思った。その下腹部で逞しくそそり立っているものさえも。
あたりを見回しながら、リシャードは少し安堵したように言う。
「気持ち悪いとか思われてないみたいで、良かった」
ときめいたことを見透かされ、フルーラの頬はさらに赤くなった。
「ず、ずるい……。私ばかり胸の内を知られて……」
「――僕の胸の内だって、よく分かると思うけど」
リシャードは、張りつめた先端をフルーラの秘所に当てる。
「あっ……」
そのままなぞられ、一度達した身体は容易く新たな蜜をこぼした。
「ん……、こ、子供のころと、全然ちが……」
あの日、池から引き上げられた後、フルーラを運ぼうとしたリシャードも服を濡らしてしまったため、二人は一緒に入浴することになった。
「君だって」
荒い息の下で少し笑い、リシャードはフルーラの胸の膨らみに手を伸ばす。
「あ……っ」
「あのころはこんなふうじゃなかった」
可愛らしい頂を摘ままれて、嬌声と共にまた色鮮やかな花が落ちてきた。
「フルーラ……」
熱い塊が、フルーラの秘裂を押し分けて進んでいこうとする。
「んぅ……」
覚悟はしていたが、大きな圧迫感にフルーラは少し怖気づき、リシャードの腕にしがみついた。
「ゆっ、くりするから……」
ごく浅いところを行きつ戻りつするリシャードの切なそうな息づかいに気がついたフルーラは、心を決めたように希った。
「……リシャード、ひとおもいに……来て」
「ルラ……?」
「そうして欲しいの」
透き通るような碧色の瞳で、フルーラは愛する人を見つめた。刻み込んで欲しい。何もかも一生忘れないように。
「いいのか……?」
フルーラは頷いて微笑む。
「リシャード、好き。今夜だけじゃ言い足りないくらい、大好き……」
リシャードはフルーラの蜜にまみれた小さな芽に指を伸ばし、可憐な花をいくつか舞わせる。
「あッ……」
「フルーラ……大好きだ」
そう囁くと、リシャードは細腰をしっかりと掴み、愛する人の望みどおり一気に貫いた。
「っ…………!」
悲鳴も上げられないほどの衝撃に、フルーラは目をぎゅっと閉じて細い首をのけぞらせる。
紅い大輪の花がゆっくりと宙を漂い、ぽとりと寝台の上に落ちた。まるで破瓜の証のように。
「……ルラ……」
リシャードが心配そうにフルーラの髪を撫でるとまぶたが開き、涙をためた碧い瞳が現れた。
「やっぱり辛そうだ」
「……でも、すごく幸せ……」
リシャードがフルーラを抱きしめると、フルーラも汗ばんだ背中に腕を回した。滑らかな素肌の触れ合いが、少しずつ痛みを和らげていく。
ずいぶんと待った後、ようやくリシャードはフルーラを揺らし始めた。
「あっ、あ、リシャード……」
新しい花はもう現れなかったが、二人はお互いの手をしっかりと握り合い、花々の香りに包まれながら一緒に高みへと昇っていった。
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