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☆ショートストーリー☆
年下女騎士は生意気で 6
しおりを挟む去年の晩夏にエルトウィンに戻って来て以来、ふたりが唇を重ねたのは初めてのことだった。
王都からの旅の間、小舅のように目を光らせるキールトの隙をついてフィンがアイリーネにくちづけたことは何度かあったが、どれも瞬きひとつ分ほどの短いものだった。
「んっ……」
今まで自制してきた反動のようにそれはすぐに深くなり、長い長い触れ合いの末に、蕩けきった唇はようやく離れた。
「……不愉快じゃないの?」
顔を赤くしたアイリーネに訊ねられ、フィンは不思議そうに訊き返す。
「なにが?」
「勝手に、うじうじ嫉妬されて……」
フィンはふっと笑った。
「俺には後ろめたいことなんてなんもねえしな。誤解が解けて、おまえの不安がなくなればいいや」
それにしても、とフィンは少し面白そうに言う。
「おまえは、泣くほどやきもちが恥ずかしいんだなあ」
夫婦を演じていた旅の途中で、アイリーネが抱いた嫉妬心をフィンに知られたときもそうだった。
「私心にとらわれるなんて、騎士に相応しくないから……」
また瞳を潤ませたアイリーネを、フィンは優しい眼差しで見た。
「その真面目さだけで十分だと思うぞ」
濡れたまつ毛にフィンの指が触れる。
「騎士の鑑みたいなおまえが涙をこぼすのは、私情が抑えられなくて自己嫌悪に陥ったときと……」
気持ち良くなったとき――と低い囁きが聴こえた次の瞬間、フィンはアイリーネの腕をつかんで立ち上がった。
「え……」
そのまま、すぐそばにある木立の方へと引っ張っていかれ、アイリーネは戸惑いの声を上げる。
「フィン?」
ひときわ大きな木のところで立ち止まると、フィンは幹にアイリーネの背中をそっと押し付けた。
「どうし――」
向かい合ったフィンの顔を見て、アイリーネはハッとする。水色の瞳は、鈍感なアイリーネでも判るほどの熱情を帯びていた。
「え……!? あ、あの、まさか……」
うろたえぶりを目にしたフィンは少し眉を顰め、アイリーネが背にしている木に片手をついた。
「前に俺、『駐屯地を出たら我慢しない』って言ったよな?」
「でっ、でもっ、ここ……外だよ!?」
「だな」
フィンの口角が上がる。
「――で、幸いなことに誰も来そうにない」
「だ、だからって」
「おまえが可愛い顔するから」
「そっ、そんなのしてな……」
耳の下あたりにくちづけられ、アイリーネはびくんと肩を揺らす。
「いっ……今は、勤務時間中……」
「休憩中だろ」
そう言いながら少し身を引くと、フィンは荒っぽく黒い上着を脱ぎ捨てた。
「ちょっ……!?」
ためらいのない手は、素早くアイリーネの上着の前を開き、その下の麻のシャツもたくし上げる。
「だっ! だめ、だめだって」
制止の声を聞き流し、フィンはアイリーネの胸をきつく押さえている布をまじまじと見下ろした。
「これ、どうやってほどくんだ?」
「フィン、聞いて」
「かわいそうなくらい締めつけてるんだな……」
布の上から身体に触れられ、アイリーネは胸元を赤く染める。
「ああ、ここに布の端を差し込んであるのか」
「ま、待って」
「待たない」
長い布がはらはらとほどけていき、白い双丘がぷるんとあらわになった瞬間、アイリーネはフィンの目が実に嬉しそうに輝くのを見てしまった。
まるで、欲しかった贈り物を差し出された少年のような。埋めてあった宝物を見つけた仔犬のような。
――それで、もうアイリーネは強く拒めなくなった。
◇ ◇ ◇
「……信じられない……」
大木に背中を預け、微かな声でアイリーネは呟く。
顔を上げれば、明るい色の新芽をつけた木々の枝と、少し紫がかった浅春の青い空。視線を下げれば――。
「……っ」
アイリーネが上半身に着ていたものは、すでに全て取り去られていた。
白い胸の膨らみには赤い花びらが散ったかのようにくちづけの痕が残され、薄く色づいた先端はすっかり尖らされ……その下には、栗色の髪が見える。
「あ……」
膝立ちになって舌で滑らかな肌をなぞっていたフィンの手が、アイリーネの黒い脚衣にかかった。
「フィン……そ、そっちは本当に待って」
「ん」
そう返しながらも、フィンはアイリーネの脚衣の前をくつろげ、するすると下ろしていく。
「やっ……」
フィンの手がぴたりと止まる。笑ったような息づかいが聴こえてきて、アイリーネはますます顔を赤くした。
「待ってって言ったのに……!」
現れたのは、横で紐を結ぶ短い下着だった。この国の男性が脚衣の下に穿いているのとよく似た形状のものだ。大抵の女性はもっと丈の長いものか、スカート型のものを着用している。
「脚衣のときはこの形じゃないと……」
言い訳など耳に入らない様子で、フィンは楽しげに紐をつまんだ。
「おまえが穿いてると、なんかそそるな」
「な……」
左右の紐が解かれ、脚の間から湿り気を帯びた下着が引き抜かれると、薄い下生えがあらわになる。
「み、見ないで」
「無理だろ」
フィンは更に下に視線を落とし、小さな声で呟く。
「やっぱり邪魔だな……」
「な、何が……」
「リーネ、そのまま木に寄りかかっててくれよ」
「え……!?」
フィンはアイリーネの脚を片方ずつ持ち上げ、膝のあたりで滞っていた脚衣をすっかり脱がせてしまった。
「……こ、こんなの……」
もはや身に着けているのは乗馬用の靴だけということを自覚したアイリーネは、羞恥で言葉を失う。
フィンは立ち上がって少し後ろに下がると、木漏れ日に輝く白い裸身を眩しげに眺めた。
「ああ……きれいで、やらしい」
「ば、ばかっ。もし、誰か来たら――」
素早く近づいてきた唇が、抗議の言葉を封じる。
「んっ……」
熱い舌が絡まり、感じやすくなった胸の先をフィンの指がくすぐる。
「……んぅ、ん」
すり合わせた内腿から湿った音が立つと、フィンはアイリーネの腰を優しく撫で下ろした。
「んっ……、あ……」
甘い反応に誘われるように、フィンの指はたっぷりと潤った部分にたどり着く。
「……もう、こんななのか」
派手な水音と共に嬉しそうな声を上げられ、アイリーネは目のふちを赤くした。
「――そういえば、できるようになったのか?」
「え……?」
「ひとりで」
武術大会の夜のことを言われているのだと気がついたアイリーネは、恥ずかしそうに首を横に振る。
「あ……あのときは……宿舎に、誰もいなかったから……あッ」
膨らんだ花芽を蜜まみれにされて、アイリーネは身をよじった。
「それじゃ、年に一回しか挑戦できねえな」
フィンのからかいなどもう耳には届いていない様子で、アイリーネは甘く喘ぐ。
「ん、あっ、あ、あ……」
長い指が挿し入れられると、アイリーネの中は抱きしめるようにきゅうきゅうと引き絞った。
「……待ってたのは、俺の方だけじゃなかったんだな」
まるで空白の期間などなかったかのように、迷うことなくフィンの指は隘路の中の快感が集まる場所にたどり着いて巧みに動く。
「やぁ、同時は……ぁあ、は、あっ、あ……」
中にも外にも刺激を与えながら、アイリーネの火照った耳たぶにフィンがくちづけたそのときだった。
「んっ、あっ……、ああ……ぁ……っ!」
顎を上げ、太腿を震わせながらアイリーネは達した。
「……リーネ」
フィンは、ひくつく秘所から指を抜き、自分の脚衣に手をかける。
先触れを光らせて現れたそれは、久々に直視したら恐れをなしてしまいそうなほどの猛々しさだったが、幸い、アイリーネは悦びの余韻に息を乱しながらまぶたを閉じていた。
「あっ」
片方の膝裏を持ち上げられたアイリーネが気づいたときには、もう熱い塊の先端が潤みにめり込んできていた。
「……ぁ、あ……」
指とは違う圧迫感に戸惑ったのは最初のうちだけで、アイリーネはすぐに身体の力を抜いてそれを受け容れようとする。押し広げながら奥まで挿入ると、フィンも熱い息を吐いた。
王都を発つ前にふたりで一昼夜過ごしたとき以来の、深い触れ合いだった。
「……やっとだ……」
フィンの掠れた呟きが、アイリーネの胸にも迫ってくる。
涙を溜めたアイリーネの瞳を見つめながら、フィンはゆっくりと突き上げ始めた。
「ん……フィン……」
「そんな可愛い顔して締めつけられると、すぐに達きそうだ……」
切なげに眉根を寄せるフィンの顔を目にしたアイリーネの胸がきゅっとなる。
「う、だから、まだそんなに急ぐなって……」
そこがときめきと連動していることを知ったアイリーネは、顔を真っ赤に染めた。
「わ、わざとじゃな……あッ」
フィンは腰を揺らしながら、アイリーネの胸の薄紅色の先端を指で回すように転がす。
「おまえをもっと気持ち良くしてから、達きたい」
「……あっ、も、もう、じゅうぶん……あぁ、んっ、あ」
アイリーネがびくびくと反応するたびに蜜が溢れ、フィンの茂みも濡らしていく。
「背中、痛そうだな」
アイリーネの素肌が木にこすれていることに気がついたフィンは、蜜の飛沫を立てて屹立を引き抜いた。
愉楽の中で少しぼんやりとしているアイリーネを幹の方に向かせ、つかまるように促す。
「……火傷の痕、ずいぶん薄くなったな」
若葉の影を映した背中に柔らかく唇を這わせると、フィンはアイリーネの腰をぐっと掴み、後ろから再び突き入れた。
「あぁっ!?」
強い刺激に、アイリーネは甘い悲鳴を上げる。
熱くて硬いものが深く浅く角度を変えて中を擦り立てるたびに、アイリーネの背筋を快さが駆け上っていく。
「ん、あっ、は、あぁ、フィン……」
「リーネ……ッ」
ぐいぐいと腰を繰り出しながら、フィンは片手をアイリーネの腹部に滑らせ、さらに下生えの奥へと伸ばした。
「や……ぁあ!」
張りつめた花芽をフィンの指がくにゅくにゅと捏ねると、アイリーネの全身はさらに熱くなり、波打つように震え出す。
「あッ、ああ、うっ、んんっ……」
大きなうねりが押し寄せてくる。アイリーネは木にしがみついている指先の色が変わるほど力を込めた。
「フィン、フィ……ああぁ……っ……!」
甘やかな啼き声は、早春の森に吸い込まれていった。
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