星降る丘

七瀬ななし

文字の大きさ
上 下
16 / 16
新時代の幕開け

光の海、電子の海

しおりを挟む
既に、俺たちが使っているテクノロジーは俺たちを置き去りにして遥か先に進んでしまった。俺たちのテクノロジーを開発してくれているのは、亜空間に存在するコンピューターであり、それは膨大なネットワークに接続されていた。

「ええ、じゃあ、もう開発自体も、コンピューター任せなの?」

シンディーは、素っ頓狂な声をあげた。そうだった。前は、なんとか自分たちで、全て開発しようとしていたのだった。シンディーがある意味、現状から取り残されていきなり未来に放り込まれたような状況になっていたことを忘れていた。

今は、既にコンピューターの中にいる電子生命体として覚醒したといってもいいコンピューターが操るアバター達が、開発を続けている。俺たちはアバターとして、時々、会議などに参加することもあるが、基本的には、任せてしまっているのが現状だ。

「この惑星をテラフォーミングした適正なナノマシンの開発や、俺たちが、この惑星上で生存を続けられるように体を最適化してくれているのも、このナノマシンがあってこそさ。」
「それにしたって、もう主導権が私たちにないなんて・・・・・。」
「いや、あったというのが、幻想だったのかもしれない。もうずっと、俺たちは、道具に生かされてきたんだよ。」

俺は、次の計画について話すべきかためらったが、話すことにした。

「次のステップは、このアバターを操る電子生命体による神の捜索さ。」
「どういうこと?」
「俺たちは、知ったんだよ。俺たちにいろいろな恩恵を与えてくれた神にも近い宇宙人達も実は、自分たちを設計したであろう神の痕跡を探しているということを。そして、多分俺たちより早く、このコンピューターによるアバター達は、神の捜索のチームに合流し、もしかしたら、俺たちよりずっと早く神になるかもね。」
「なんだか抽象的すぎるし、暗澹たるないようだし、散々ね。」
「でも、次のステップは、この宇宙自体が持つ限界を超えた文明の捜索なんだよ。」

俺は、しばし、目をつぶった。実は、俺自身が、既に何体ものアバターを持ち、ナノマシンの補助を受けながら同時に色々リンクしているという状況なので、どこに自分があるのか、少し境界線が定まらなくなってきたことをかんじていたのだ。それに、脳細胞自体も、もっと質がよく早いものをどんどん入れて、古いものに置き換えていっているので、自分のオリジナルといえる部分もほぼ少なくなってきたことだし。

それでも、自己同一性を感じている限り、自分は自分なのだろうと、シンディとやりとりしながら、思うのであった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...