星降る丘

七瀬ななし

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思考リンク

宇宙エレベーターの建設

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いわゆる不老不死だが、俺たちは、情報を惜しげも無く公開した。ただ、処置できるのは、現在のところ、我々の関連会社だけだが。そして、処置の値段も決して安くはないが、買うことができないというほどの値段ではなかった。そして、老人ですら、若くなることができるのであれば、問題なく、老後のために溜め込んでいた資金を吐き出した。また、お金が手元になくてもきちんとローンさえ組めば問題なかった。よしんば、毎月に少しずつ払っても永遠が手に入るのだ。100年ローン、200年ローンがなんだというのだろう。

皆が殺到するというわけではなく、処置が必要な人を最初に対象にして、毎日世界中で5万人ずつの処置を行っていった。順調に行けば、1年で2千万人もの人が処置を受けられるのだ。また、処置できる施設も増え、1日に30万人の処置をめざしている。とりあえず、簡易なナノマシンを体に入れて、待つこともできると知ってパニックは起こらなかった。全世界で1億人が処置を受けるころには、他の会社も参入し、1日に処置できる人の数は、100万人にもなった。もう問題ない。

「我々に任せてくれれば、もっとうまい売り方をしたのだが。」

株主総会の後に、巨額な資金提供をしてくれている老人たちが、唸った。

「でも、おそらくこれがベストではないかもしれませんが、選びうる最善手でしたよ。」

俺は、言う。

「これが力を持った国や企業、個人が持った場合、かなりの問題が起こると予想されたからこそ、誰にも手に入るようにしたんです。」

「確かに、それについては、褒めるべきだと思う。我々も処置してもらったからな。」

「それに世界は少数の人間だけで支配するには大きすぎますし、多様性がなくなると、社会は脆くなるものです。まあ、見ていてください。」

俺たちは、莫大な資金を元に、宇宙エレベーターの建設を始めた。

全て、今回は、ロボットに思考リンクさせて問題がないか監視している。おそらくなんの問題もないだろう。そして、その通りだった。

「さあ、やっとここまでこぎつけることができたでござるな。」

俺たちは、建設が始まった宇宙エレベーターの基礎の下で将来に思いを馳せるのであった。
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