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step8 ドレスはピンク色が良いです
置き去りにされた、はむ子
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「お前そんな理由でちゃんと向き合おうとしなかったのか。幸せになれるに決まってるだろう、俺の自慢の息子だぞ」
「はいはい」
「こんなバカな父ちゃんの息子なのに、誰に似たのか国立の大学出て立派な医者になるなんて。俺の人生は汚点だらけだけど、お前の存在が唯一誇れるところだ」
「……それは、あんたが一生懸命働いてたから」
「あぁ、だからあまりお前に構ってやれなかった。だけどまさかこんな冷たい人間に育つなんて……。本当に仁菜ちゃんから感じ取るものは何もなかったか?」
そう言われて、何も返せなくなってしまった。
その後奴は、どっかのお店の女の子から電話がかかってきて、慌てるようにして帰っていった。
……仁菜から何も感じ取らなかったと言えばウソになる。まぁまず挙げられるのが、うざい、暑い、バカ、というような悪口のオンパレードなのだが。
それでも混じりけのない素直な好意は、だんだん心地良いものに変わっていったような気がする。
だけど、それだけでまた一緒に住むとか付き合うとかは考えられない。
……あいつの残りの荷物とか家具とか少ないけど、早めに家に持ってってもらわないとな。
そう思って仁菜の部屋を見渡すと、ピンクのファンシーな家からつぶらな瞳で見つめてくるネズミがいた。思わず顔がひきつる。
なんでハム子置いてってんだよ、唯一の家族じゃなかったのかよ。
チューチュー鳴くネズミ。なんだこんなに鳴くものなのか、それともお腹が空いて鳴いてるのか。別に放っといても良かったが、ここで死なれても気分が悪い。
仕方なく、仁菜に再び電話することに、
「お前ネズミ置いてってるけど」
『えー?』
何やら電話口から、パチパチと激しい火花のような音がする。
俺の声が聞こえないのか、そう聞き返され、大きな声で尋ねた。
「えー?じゃねぇよ、何してんだよ」
『何って、花火です』
あっちも大声で返してくるもんだから、耳に響いてすかさず携帯を離した。呑気に花火です、と返って来て言葉が少し乱暴になる。
「はぁ?花火ですーじゃねぇよ。てめぇのネズミが腹空かせてチューチューうるせぇんだよ」
『えぇ?なんですかー?』
「……もういいや」
もう大声を出す元気もなくてそのまま切った。
そしてチューチュー鳴くハム子に、声をかける。
「可哀想に、飼い主に見放されて。おいお前は一体何食うんだよ」
そう聞きながら周りを見渡すと餌らしきものを見つけて、ケースの中の餌入れに入れてやった。
「これで良いか?」
そう言ってハム子が餌を食べるのを見守るも、なかなか餌に近づこうとしない。
「食わねぇのかよ、なんだよ餌を入れた人間が違うだけで食わなくなる位お前は繊細な生き物なのか?」
そう聞いたって、チューチュー鳴いているだけで返事は返ってこない。
「しょうがないな」
……一体、何をしているんだろう、俺は。
ピンク色のファンシーなハム子の家を持って。
もう最終手段で、仁菜の家を訪ねることになったのだ。
呑気に花火中だって言う仁菜は電話してもこんな調子だし、メールなんて見ないだろうということで、今さっき帰ったオヤジにメールして住所を聞きだした。
その後、何を勘違いしたのか何回か父親から電話がかかってきたが、聞かれることは分かっているので完全スルー。
その住所を車のナビで検索すると、1時間もかからないところだった。
車で家へ向かうと、近くのコインパーキングに停めてそこからは徒歩で仁菜の家へ向かう。
なかなか古い家が立ち並ぶ住宅街、そこから表札に楠原とある確実に昭和初期に建てられたような木造の家を見つけた。庭には微かに火薬のような匂いが残っている。
さっさとハム子を置いて帰ろうと思って家の古めかしい門をくぐると、縁側から若い女性に声をかけられた。
「あらっ、もしかしてショージさんの息子さん?」
「あ、はい」
「初めましてー、私仁菜の母の梅ちゃんですー」
仁菜との年齢差を考えて若くても30代後半っていったところなのだが、20代にしか見えない若く可愛い母親。
間延びするような声に出迎えられ、戸惑いながらもこれ以上巻き込まれたくなくて要件だけを話した。
「はいはい」
「こんなバカな父ちゃんの息子なのに、誰に似たのか国立の大学出て立派な医者になるなんて。俺の人生は汚点だらけだけど、お前の存在が唯一誇れるところだ」
「……それは、あんたが一生懸命働いてたから」
「あぁ、だからあまりお前に構ってやれなかった。だけどまさかこんな冷たい人間に育つなんて……。本当に仁菜ちゃんから感じ取るものは何もなかったか?」
そう言われて、何も返せなくなってしまった。
その後奴は、どっかのお店の女の子から電話がかかってきて、慌てるようにして帰っていった。
……仁菜から何も感じ取らなかったと言えばウソになる。まぁまず挙げられるのが、うざい、暑い、バカ、というような悪口のオンパレードなのだが。
それでも混じりけのない素直な好意は、だんだん心地良いものに変わっていったような気がする。
だけど、それだけでまた一緒に住むとか付き合うとかは考えられない。
……あいつの残りの荷物とか家具とか少ないけど、早めに家に持ってってもらわないとな。
そう思って仁菜の部屋を見渡すと、ピンクのファンシーな家からつぶらな瞳で見つめてくるネズミがいた。思わず顔がひきつる。
なんでハム子置いてってんだよ、唯一の家族じゃなかったのかよ。
チューチュー鳴くネズミ。なんだこんなに鳴くものなのか、それともお腹が空いて鳴いてるのか。別に放っといても良かったが、ここで死なれても気分が悪い。
仕方なく、仁菜に再び電話することに、
「お前ネズミ置いてってるけど」
『えー?』
何やら電話口から、パチパチと激しい火花のような音がする。
俺の声が聞こえないのか、そう聞き返され、大きな声で尋ねた。
「えー?じゃねぇよ、何してんだよ」
『何って、花火です』
あっちも大声で返してくるもんだから、耳に響いてすかさず携帯を離した。呑気に花火です、と返って来て言葉が少し乱暴になる。
「はぁ?花火ですーじゃねぇよ。てめぇのネズミが腹空かせてチューチューうるせぇんだよ」
『えぇ?なんですかー?』
「……もういいや」
もう大声を出す元気もなくてそのまま切った。
そしてチューチュー鳴くハム子に、声をかける。
「可哀想に、飼い主に見放されて。おいお前は一体何食うんだよ」
そう聞きながら周りを見渡すと餌らしきものを見つけて、ケースの中の餌入れに入れてやった。
「これで良いか?」
そう言ってハム子が餌を食べるのを見守るも、なかなか餌に近づこうとしない。
「食わねぇのかよ、なんだよ餌を入れた人間が違うだけで食わなくなる位お前は繊細な生き物なのか?」
そう聞いたって、チューチュー鳴いているだけで返事は返ってこない。
「しょうがないな」
……一体、何をしているんだろう、俺は。
ピンク色のファンシーなハム子の家を持って。
もう最終手段で、仁菜の家を訪ねることになったのだ。
呑気に花火中だって言う仁菜は電話してもこんな調子だし、メールなんて見ないだろうということで、今さっき帰ったオヤジにメールして住所を聞きだした。
その後、何を勘違いしたのか何回か父親から電話がかかってきたが、聞かれることは分かっているので完全スルー。
その住所を車のナビで検索すると、1時間もかからないところだった。
車で家へ向かうと、近くのコインパーキングに停めてそこからは徒歩で仁菜の家へ向かう。
なかなか古い家が立ち並ぶ住宅街、そこから表札に楠原とある確実に昭和初期に建てられたような木造の家を見つけた。庭には微かに火薬のような匂いが残っている。
さっさとハム子を置いて帰ろうと思って家の古めかしい門をくぐると、縁側から若い女性に声をかけられた。
「あらっ、もしかしてショージさんの息子さん?」
「あ、はい」
「初めましてー、私仁菜の母の梅ちゃんですー」
仁菜との年齢差を考えて若くても30代後半っていったところなのだが、20代にしか見えない若く可愛い母親。
間延びするような声に出迎えられ、戸惑いながらもこれ以上巻き込まれたくなくて要件だけを話した。
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