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step3 勃発!ハムスターDV論争!
ぴゅあぴゅあいちごを探して三千里
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詳しい事情は知らないが、少しでも情を抱いてしまったのがいけなかったか。
元はと言えば、知り合ってまだ数日しか経っていないただの赤の他人なのだ。
能天気な奴に勝手に無害な奴だと油断していたのかもしれない。
家賃滞納で追い出されたって位だから、金に困っていたんだろう。
それなのに、財布をリビングのテーブルの上に置きっぱなしにしとくなんて迂闊だった。
だけど俺だって最初からまるっきり、警戒していなかった訳ではない。
リビングに財布を置きっぱなしにするなんてことも今回が初めてだったと思う。
……それがこんなことになるなんて。
きっと無意識のうちに気を許し始めていたのかもしれない。
いつも屈託ない笑顔で出迎えてくれるあいつに。
リビングのソファーに座れば、いつの間にか隣にひっついてくるあいつに。
人懐っこくて、何度その手を振り払ってもしつこくひっついてこようとするあいつに、俺はいつのまにか振り払うのを止めていた。
しぶとい奴に諦めたっていうのもあったが、単純に天真爛漫で毒気のないあいつの隣が、少し心地いいと思い始めていた。
そんな風に、確かに少しずつ情が湧き始めていた。
あんなにうざったいと思っていたのに。
その日、深夜過ぎた頃静かに玄関のドアが閉まる音がした。
あいつが、おそらくあの巨大なスーツケースを持って出て行ったのだろうと、ぼんやりベッドの中でそう思った。
……心配することなんかない。
あいつだってもうしっかり成人してるんだ。
ここらは治安のいい方だし、駅前まで出れば漫画喫茶だってビジネスホテルだってある。
……だけど、ちょっと酷だったか。
せめて次の住む場所見つけるまで、置いてやるべきだったか。
いや、でも。
これ位厳しくしないと、戻ってきてもあいつは甘えてまたつけあがるだけじゃないか。
だからと言ってこんな時間に若い女一人外をふらつくのは危なかろうか。
やっぱり迎えに行ってやろうか。
成人してるとはいえ、あいつの頭の中はまだまだお子様だ。
朝までどうやって過ごすつもりなのだろうか。
それとも頼るつてでもあるのだろうか。
どうしようか、変な奴に誘拐でもされていたら……っ
いてもたってもいられず携帯電話に手を伸ばしたのは、1時過ぎた頃だった。
しかし……
『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない……』
……なんだそれ、
まさか携帯忘れて行ったんじゃ、と部屋に入るとそこに携帯は見当たらなかったがコンセントに刺さったままの充電器を発見した。
がくっと打項垂れる。
なんで肝心の充電器忘れていくんだよ。
しかし困ったな、これじゃ携帯で連絡取れないってことか……。
何か手がかりを、と部屋を見渡すと何やらファンシーな名刺を1枚見つけた。
「……ぴゅあぴゅあ?いちご?」
メイド喫茶 ぴゅあぴゅあ
いちご
よろしくおねがいします
ご主人さま♡
奴の部屋で見つけた名刺を、その手の話に詳しそうな後輩の水嶋に聞いた。
「メイド喫茶、ぴゅあぴゅあ?」
「あぁ、知らねぇか?」
「お店の名前は知ってますけど、いちごちゃんは知らないなー。何すか?この子彼女かなんかっすか?」
「まさか」
「……つか、それよりも先輩すっげー顔っすよ。どうしたんすか?」
あまりの死相に、触れようか触れまいか迷いましたが、と付け足す水嶋。
どうしたもこうもない。
結局昨日は眠れず、1人もんもんと夜を明かすはめになったのだ。
おかげでいつにも増して、俺の顔はげっそりとひどいことに……。
「それよりも、お前さ今日仕事終わった後暇?」
「今日っすか?今日は合コ「そうか、そうか暇なんだな。え、何?ぴゅあぴゅあに行きたいって?」
「え、ちょ、せ、先輩?」
「しょうがねーな、付き合ってやるよ」
「たく、そんな誘い方ありますか」
強引な俺の誘いに苦笑しながらも了承してくれた。
良かった、日頃こいつのこと色々面倒みておいて。
元はと言えば、知り合ってまだ数日しか経っていないただの赤の他人なのだ。
能天気な奴に勝手に無害な奴だと油断していたのかもしれない。
家賃滞納で追い出されたって位だから、金に困っていたんだろう。
それなのに、財布をリビングのテーブルの上に置きっぱなしにしとくなんて迂闊だった。
だけど俺だって最初からまるっきり、警戒していなかった訳ではない。
リビングに財布を置きっぱなしにするなんてことも今回が初めてだったと思う。
……それがこんなことになるなんて。
きっと無意識のうちに気を許し始めていたのかもしれない。
いつも屈託ない笑顔で出迎えてくれるあいつに。
リビングのソファーに座れば、いつの間にか隣にひっついてくるあいつに。
人懐っこくて、何度その手を振り払ってもしつこくひっついてこようとするあいつに、俺はいつのまにか振り払うのを止めていた。
しぶとい奴に諦めたっていうのもあったが、単純に天真爛漫で毒気のないあいつの隣が、少し心地いいと思い始めていた。
そんな風に、確かに少しずつ情が湧き始めていた。
あんなにうざったいと思っていたのに。
その日、深夜過ぎた頃静かに玄関のドアが閉まる音がした。
あいつが、おそらくあの巨大なスーツケースを持って出て行ったのだろうと、ぼんやりベッドの中でそう思った。
……心配することなんかない。
あいつだってもうしっかり成人してるんだ。
ここらは治安のいい方だし、駅前まで出れば漫画喫茶だってビジネスホテルだってある。
……だけど、ちょっと酷だったか。
せめて次の住む場所見つけるまで、置いてやるべきだったか。
いや、でも。
これ位厳しくしないと、戻ってきてもあいつは甘えてまたつけあがるだけじゃないか。
だからと言ってこんな時間に若い女一人外をふらつくのは危なかろうか。
やっぱり迎えに行ってやろうか。
成人してるとはいえ、あいつの頭の中はまだまだお子様だ。
朝までどうやって過ごすつもりなのだろうか。
それとも頼るつてでもあるのだろうか。
どうしようか、変な奴に誘拐でもされていたら……っ
いてもたってもいられず携帯電話に手を伸ばしたのは、1時過ぎた頃だった。
しかし……
『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない……』
……なんだそれ、
まさか携帯忘れて行ったんじゃ、と部屋に入るとそこに携帯は見当たらなかったがコンセントに刺さったままの充電器を発見した。
がくっと打項垂れる。
なんで肝心の充電器忘れていくんだよ。
しかし困ったな、これじゃ携帯で連絡取れないってことか……。
何か手がかりを、と部屋を見渡すと何やらファンシーな名刺を1枚見つけた。
「……ぴゅあぴゅあ?いちご?」
メイド喫茶 ぴゅあぴゅあ
いちご
よろしくおねがいします
ご主人さま♡
奴の部屋で見つけた名刺を、その手の話に詳しそうな後輩の水嶋に聞いた。
「メイド喫茶、ぴゅあぴゅあ?」
「あぁ、知らねぇか?」
「お店の名前は知ってますけど、いちごちゃんは知らないなー。何すか?この子彼女かなんかっすか?」
「まさか」
「……つか、それよりも先輩すっげー顔っすよ。どうしたんすか?」
あまりの死相に、触れようか触れまいか迷いましたが、と付け足す水嶋。
どうしたもこうもない。
結局昨日は眠れず、1人もんもんと夜を明かすはめになったのだ。
おかげでいつにも増して、俺の顔はげっそりとひどいことに……。
「それよりも、お前さ今日仕事終わった後暇?」
「今日っすか?今日は合コ「そうか、そうか暇なんだな。え、何?ぴゅあぴゅあに行きたいって?」
「え、ちょ、せ、先輩?」
「しょうがねーな、付き合ってやるよ」
「たく、そんな誘い方ありますか」
強引な俺の誘いに苦笑しながらも了承してくれた。
良かった、日頃こいつのこと色々面倒みておいて。
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