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第3章 幼女編
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しおりを挟む庭のベンチに1人座って考え込む私が、ルイスにはしょんぼりして見えたのか優しく声をかけてきた。
「リリア、魔法はあなたには必要ないのです」
そう改めて説かれるが、尚も唇をきゅっと結んで納得しない私にルイスは呆れたようにため息をついた。
「本当、あなたは一度言ったら聞きませんね。それでは魔素の扱い方だけお教えします」
「ほんとう!?」
そう言って目を輝かせる私に、彼は困ったように笑った。
「また勝手に魔法を使われて、その身が傷ついたりしたら、たまりませんからね」
暴発予防なのだろうけど、魔法に関することなら何でも会得したい。前のめりでルイスの講義を受ける。
「リリア、初めての外の世界はどうでした?」
「すごく気持ちよかった!」
「それはリリアが自然界からの魔素を吸収しやすいからでしょうね」
この庭では結界の外のようにはいきませんが、と前置きをして芝生の上で座禅を組んだ。両手を地面につけて、目を閉じて深呼吸をする。
「姿勢はこれと決まってません。地面と体が接着できれば、さほど形は関係ない。自分の1番リラックスできる姿勢で構いません」
ルイスの真似をして地面に座り込み、目を閉じて深呼吸する。
「はい」
「力をゆっくり循環させるイメージを脳内で持ってください。右手から腕、心臓、頭、全身へ巡るイメージです。体内を一巡したら、左手から地面へ力を返しましょう」
「……それだけでいいの?」
「これが案外難しいものです」
魔素風呂と魔力の循環、還元、調整の鍛錬を毎日行った。鍛錬に励めば励む程フィーの調子は良くなるようで、最近では急かされるようになってしまった。
リリア、五歳。この小さな体に魔素の扱いを叩き込む。意識を集中しなくても、次第に息をするかのように、自然に魔素を操れるようになった。
まだ、この器は大きくなる。
この世界に転生した自分の役割を全うしたいと、そのためにはレイン様だけではなく、まずルイスとギルに認めてもらわなきゃいけない。
皆過保護だから私に戦って欲しくないのは分かるけど。一度目の人生、臼井祥子篇はパッとしない人生だったから、二度目の人生はもっと冒険したい。
せっかくレイン様という生涯かけて愛し続けられるような推しに出会えたのだから、もう少し大人になったら告白したい。あわよくば、彼と恋愛したい。
たとえそれが命懸けの恋となろうとも。
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