スパダリ伯爵様のため美少女となって魔界征服します

みずほ

文字の大きさ
上 下
12 / 21
第3章 幼女編

6

しおりを挟む
 レイン様がルイスを引き連れて仕事へ出た隙に、いよいよ念願の外界デビュー。

 広い庭を抜けギルと城門へ。いざ外へという時、城門の前でギルが足を止めた。

「リリア、ここから城の外になる」

 いつもとは違う真面目な声色に私も真剣に聞いた。

「うん?」

「ここまではレインの強固な結界が張ってあるが、外界は魔素が充満している。特にここは。なんの素養もなければ、一分もたたずに気を失ってしまうだろう」

「わ、わかった」

 少し怯んだ私に、ニカっと笑うギル。

「まぁ、赤ん坊の頃から魔素入り風呂に入ってるんだ。ちょっと気分悪くなる位だろ。いつでも帰って良いんだからな」

そう言うギルに、ぷくっと柔らかい頬を膨らませ眉間に皺を寄せた。

「だいじょうぶだもん」

「あはは、怖いだろうから手繋いでてやろうな」

 屈んで私の小さな手を握ると、せーのと一緒に門外へ出た。

 その瞬間、一瞬ピリリと皮膚の表面に痛みが走る。あの魔素入り風呂を何倍にも薄めたような新しい感覚。自然に漂う魔素にうっすら色と匂いを感じるような気もする。
 目をぱちくりさせるだけの私に、ギルが心配そうに声をかけた。

「だ、大丈夫か?」

 私がいつ卒倒しても良いように、大きなギルの手が背中に添えられている。目を大きく開けたまま、ギルを見る。

「なんだ、どうした?」

「……もちいい」

「え?」

「きもちいい!」

「は?」

 そう言い放ったあと、深呼吸する私。めいいっぱい、空気を吸い込むと気管と肺がピリピリした。その感覚さえ心地良く感じて、夢中になって繰り返し魔素を体内へ取り込んだ。

「分かった、分かったから興奮するな」

 動揺するギルに、目を輝かせる私。

「本当末恐ろしいな、お前本当はどこから来たんだ」

「ふふふ、はやくいこう!」

 嬉しくなって戸惑うギルの手を引っ張った。

「フィー!」

「フィーちゃんもきもちいって!」

「そっか良かったな」

 喜ぶ私の周りを水を得た魚のように元気に飛び回るフィーに、呆れたようなギル。

 ギルの訓練場とやらは、城からそう遠くない森の中の開けた場所にあった。

「少しでも体に傷つけようものなら、レインに殺されるから絶対無理するなよ」

 そう言って木の棒を渡される。

「わかってるってば。しゅんしゅんしゅんっ、こんなかんじ?」
 
 そう言って、効果音付きで下校中の小学生男児如く棒を振り回してみせた。

「やめろ、ムヤミに振り回すな!体に傷ついたらどうする!」

 慌てて止めに入られ、握り方からレクチャーが始まった。そして次は、構え。

「あはは、かわいいな」

「ぶー、おてほんみせてよ。ギルってほんとうはすごくつよいんでしょう?あのレイン様がおそばにおいておく位だし」

 そう言ってギルを煽てる。単純なギルは得意げになって木の棒を手に取った。

「しょうがないな、少しだけだぞ」

 その瞬間、いつもの腑抜けた顔が急に引き締まって、纏う空気まで変えて見せた構え。周りの魔素が一瞬にして色を失くす。思わず圧倒された私は、尻もちをついてしまった。

「も、もしかしてギルにはまほう効かないんじゃ」

「お、よく分かったな。俺は魔素を扱えない代わりに、魔法攻撃は効かないし防御も意味がない」

「ギル、ほんとうにすごい人なんだね」

 思わずあんぐり口を開けたまま、尻もちをついたままギルを見上げる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...