4 / 21
第2章 赤ちゃん編
1
しおりを挟む
そのまま意識を失った。
あの電車にはねられて死んだ時のように、一瞬、意識が途切れ無になる。
そして突然、ブツっと、どこかに意識が繋がった。
真っ黒で無だった中、いきなりテレビがついたかのように唐突に新しい世界が始まり五感が再び働き始める。
しかしうっすら瞼を開けるも、視界はピントが合わないかのようにボヤけている。
(しかも、何これ、苦しいんだけどっ)
呼吸の仕方を忘れてしまったかのよう、というより、まるで初めて呼吸をするかのような感覚。どうやるんだっけ、どうやって息してたっけとパニックになっていると、次の瞬間、苦しさにたえきれず全てを吐き尽くすかのように大きな声をあげていた。
「オギャアアアアアアアアアッ」
まるで赤ん坊のような大きな産声。発しているのは……、まさかの自分のようだ。
え、マジで?本当に赤ちゃんになっちゃったの?
息をつけたところで、状況把握のため目をしっかり開けるとまず目の前に飛び込んできたものは、木板の天井だった。そして何やら冷たく固い背中、この感触は床だ。どうやら赤ん坊なのに、裸のまま床に寝かされているらしい。
薄暗くジメジメと湿気のある部屋。床に寝かされてるせいもあるが、何やら埃っぽいし、一体ここはどこなのか。
「うっ、うっ」
なんとも、ひ弱な存在に生まれ変わってしまったと、心細さから泣きそうになっていると、コツコツっという足音が振動と共に自分へ近付いてきた。暗くてよく見えないが黒づくめの大きな男の人、前髪のせいで顔がよく見えない。その人に抱きかかえられて体が宙に浮いた。
大きな手ですっぽり覆われる全身。そしてようやく見えた顔に、赤ん坊ながら思わず目を奪われることに。
……まさかのドタイプ、黒髪にちょっと影のある切れ長の目、鼻筋の通った整った鼻といった、文句の付けようがないちょっと闇ある系の超絶イケメンだった。
「ばぶ」
訳:好き、結婚しよ。
しばらく瞬きもせず、ガン見しているとバタバタと数人の足音がこの部屋めがけて駆け寄ってきた。
「伯爵様、今赤ちゃんの声が!」
「あぁ、まさか召喚魔法で赤ん坊が出てくるとは」
「まぁ、なんて可愛いらしいのかしら」
……神官ありがと、次こそ図太く生きちゃるわ。
そう決心して、黒づくめのイケメンの服にしがみつく。
「見てー、可愛いー。伯爵様の顔を大きな目でじっと見つめているわ」
私の視界に割って入って来たメイドのような女。嬉しそうに私の手をつんつんと触る。その手を振り払い赤ん坊の特権とばかりにイケメンの顔を触ろうとしたが、そのままメイドに引き渡されて大判の白い布に体を包まれた。
「ばぁぶ……」
訳:オウ、シット……。
赤ん坊だからしょうがないけど、これでは日曜夜の国民的アニメキャラ、永遠にバブバブしか言わない〇ラちゃんのようだ。
しかし本当に赤ちゃんだ。小さな自分の手をしみじみ見る。ピンク色で柔らかい。ついでにほっぺも触ってみる、こっちもぷにぷにしてて柔らかい。
「ばーぶぅ……ッ」
訳:……姿は赤ん坊でも中身はアラサー喪女。母性なんて一生感じられず生涯を終えるものと思っていたけれど、ここにきて自分に母性を抱くなんて。あー、なんて可愛い体、そしてなんて可愛い声、一生こうやってバブバブしていたい。このまま誰かに一生縋って生きていきたい……、
今の赤ん坊の一声に、これだけの重苦しい感情がこめられているとは誰が思おうか。
「ばぶばぶ」
不必要に声を出し、小さな手でメイドの服をひっしと掴んだ。
「見て、私の服を掴んでるわ、小さいのに凄い力だわ」
きゃっきゃっとメイド同士、私の一挙一動に喜んでいる。悪い気はせずウルウルとさせながら彼女の目を見つめた。
あの電車にはねられて死んだ時のように、一瞬、意識が途切れ無になる。
そして突然、ブツっと、どこかに意識が繋がった。
真っ黒で無だった中、いきなりテレビがついたかのように唐突に新しい世界が始まり五感が再び働き始める。
しかしうっすら瞼を開けるも、視界はピントが合わないかのようにボヤけている。
(しかも、何これ、苦しいんだけどっ)
呼吸の仕方を忘れてしまったかのよう、というより、まるで初めて呼吸をするかのような感覚。どうやるんだっけ、どうやって息してたっけとパニックになっていると、次の瞬間、苦しさにたえきれず全てを吐き尽くすかのように大きな声をあげていた。
「オギャアアアアアアアアアッ」
まるで赤ん坊のような大きな産声。発しているのは……、まさかの自分のようだ。
え、マジで?本当に赤ちゃんになっちゃったの?
息をつけたところで、状況把握のため目をしっかり開けるとまず目の前に飛び込んできたものは、木板の天井だった。そして何やら冷たく固い背中、この感触は床だ。どうやら赤ん坊なのに、裸のまま床に寝かされているらしい。
薄暗くジメジメと湿気のある部屋。床に寝かされてるせいもあるが、何やら埃っぽいし、一体ここはどこなのか。
「うっ、うっ」
なんとも、ひ弱な存在に生まれ変わってしまったと、心細さから泣きそうになっていると、コツコツっという足音が振動と共に自分へ近付いてきた。暗くてよく見えないが黒づくめの大きな男の人、前髪のせいで顔がよく見えない。その人に抱きかかえられて体が宙に浮いた。
大きな手ですっぽり覆われる全身。そしてようやく見えた顔に、赤ん坊ながら思わず目を奪われることに。
……まさかのドタイプ、黒髪にちょっと影のある切れ長の目、鼻筋の通った整った鼻といった、文句の付けようがないちょっと闇ある系の超絶イケメンだった。
「ばぶ」
訳:好き、結婚しよ。
しばらく瞬きもせず、ガン見しているとバタバタと数人の足音がこの部屋めがけて駆け寄ってきた。
「伯爵様、今赤ちゃんの声が!」
「あぁ、まさか召喚魔法で赤ん坊が出てくるとは」
「まぁ、なんて可愛いらしいのかしら」
……神官ありがと、次こそ図太く生きちゃるわ。
そう決心して、黒づくめのイケメンの服にしがみつく。
「見てー、可愛いー。伯爵様の顔を大きな目でじっと見つめているわ」
私の視界に割って入って来たメイドのような女。嬉しそうに私の手をつんつんと触る。その手を振り払い赤ん坊の特権とばかりにイケメンの顔を触ろうとしたが、そのままメイドに引き渡されて大判の白い布に体を包まれた。
「ばぁぶ……」
訳:オウ、シット……。
赤ん坊だからしょうがないけど、これでは日曜夜の国民的アニメキャラ、永遠にバブバブしか言わない〇ラちゃんのようだ。
しかし本当に赤ちゃんだ。小さな自分の手をしみじみ見る。ピンク色で柔らかい。ついでにほっぺも触ってみる、こっちもぷにぷにしてて柔らかい。
「ばーぶぅ……ッ」
訳:……姿は赤ん坊でも中身はアラサー喪女。母性なんて一生感じられず生涯を終えるものと思っていたけれど、ここにきて自分に母性を抱くなんて。あー、なんて可愛い体、そしてなんて可愛い声、一生こうやってバブバブしていたい。このまま誰かに一生縋って生きていきたい……、
今の赤ん坊の一声に、これだけの重苦しい感情がこめられているとは誰が思おうか。
「ばぶばぶ」
不必要に声を出し、小さな手でメイドの服をひっしと掴んだ。
「見て、私の服を掴んでるわ、小さいのに凄い力だわ」
きゃっきゃっとメイド同士、私の一挙一動に喜んでいる。悪い気はせずウルウルとさせながら彼女の目を見つめた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。


おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる