上 下
1 / 1

希望の光にさよならを

しおりを挟む
 ある日私は、病院の個室で一人の少女と出会った。

私は少女はすぐに気が合い、仲良くなった。
毎日のように病院を訪れ少女に会いに行く。
数日がたったある日、私は少女の病気を知った。
網膜動脈閉塞症(もうまくどうみゃくへいそくしょう)ストレスからくる病気らしく母親を失ったショックにより発症し、いまだに治っていないらしい…

私は少女に言った。
「私は、あなたの痛みを知ることができない…だから私もあなたの痛みを知るために目をつむるよ。だから、あなたの痛みは私の痛み」
私は痛みをまず感覚として理解するために目に布を巻き付け目を閉ざす。
少女は「そんな…私はあなたが来て話をしてくれるだけで勇気をもらっているし楽しいだから気にしないで」と言っているが私は、決めたことはやりきる性分なおで寝ているときも、お風呂の時も巻いていた。


最初は、段差にぶつかり、壁にぶつかるなど大変なことが多かったが、目を閉ざした生活を2か月近く続けていると、嗅覚や聴覚等の感覚が研ぎ澄まされていく、目の代わりになろうとしているのだろうか。

それから数日後…私の母親が死んでしまった。
私は片親で父親の顔を知らずずっと迷惑をかけてきた。
私が自転車で車と事故身あって病院に入院してからは退院しても母親との会話は減っていた。
だけど私が、母親は大好きだった。
母親の葬式にはタオルを巻いた状態では出れないので、タオルを外してみると、目の前が暗闇に覆われていた。
私は、思った『これで彼女と一緒だ』と…
母親のことより私は少女のことでいっぱいだった。早く会いに行きたい。
葬式などが一段落し私は、少女に報告するために病院へ向かう。



「私はやっとあなたの痛みを知ることができた。あなたと一緒、一心同体ね。」
私がそう言うと少女は「お医者さんに言われたの。目が回復傾向に進んでいて目が見える日も近いって。だから…やっとあなたを見ることができる。私を勇気づけてくれたあなたの顔を見ることができる」と嬉しそうに話している。
その時私は思った。

『私は何のために目を…私とあなたは一心同体だよね…」

私は、あなたを受け入れた。
あなたも私を受け入れないといけない。

私は近くにあった果物ナイフをそっと手にとり
少女の目に押し当て目を閉ざした。
「これで私とあなたは一心同体だね」

その時私の目は完全に治っていた。


そして……
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

初めてお越しの方へ

山村京二
ホラー
全ては、中学生の春休みに始まった。 祖父母宅を訪れた主人公が、和室の押し入れで見つけた奇妙な日記。祖父から聞かされた驚愕の話。そのすべてが主人公の人生を大きく変えることとなる。

私のシンゾウ

駄犬
ホラー
冒頭より——  いつからだろうか。寝息がピタリと止まって、伸び縮みを繰り返す心臓の動きが徐に鈍化していく姿を想像するようになったのは。神や仏の存在に怯えるような誠実さはとうの昔に手放したものの、この邪な願いを阻んでいるのは、形而上なる存在に違いないと言う、曖昧模糊とした感覚があった。  血を分け合った人間同士というのは特に厄介である。スマートフォンに登録されている情報を消去すれば無かったことにできる他人とは違って、常に周囲に付き纏い、私がこの世に生まれてきた理由でもある為、簡単に袂を分かつことは出来ない。家の至る所で愚痴と嘆息を吐き散らし、湿り気を醸成する私の悩みは、介護の対象となった父の行動だ。 18時更新

怪談ぽいもの

寛村シイ夫
ホラー
僕が実際に経験した「変わった出来事」。 友人・知人から聞かされた怪談。 自分の性格的に。周囲との関係的に。 これまであまり話す機会もなかったので、ぼつぼつと書いていきたいと思います。 *本編の写真は、全て実際その場所に再度行って 撮影し加工したものを使用しています。 ですので二次使用等は禁止させていただきます。

ものもけさん【完結】

星読ルナ
ホラー
主人公の結月るなは、ある日、SNSで会いたい故人に会わせてくれると言う「ものもけさん」の都市伝説を見つける。 疑いもなく、儀式を始める彼女だったが……。 都市伝説のものもけさんとは一体、何なのだろうか… ・全5話 ※個人的に私の書くものは、怖さは弱い方だと思っていますが、 人によって感じ方は違うので、自己判断でお読みください。 ※レイティングは、保険で付けています。 ※フィクションです。 ・表紙、挿絵はAIイラストアプリ作成です。

息つく間もなく見ています

井村つた
ホラー
300文字から5000文字程度の短編。10分前後で読める。ホラー・怖い話・伝承・人怖・妖怪のお話などを投稿していきたいと思います。 お手すきの際や暇な時に覗いてみてください。感想もお待ちしております。 投稿された話は、ほぼ実在の人物や団体などとは関係ありません。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

人を食らわば

GANA.
ホラー
 ――ろく……なな……はち……――  右手、左手に二重に巻き付け、握ったポリエステル・ロープが軍手越しにぎりぎりと食い込み、びぃんと目一杯張って、すぐ後ろに立てかけられたはしごの最上段をこする。片膝つきの自分は歯を食いしばって、ぐ、ぐ、ぐ、と前に屈み、ウォークイン・クローゼットの扉に額を押し付けた。両腕から全身が緊張しきって、荒い鼻息、鼓動の響きとともにのぼせていく……――  じ、じゅうよん……じゅうご……じゅうろく……――  ロフトへのはしごに背中をつけ、もたれた「うさぎ」の細い首が、最上段からハングマンズノットで絞められていく……引張強度が300キログラム超のロープ、たとえ足がブローリングから浮き、つり下がったとしても、やせっぽちの息の根を止めるうえで問題にはならない。食い込む痛みを押し、自分はいっそう強く握り締めた。仕損じてはいけない……薬で意識のないうちに、苦しむことなく……――

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

処理中です...