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2.Aの協力者1と相棒
Aの協力者1
しおりを挟むAの協力者1
街を歩けば耳に入る音。
アルファベットの『A』の音。
それがどれだけ素敵な音なのか、知っているのはきっとAの協力者だけ。
私――浜崎莉花の黒のロングヘアが風に吹かれ靡く。
1歩で進む距離が段々と大きくなるにつれ、漸く見えてきた一軒家。
この時間に彼女が家にいる事は、もう調査済みだ。
ピンポーン
チャイムを鳴らし、少し待てば、
『はい、どちら様ですか』
と、女性の訝しげな声が、ガサガサとした雑音と共に吐き出される。
「こんにちは、Aの協力者です」
見えていない事が分かっていても、つい笑顔を作る。
『はっ、Aの協力者!?本当ですか!?』
驚きに落とされた声は少し大きくて、耳を塞ぎたくなるのを堪えて、
「ええ。貴方の願いを叶えに来ました」
と、言葉に愉しさを滲ませながら告げる。
『ウッソ、本物…!?』
「勿論。今、叶えて欲しい願いあるでしょう?江川百合子さん」
悪魔の囁きの様にこっそりと話せば、
『っ…!!まっ、待ってください、今開けます!』
と、慌てた様な声がする。
それと同時にバタバタという物音が聞こえた。
どうやら、江川百合子さんはAの協力者を元々知ってくれていたらしい。
37歳という話だったし、やはりSNSを利用している年代は楽だ。
細かな事まで話さくても良い。
見ていない年代にわざわざ1から話し、説得するなんてめんどくさい。
思いを馳せている内に、玄関から鍵を開ける音がした。
「あのっ、もし良かったら上がってください…!」
一瞬私を見て、目を少し開いた後、それを覆い隠すように入るよう急かす。
もし良かったら、なんて、こっちに選択肢は無いくせに。
心の中で悪態をつきながら、顔ではニコニコと笑って、
「では、お言葉に甘えて。失礼しますね」
と、礼儀正しく対応する。
居間に通され、出されたお茶を有難く1口貰った後、
「それでですね」
と、話を切り出した。
「江川百合子さん、貴方の願いを叶えに来ましたので、願いを是非」
途端、期待するような目は、ほんのりと不安を帯びた目になる。
「あのっ、それなんですけど…」
視線をゆらゆらと彷徨わせながら、彼女は怯えた様に呟く。
「必ず、SNSで拡散しなきゃならないんですよね…?」
やっぱりか。
彼女の願いはもう知っているし、悩むのならそこだろうと思っていた。
私は、口内に飴玉を含んだかの様な甘い毒を吐く。
「そうですね、それが代償となるので。願いの内容から、その結果まで、きちんと拡散して頂く事になります。勿論、実名等、個人情報は、特に求めませんので」
「っでも、やっぱりバレちゃう事ってありますか…?」
「いえ!1度も御座いませんよ。そこまで不安でしたら、ぼかし気味の内容でも構いませんし」
なんか宗教みたいだな。
無意識によく喋る私の口に、宗教勧誘者みたいな話し方だな、と何となく考える。
そうなると、Aが神で、Aの協力者達が教徒?
なんだかおかしい。
突然笑い出しそうになるのを堪えとどめて、ニコッと彼女に微笑みかければ、彼女は瞳に見えた不安の色を消し、力を入れて上がっていた肩を下ろして、ため息をついた。
「それで、改めましてですけど、貴方の願いは?」
悠々と問い掛ければ、彼女は、
「――息子と…奏太と、もう一生会いたくないんです」
と、悲痛の叫びのように顔を顰めてボソリと言った。
街を歩けば耳に入る音。
アルファベットの『A』の音。
それがどれだけ素敵な音なのか、知っているのはきっとAの協力者だけ。
私――浜崎莉花の黒のロングヘアが風に吹かれ靡く。
1歩で進む距離が段々と大きくなるにつれ、漸く見えてきた一軒家。
この時間に彼女が家にいる事は、もう調査済みだ。
ピンポーン
チャイムを鳴らし、少し待てば、
『はい、どちら様ですか』
と、女性の訝しげな声が、ガサガサとした雑音と共に吐き出される。
「こんにちは、Aの協力者です」
見えていない事が分かっていても、つい笑顔を作る。
『はっ、Aの協力者!?本当ですか!?』
驚きに落とされた声は少し大きくて、耳を塞ぎたくなるのを堪えて、
「ええ。貴方の願いを叶えに来ました」
と、言葉に愉しさを滲ませながら告げる。
『ウッソ、本物…!?』
「勿論。今、叶えて欲しい願いあるでしょう?江川百合子さん」
悪魔の囁きの様にこっそりと話せば、
『っ…!!まっ、待ってください、今開けます!』
と、慌てた様な声がする。
それと同時にバタバタという物音が聞こえた。
どうやら、江川百合子さんはAの協力者を元々知ってくれていたらしい。
37歳という話だったし、やはりSNSを利用している年代は楽だ。
細かな事まで話さくても良い。
見ていない年代にわざわざ1から話し、説得するなんてめんどくさい。
思いを馳せている内に、玄関から鍵を開ける音がした。
「あのっ、もし良かったら上がってください…!」
一瞬私を見て、目を少し開いた後、それを覆い隠すように入るよう急かす。
もし良かったら、なんて、こっちに選択肢は無いくせに。
心の中で悪態をつきながら、顔ではニコニコと笑って、
「では、お言葉に甘えて。失礼しますね」
と、礼儀正しく対応する。
居間に通され、出されたお茶を有難く1口貰った後、
「それでですね」
と、話を切り出した。
「江川百合子さん、貴方の願いを叶えに来ましたので、願いを是非」
途端、期待するような目は、ほんのりと不安を帯びた目になる。
「あのっ、それなんですけど…」
視線をゆらゆらと彷徨わせながら、彼女は怯えた様に呟く。
「必ず、SNSで拡散しなきゃならないんですよね…?」
やっぱりか。
彼女の願いはもう知っているし、悩むのならそこだろうと思っていた。
私は、口内に飴玉を含んだかの様な甘い毒を吐く。
「そうですね、それが代償となるので。願いの内容から、その結果まで、きちんと拡散して頂く事になります。勿論、実名等、個人情報は、特に求めませんので」
「っでも、やっぱりバレちゃう事ってありますか…?」
「いえ!1度も御座いませんよ。そこまで不安でしたら、ぼかし気味の内容でも構いませんし」
なんか宗教みたいだな。
無意識によく喋る私の口に、宗教勧誘者みたいな話し方だな、と何となく考える。
そうなると、Aが神で、Aの協力者達が教徒?
なんだかおかしい。
突然笑い出しそうになるのを堪えとどめて、ニコッと彼女に微笑みかければ、彼女は瞳に見えた不安の色を消し、力を入れて上がっていた肩を下ろして、ため息をついた。
「それで、改めましてですけど、貴方の願いは?」
悠々と問い掛ければ、彼女は、
「――息子と…奏太と、もう一生会いたくないんです」
と、悲痛の叫びのように顔を顰めてボソリと言った。
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