3 / 3
2.Aの協力者1と相棒
Aの協力者1
しおりを挟む
Aの協力者1
街を歩けば耳に入る音。
アルファベットの『A』の音。
それがどれだけ素敵な音なのか、知っているのはきっとAの協力者だけ。
私――浜崎莉花の黒のロングヘアが風に吹かれ靡く。
1歩で進む距離が段々と大きくなるにつれ、漸く見えてきた一軒家。
この時間に彼女が家にいる事は、もう調査済みだ。
ピンポーン
チャイムを鳴らし、少し待てば、
『はい、どちら様ですか』
と、女性の訝しげな声が、ガサガサとした雑音と共に吐き出される。
「こんにちは、Aの協力者です」
見えていない事が分かっていても、つい笑顔を作る。
『はっ、Aの協力者!?本当ですか!?』
驚きに落とされた声は少し大きくて、耳を塞ぎたくなるのを堪えて、
「ええ。貴方の願いを叶えに来ました」
と、言葉に愉しさを滲ませながら告げる。
『ウッソ、本物…!?』
「勿論。今、叶えて欲しい願いあるでしょう?江川百合子さん」
悪魔の囁きの様にこっそりと話せば、
『っ…!!まっ、待ってください、今開けます!』
と、慌てた様な声がする。
それと同時にバタバタという物音が聞こえた。
どうやら、江川百合子さんはAの協力者を元々知ってくれていたらしい。
37歳という話だったし、やはりSNSを利用している年代は楽だ。
細かな事まで話さくても良い。
見ていない年代にわざわざ1から話し、説得するなんてめんどくさい。
思いを馳せている内に、玄関から鍵を開ける音がした。
「あのっ、もし良かったら上がってください…!」
一瞬私を見て、目を少し開いた後、それを覆い隠すように入るよう急かす。
もし良かったら、なんて、こっちに選択肢は無いくせに。
心の中で悪態をつきながら、顔ではニコニコと笑って、
「では、お言葉に甘えて。失礼しますね」
と、礼儀正しく対応する。
居間に通され、出されたお茶を有難く1口貰った後、
「それでですね」
と、話を切り出した。
「江川百合子さん、貴方の願いを叶えに来ましたので、願いを是非」
途端、期待するような目は、ほんのりと不安を帯びた目になる。
「あのっ、それなんですけど…」
視線をゆらゆらと彷徨わせながら、彼女は怯えた様に呟く。
「必ず、SNSで拡散しなきゃならないんですよね…?」
やっぱりか。
彼女の願いはもう知っているし、悩むのならそこだろうと思っていた。
私は、口内に飴玉を含んだかの様な甘い毒を吐く。
「そうですね、それが代償となるので。願いの内容から、その結果まで、きちんと拡散して頂く事になります。勿論、実名等、個人情報は、特に求めませんので」
「っでも、やっぱりバレちゃう事ってありますか…?」
「いえ!1度も御座いませんよ。そこまで不安でしたら、ぼかし気味の内容でも構いませんし」
なんか宗教みたいだな。
無意識によく喋る私の口に、宗教勧誘者みたいな話し方だな、と何となく考える。
そうなると、Aが神で、Aの協力者達が教徒?
なんだかおかしい。
突然笑い出しそうになるのを堪えとどめて、ニコッと彼女に微笑みかければ、彼女は瞳に見えた不安の色を消し、力を入れて上がっていた肩を下ろして、ため息をついた。
「それで、改めましてですけど、貴方の願いは?」
悠々と問い掛ければ、彼女は、
「――息子と…奏太と、もう一生会いたくないんです」
と、悲痛の叫びのように顔を顰めてボソリと言った。
街を歩けば耳に入る音。
アルファベットの『A』の音。
それがどれだけ素敵な音なのか、知っているのはきっとAの協力者だけ。
私――浜崎莉花の黒のロングヘアが風に吹かれ靡く。
1歩で進む距離が段々と大きくなるにつれ、漸く見えてきた一軒家。
この時間に彼女が家にいる事は、もう調査済みだ。
ピンポーン
チャイムを鳴らし、少し待てば、
『はい、どちら様ですか』
と、女性の訝しげな声が、ガサガサとした雑音と共に吐き出される。
「こんにちは、Aの協力者です」
見えていない事が分かっていても、つい笑顔を作る。
『はっ、Aの協力者!?本当ですか!?』
驚きに落とされた声は少し大きくて、耳を塞ぎたくなるのを堪えて、
「ええ。貴方の願いを叶えに来ました」
と、言葉に愉しさを滲ませながら告げる。
『ウッソ、本物…!?』
「勿論。今、叶えて欲しい願いあるでしょう?江川百合子さん」
悪魔の囁きの様にこっそりと話せば、
『っ…!!まっ、待ってください、今開けます!』
と、慌てた様な声がする。
それと同時にバタバタという物音が聞こえた。
どうやら、江川百合子さんはAの協力者を元々知ってくれていたらしい。
37歳という話だったし、やはりSNSを利用している年代は楽だ。
細かな事まで話さくても良い。
見ていない年代にわざわざ1から話し、説得するなんてめんどくさい。
思いを馳せている内に、玄関から鍵を開ける音がした。
「あのっ、もし良かったら上がってください…!」
一瞬私を見て、目を少し開いた後、それを覆い隠すように入るよう急かす。
もし良かったら、なんて、こっちに選択肢は無いくせに。
心の中で悪態をつきながら、顔ではニコニコと笑って、
「では、お言葉に甘えて。失礼しますね」
と、礼儀正しく対応する。
居間に通され、出されたお茶を有難く1口貰った後、
「それでですね」
と、話を切り出した。
「江川百合子さん、貴方の願いを叶えに来ましたので、願いを是非」
途端、期待するような目は、ほんのりと不安を帯びた目になる。
「あのっ、それなんですけど…」
視線をゆらゆらと彷徨わせながら、彼女は怯えた様に呟く。
「必ず、SNSで拡散しなきゃならないんですよね…?」
やっぱりか。
彼女の願いはもう知っているし、悩むのならそこだろうと思っていた。
私は、口内に飴玉を含んだかの様な甘い毒を吐く。
「そうですね、それが代償となるので。願いの内容から、その結果まで、きちんと拡散して頂く事になります。勿論、実名等、個人情報は、特に求めませんので」
「っでも、やっぱりバレちゃう事ってありますか…?」
「いえ!1度も御座いませんよ。そこまで不安でしたら、ぼかし気味の内容でも構いませんし」
なんか宗教みたいだな。
無意識によく喋る私の口に、宗教勧誘者みたいな話し方だな、と何となく考える。
そうなると、Aが神で、Aの協力者達が教徒?
なんだかおかしい。
突然笑い出しそうになるのを堪えとどめて、ニコッと彼女に微笑みかければ、彼女は瞳に見えた不安の色を消し、力を入れて上がっていた肩を下ろして、ため息をついた。
「それで、改めましてですけど、貴方の願いは?」
悠々と問い掛ければ、彼女は、
「――息子と…奏太と、もう一生会いたくないんです」
と、悲痛の叫びのように顔を顰めてボソリと言った。
10
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【毎日更新】教室崩壊カメレオン【3月完結確定】
めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。
真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。
あなたは何章で気づけますか?ーー
舞台はとある田舎町の中学校。
平和だったはずのクラスは
裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。
容疑者はたった7人のクラスメイト。
いじめを生み出す黒幕は誰なのか?
その目的は……?
「2人で犯人を見つけましょう」
そんな提案を持ちかけて来たのは
よりによって1番怪しい転校生。
黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。
それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。
中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?
Energy vampire
紫苑
ミステリー
*️⃣この話は実話を元にしたフィクションです。
エナジーヴァンパイアとは
人のエネルギーを吸い取り、周囲を疲弊させる人の事。本人は無自覚であることも多い。
登場人物
舞花 35歳
詩人
(クリエーターネームは
琴羽あるいは、Kotoha)
LANDY 22歳
作曲家募集のハッシュタグから応募してきた作曲家の1人
Tatsuya 25歳
琴羽と正式な音楽パートナーである作曲家
沙也加
人気のオラクルヒーラー
主に霊感霊視タロットを得意とする。ヒーラーネームはプリンセスさあや
舞花の高校時代からの友人
サファイア
音楽歴は10年以上のベテランの作曲家。ニューハーフ。
【あらすじ】
アマチュアの詩人 舞花
不思議な縁で音楽系YouTuberの世界に足を踏み入れる。
彼女は何人かの作曲家と知り合うことになるが、そのうちの一人が決して関わってはならない男だと後になって知ることになる…そう…彼はエナジーヴァンパイアだったのだ…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
残響の家
takehiro_music
ミステリー
「見える」力を持つ大学生・水瀬悠斗は、消えない過去の影を抱えていた。ある日、友人たちと共に訪れた廃墟「忘れられた館」が、彼の運命を揺り動かす。
そこは、かつて一家全員が失踪したという、忌まわしい過去を持つ場所。館内に足を踏み入れた悠斗たちは、時を超えた残響に導かれ、隠された真実に近づいていく。
壁の染み、床の軋み、風の囁き… 館は、過去の記憶を語りかける。失踪した家族、秘密の儀式、そして、悠斗の能力に隠された秘密とは?
友人との絆、そして、内なる声に導かれ、悠斗は「忘れられた館」に隠された真実と対峙する。それは、過去を解き放ち、未来を切り開くための、魂の試練となる。
インクの染みのように心に刻まれた過去、そして、微かに聞こえる未来への希望。古びた館を舞台に、時を超えたミステリーが、今、幕を開ける。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
ライフゲーム 〜 “LET‘S GO OUT THIS WORLD” 〜
忄☆
ミステリー
こことは違う、幸福な世界。
しかし、日に日に増えていく人口に対して、総帥が行った政策とは…
“ LET‘S GO OUT THIS WORLD ”
警視庁鑑識員・竹山誠吉事件簿「凶器消失」
桜坂詠恋
ミステリー
警視庁、ベテラン鑑識員・竹山誠吉は休暇を取り、妻の須美子と小京都・金沢へ夫婦水入らずの旅行へと出かけていた。
茶屋街を散策し、ドラマでよく見る街並みを楽しんでいた時、竹山の目の前を数台のパトカーが。
もはや条件反射でパトカーを追った竹山は、うっかり事件に首を突っ込み、足先までずっぽりとはまってしまう。竹山を待っていた驚きの事件とは。
単体でも楽しめる、「不動の焔・番外ミステリー」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる