ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!

ありぽん書籍発売中

文字の大きさ
上 下
57 / 110

57話 アトリエ・ギラギラ

しおりを挟む
「いやぁ、昨日は凄かったな」

「本当だよ。あんなにみんな喜んでくれるなんてな」

「だから言ったろ? みんなそんなに手の込んだ高い物じゃなくても、喜んでくらるってさ」

「ラビ達の、あんな子供のイタズラみたいな物まで喜んでたぞ? プレゼントって言っておいてなんだけど、あんな鼻やしっぽやらをくっ付けたので良いのかね。ププちゃんなんて顔、ただの楕円形だったんだぞ」

「クククッ、俺達やラビ達みたいに、色々な物が出たり引っ込んだりしてないもんな。ツルツルプヨプヨたから、何か形を形成してくれないと、確かにただの楕円形だわ」

「あれだけじゃちょっとだから、裏に俺達のチャンネル名と、丸の中にラビ達の顔写真でも付けておこうかなって」

「そうだな。じゃあ帰ったらやろう。まずは絵の具を買いに行かないと」

「まったく、よく全部使いきったよ」

 昨日の配信は、プレゼントを発表し終わってからも、視聴者さんの盛り上がりが止まらなくて。配信時間を30分延長する事になった。

 そして今朝あげた、昨日の配信のアーカイブへのコメント欄には、コメントが殺到していて。ブーちゃんの緊急配信とまではいかないけど、それくらいの勢いで、今もコメントが増えている。

 そして俺達といえば、それからの撮影に使う事もあるだろうし。もしかしたら何かでまたプレゼントを作るかもしれない。というかその前に、ラビ達が遊ぶのには欠かせないものだから、これから絵の具を買いに行くところだ。

 絵の具は協会の販売店よりも、そういう絵に関係する物を売っている専門店があるから、そこへ買いに行く。

 お店の名前は『アトリエ・ギラギラ』で、お店の外見もギラギラしている。店主の剛健さんがギラギラしたものが好きで、名前も外見もギラギラにしちゃったんだよ。
 何も知らずにお店の前を通った人は必ず驚き、何かやばい物でも売ってるお店なんじゃと、急いでお店から遠ざかる。それであとから絵関係のお店だと聞き、2度驚くっていうな。

 俺と晴翔が生まれた頃には、もう普通にあったお店だし、何を売っているか知っていたから、いつお店の前を通っても別にって感じだったけど。

 母さん達によると、赤ん坊の俺達が初めてお店を見た時は、赤ん坊ながらにかなり驚いていたらしい。見つめたまま固まり、少しすると2人同時にひと言、「ばぶぅ」と言ったって。その時の表情が、何だこれ、と言っているみたいで、みんなで大爆笑したそうだ。

 赤ん坊の頃の話しだから、もちろん記憶になんてないけれど、赤ん坊も驚く、それが『アトリエ・ギラギラ』である。

 ちなみに、ラビ達が初めて見た時も、いつもは初めての物には、何にでも興味を示すラビ達が、呆然として立ち尽くしていたぞ。あのブーちゃんまでもが目を見開き、口をポカンと開けて固まり。少しの間動かなくなってしまって、俺がおんぶする羽目に。
 まぁ、いつもおんぶしてるけど、あの時は固まっていたから、いつもみたいにしっかり背中におぶさってくれなくて、後ろにそのまま落としそうで本当に困ったよ。

 クーちゃんはどういう反応をするか。たぶんみんなと同じ反応になると思うけど。もしも、もしもだ、お店の外装に耐えられても。お店の中でも驚く物、じゃなかった。驚くかもしれない人が待っているからな。

「よし、着いたぞ。ここからは歩くからな」

 駐車場に着いて5分程歩く。が、あまりのギラギラ具合に、遠くからでもギラギラしているのが分かる。そしてそれを見たクーちゃんは、大丈夫か? 固まらないか? と心配する俺の気持ちも知らないで。ワクワク顔で、早く早くと俺の洋服を引っ張り。

 そしてついに、お店の前に着けば。

『かっこいいっ!! すごいっ!! ねぇ、タクパパ、かっこいいっ!! すごいギラギラ!! ぼくだいすき!!』

 と、大喜びだった。もしからたらダンジョンから出てきて、色々な物を見て喜んでいたけど。今日が1番かもしれない。
 あまりの喜びように、逆にラビ達が引いていた。そんなに喜ぶほど? これが? って感じにな。みんなクーちゃんが驚いて、固まるのを楽しみにしていたんだけどな。まるっきし真逆の反応だった。

「今日はここで買い物をするんだぞ」

『はやくはいろう!! タクパパ、はやく!!』

「分かった分かった」

「凄い反応たな。これなら中に入って、あの人に会っても大丈夫なんじゃないか?」

「俺とお前は初めて会った時、泣いて逃げ出したのにな。まぁ、小さ過ぎて覚えてないけど。ラビ達もせっかく復活しても、また固まってたし」

「そういや俺達の時は、ホワイトタイガーの兜に、ギンギラの鎧を着てたって言ってたよな」

「ラビ達の時はキラービーと、ビックポイズンスネーク。ブーちゃんの時は、たまたまカプリシャスキャットだったな」

「今日は何だろうな?」

「何だろうと、ギラギラだろうさ。さぁ、入ろう」

 俺は一応、くーちゃんをしっかり抱っこしてお店の中に入る。と、すぐにクーちゃんがあれ? と言った。

『ギラギラじゃない?』

「はははっ、お店の中は商品がたくさん置いてあるだろう? みんながギラギラだと、商品の色が分からないから、ギラギラじゃないんだ。でも、ギラギラもちゃんといるからな」

『ギ~ラギ~ラ、ギ~ラギ~ラ』

「お前、そんなにギラギラが好きだったのか」

「その声は拓哉と晴翔か?」

 話しているとお店の奥から、店主の剛健さんが話しかけてきた。

「はい!! 拓哉と晴翔です!! ラビ達も一緒です!!」

「新しい奴も一緒か!!」

「はい!!」

「そうか。じゃあ固まるか倒れなきゃ良いんだけどな。そっちに行くぞ!!」

 そう言った剛健さん。その後にガシャン、ガシャガシャッ!! という音がして。少しすると俺達の方へギラギラが近づいてきた。

『ギラギラ……?』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...