ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!

ありぽん書籍発売中

文字の大きさ
上 下
31 / 110

31話 追放した人達は今(3)

しおりを挟む
「よし! 討伐完了だ!!」

「修也、今回もうまく行ったな」

「ああ、これでだいぶ俺達の評価も上がるだろう」

「こんなに上手くいくなんてね。人が違うとこんなに変わるなんて。あいつが辞めた時も楽になったとは思ったけど」

「ええ、それ以上ですね」

「これもやっぱり、上川さんが俺達に力を貸してくれたおかげだな。そしてお前のおかげだ。本当に助かるよ、武」

「いいえ。俺は荷物持ちなだけですよ。全ては修也さん達の力です。さすがリーダーが自ら声をかけた人達です。リーダーはなかなか、自ら他に声をかけることはないんですよ」

「あら、そうなの。ほら、修也。やっぱりそうなのよ。これで証明されたじゃない。私達の実力は相当なものだって」

「おい、あまり調子に乗らない方が良いぞ」

「そうですよ。調子がいい時ほどしっかりしなければ。足元をすくわれるかもしれません」

「あら、ごめんなさい。私ったら」

「皆さん、なんて素晴らしいんでしょう。少し前に我々のギルドから追放された人達とは大違いです」

「何だ? 追放された奴らがいたのか?」

「はい。皆さんのように最初はとても調子が良く、どんどんレベルを上げていったんです。ですが今の皆さんと同じような会話が少しずつ増えてくると、だんだんとミスが多くなり。最後は自分達の力を過信し過ぎて、ギルドに大きな損失を与える事に」

「そんなバカな奴らがいたのね」

「そうなんです。リーダーのおかげで、すぐに持ち直すことはできましたが。ですがその人達と違い、あなた方はちゃんと自分を律することができている。それはとても素晴らしいことです。きっとリーダーは、そういうところが気に入って、あなた方をギルドへ勧誘したんでしょう」

「ふっ、そうか」

「私達は自分達のことを、しっかりと分かっていますからね」

「まったく、本当にあの疫病神を追放して良かったわね。あいつがいたら今頃まだ、ギルドに入れていなかったかもしれないえわ。あいつの力不足のせいでね」

「誰か追放を?」

「ああ、こっちの話しだ。しかしどこにでも、役に立たない奴はいるもんだな。さぁ、そろそろ外へ出るぞ」

「どうする? そのまま協会へ行くか?」

「ああ、今日は予定よりも早く終わったからな」

「ねぇ。早く終わったんだから、協会の後は自由よね」

「ああ、そうだが?」

「今日はこれから、買い物に行く予定なのよ。新しい洋服を買おうと思って」

「何だよ、また洋服かよ」

「何よ。私達は期待されているのよ。それなら普段からしっかりと自分を見せなくちゃ。それには外見も大事よ。あなたも少しは外見を気にしたら?」

「何だと?」

「おい、止めろ。協会の後は各自、自由にしていい。何をするのも自由だ。だが自分達がどんな存在なのか、忘れずに行動しろ」

「分かってるわよ」

「でしたら私はやはり、高級魔法薬店へ行きましょうかね」

「俺は武器屋だな。新しい店ができたんだよ。しっかり売っている物を確認しないとな」

「やはり素晴らしい!! 俺はなたた達に同行できて幸せです!!」

「よし、外へ出るぞ」

 荷物持ちの武を、もしもの時のために先に歩かせ、俺達も歩き始める。今日もギルドから出されている、それぞれのノルマの素材を全て集め、さらに多くの貴重な素材を手に入れる事ができた。

 俺達がオジットギルドに入ってから数週間。俺達はさらに力をつけたと実感できるほど、実績を残せている。まぁ、オジットギルドに入った時は少し驚いたが。

 各グループごとにノルマがあり、そのノルマがクリアできないと、ペナルティーとして、自分達が持っているアイテムや素材を没収される。
 しかもそのノルマがキツいため。俺達が入ってからまだ数週間なのに、2人の人物が追放されたくらいだ。そにため、もしかしたら俺達も、と一瞬最悪な事態を想像したが……。

 オジットギルド、ギルド長の上川さんが、俺達のパーティーに加えてくれた武は、今までの荷物運びとして、1番使える人物で。少しならば戦闘をできるため、俺達は動きやすく、難なくノルマを達成できた。

 それだけじゃない。ノルマ以上の成績を次々と上げたことで、俺達は数週間ながらにして、ギルドの上位に入ることができたんだ。これで次の試験では、良い成績を収めることが出来るだろう。

 まったく、こんなに順調に全てが動くとは。本当にあいつを追放してから、良い事ばかりだ。これで俺達の計画も進むというもの。

 俺達が何のために、オジッドギルドに入ったのか。周りにバレる事なく、だがこうしてギルド内での知名度は上がり。また俺達の配信を見て、一般人の俺達に対する知名度もさらに上がって、今のところ良い事ばかりだ。

 と、俺達の前を歩いていた武が話しかけてきた。

「すみません修也さん。お話しが」

「何だ?」

「明後日の討伐なのですが、その日は現場へ直行して良いでしょうか」

「何だ? 荷物はどうする?」

 いつもダンジョンに行く日は、ギルドで俺達の荷物を全てこいつに渡し、俺達は最低限の荷物しか持たずにダンジョンへ向かう。その方が初めから全力で動けるからだ。使うか使わないか分からない荷物を、持たせるという感じだな。

 だが直行ということは、俺達の荷物は持てないという事。前日に持たせても良いが、こいつの用事のために、俺達がわざわざこいつに会いに行くのもな。

「妹の診察が朝からあるのですが、どうしても母が朝早くは付き添えず。母が来るまで私がやりたいと。ですので病院から直接ダンジョンに、行かせてもらえればと思ったのですが」

 こいつには病弱な妹はいて、よく世話をしに病院へ行っている。本音としては妹なんて放っておけと思うが、ここは良い顔をしておかないとな。

「ああ、それなら構わないぞ。妹を優先しろ。いつもお前には世話になってるからな」

「ありがとうございます!!」

 ふんっ、良いよに使われているとも知らないで。そうだな、俺がギルドを立ち上げる時は、こいつも連れて行くか。荷物運びの能力は高いからな。

「いやねぇ、あんな事言っちゃって」

「ふっ、これも計画のうちですよ」

「チッ、次は荷物を持ってかなきゃならないのかよ」

 さて、次のノルマもすぐに終わらせて、俺は新たな魔獣でも捕まえに行くか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

ハズレ職〈召喚士〉がS級万能職に化けました〜無能と蔑まれた俺、伝説の召喚獣達に懐かれ力が覚醒したので世界最強です~

ヒツキノドカ
ファンタジー
 全ての冒険者は職業を持ち、その職業によって強さが決まる。  その中でも<召喚士>はハズレ職と蔑まれていた。  召喚の契約を行うには『召喚スポット』を探し当てる必要があるが、召喚スポットはあまりに発見が困難。  そのためほとんどの召喚士は召喚獣の一匹すら持っていない。  そんな召喚士のロイは依頼さえ受けさせてもらえず、冒険者ギルドの雑用としてこき使われる毎日を過ごしていた。  しかし、ある日を境にロイの人生は一変する。  ギルドに命じられたどぶさらいの途中で、ロイは偶然一つの召喚スポットを見つけたのだ。  そこで手に入ったのは――規格外のサーチ能力を持つ最強クラスの召喚武装、『導ノ剣』。  この『導ノ剣』はあらゆるものを見つけ出せる。  たとえそれまでどんな手段でも探知できないとされていた召喚スポットさえも。    ロイは『導ノ剣』の規格外なサーチ能力によって発見困難な召喚スポットをサクサク見つけ、強力な召喚獣や召喚武装と契約し、急激に成長していく。  これは底辺と蔑まれた『召喚士』が、圧倒的な成長速度で成り上がっていく痛快な物語。 ▽ いつも閲覧、感想等ありがとうございます! 執筆のモチベーションになっています! ※2021.4.24追記 更新は毎日12時過ぎにする予定です。調子が良ければ増えるかも? ※2021.4.25追記 お陰様でHOTランキング3位にランクインできました! ご愛読感謝! ※2021.4.25追記 冒頭三話が少し冗長だったので、二話にまとめました。ブクマがずれてしまった方すみません……!

処理中です...