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12話 ラビたんのこだわりと凄技の畑配信3
しおりを挟む“お、始まるぞ!”
“ラビたんの種蒔き!”
“やっぱ畑配信はこれがないと”
“へぇ、そんなに言われるほどの物なんだ”
“初めての人は驚くだろうな”
“驚くっていうか、は?って感じだろうな”
“まぁ、あの撒き方じゃなw”
“普通に見たら種蒔きじゃないしw”
“どういう事?”
“いいから見てなって”
「それじゃあ、ここからの種蒔きは、ラビに任せようと思います。俺達は邪魔になるんで、少し離れたところからラビを見てますね。ちなみに向かって右側がアロッコリーの畑で、左がクロッコリーです。じゃあ、ラビ頼むな」
『きゅう!!』
元気よく返事をしたラビ。そして種の入っている小さなザルを手に持つと、姿勢を整え、畑をジッと見つめる。そして……。
『きゅいぃぃぃっ!!』
フィギアスケーターのように思い切り回転ジャンプをするラビ。着地すると、もう1度すぐに回転ジャンプをして。最後はシュタッ!! と綺麗な着地を決めた。ポーズも忘れずにな。
“え?”
“は?”
“何だこれ?”
“え? これって今、ラビたんがやったの?”
“どう見てもラビだろw”
“www”
“やっぱそんな反応になるよなw”
俺は畑に近づき、視聴者さんにラビが蒔いた種を見てもらう。どうだこの、少しも列がズレずに、均一に並んでいる種達は!
“これぞラビたんの畑の技[回転ジャンプ種蒔き]”
“そのままかい!w”
“誰が最初にそう言ったのか、前からみんなそう言ってるよな”
“ラビたん凄いだろう。全部の種がまっすぐ均等に蒔かれてるんだぜ”
“絶対にズレないもんなw”
本当に誰が言い出したのか。ラビの回転ジャンプ撒きは、相変わらず正確に全ての種が蒔いてあった。
この技をやったのは、畑仕事を始めて5回目くらいだったか? いきなり俺の横で回転ジャンプをしたから何事かと思ったらまさかの種蒔きで、視聴者さんじゃないけど俺も驚いた。
しかもラビは、今では訓練をして、ダンジョンの中でも大技を繰り出すようになったけれど。回転ジャンプ種蒔きを覚えた時は、まだ弱い攻撃しかできなくて。それなのに畑のために、あんな大技まで覚えたんだ。
「いかがですか? ラビの回転ジャンプ種蒔きは。畑に来て毎回種蒔きをするわけではないので、今日見られた視聴者さんはラッキーですよ」
“種蒔きのためだけに覚えた技なんだぜ!”
“凄いだろう!”
“何でお前が威張ってるんだよw”
“畑のためだけ!?”
“そうか、これが畑のラビ隊長なんだな”
“ラビたん凄~い!!”
“ラビ隊長! 私はあなたについて行きます!!”
“何だ? 畑仕事部隊員にでもなるつもりかよw”
「ラビ、種蒔きお疲れ様。じゃあ、そこで待っててくれ。細かい所を、俺とププちゃんとブーちゃんで終わらせるから」
ラビは頷くと畑の外へ。俺はププちゃんに種の入っている小さなザルを渡して、寝ているブーちゃんには、顔前にザルを置いた。ププちゃんがラビが蒔いた種からずれないよう、1つずつ丁寧に種を蒔いていく。そんなププちゃんの隣で一緒に種を蒔く俺。
ブーちゃんはどうしているかと、途中でブーちゃんを見てみれば、ブーちゃんは相変わらずだった。仰向けに寝ていたのを横向きに変え、その姿勢のまま種をヒョイッ、ヒョイッと、1つずと飛ばして、種を蒔いていたんだ。
そんなブーちゃんに、しっかり蒔けと蹴りを入れるラビ。それを気にせず、大欠伸をしながら種蒔きを続けるブーちゃん。
“みんなの性格が出てるなぁw”
“ププちゃんは確か3匹の中で1番小さいんだっけ?”
“確かそうだよ”
“お兄ちゃんの事を見て、しっかりと種蒔きしてる感じが出てて可愛いな”
“ねぇ、可愛いよねぇ”
“それに比べてブーちゃんw”
“さすがブレないなw”
“面倒くさいけどやってやる感がw”
“休日の父ちゃんかよw”
こうして種蒔きを終えた俺達。最後はププちゃんに水を撒いて貰って、種蒔きは終了だ。
「じゃあププちゃん、よろしくな」
『ぷぷ~!! ぷ~、ぷぷぷぷぷっ!!』
ププちゃんが思い切りジャンプして、畑全体に水を飛ばす。これが噴水みたいで、けっこう綺麗なんだ。しかも今日は天気が良いから、太陽の光でキラキラ光ってさらに綺麗で。
“あ、見て!!”
“綺麗な虹!!”
“あ、ププちゃんも時々虹色に光って見える!!”
“綺麗だな”
“ププちゃん、今日は虹色でさらに可愛い~!!”
“その水を俺にもかけてくれぇ!!”
“でだよw”
……ごほんっ。ということで、これで今回の種蒔きは無事終了だ。
「ではここからは、前に植えてあった野菜の様子を見にいきましょう。あ、それとププちゃんの水ですが、あんがい力が強いんで、もし水巻をしているププちゃんを見かけても、水を浴びないでくださいね。みなさん吹き飛ばされる可能性があるので」
“吹き飛ばされたい”
“どんなだよw”
“やめとけやめとけw”
“ププちゃんに迷惑かけるなよ”
“大丈夫、きっと相手にされないさw”
本当にやめといた方が良いぞ? 俺は昔思い切り飛ばされたし。まぁ、ちゃんと力の加減はしてくれると思うけど……。
俺はラビとププちゃんと畑を周ることに。ブーちゃんは鼻に蝶々が止まったまま寝ているので、放っておくことにした。そうして野菜を確認しに行けば、そこでもラビ隊長の厳しいチェックが入り。
うちではラビ達が野菜を食べるし、他の魔獣達と暮らしている人達が安心して野菜をあげられるよう、人が作った農薬は使わず。一応ダンジョン産で魔獣達に害のない、害虫が嫌がる液体を、野菜にスプレーをしてある。ただそれでも、害虫が全くつかないってわけもなく。
その害虫を1匹も残してなるものかと、凄い勢いでチェックし駆除していくラビ。
“あの鋭い目w”
“この前まったりダンジョン配信見たけど、その時たまたま現れた魔獣より鋭い目してるぜw”
“今のラビたんを見たら、ダンジョンの魔獣達もタジタジだろうw”
“キャー! ラビたん、カワカッコいいぃぃぃ!!”
“全てを駆逐するんだ!”
“なんか違わないか?w”
とりあえず今日の配信も、無事に終わらせられそうだ。……ラビが何か畑のことで、問題点を見つけなければだけど。
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