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63.もしもの時の待ち合わせ場所

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『アーベル、日が出てきたぞ』

「起こしてくれてありがとう。さぁ、みんなも起きて」

 アンセルと僕が声をかければ、すぐにみんなが起きた。そして僕が着替えた後に、みんなで軽食を食べて、玄関以外の場所の戸締りをみんなで確認。その後それぞれカバンを持ったら玄関へ。

「よし、玄関も大丈夫。さぁ、行こうか。と、その前に、行ってきます!!」

『『『『行ってきます!!』』』』

 みんなで僕達の家に向かって、言ってきますの挨拶をする。必ずみんなで返ってくるから、留守の間よろしくな。

 こうして僕達は治療院へと徒歩で向かった。向かっている最中周りを確認したけれど、けっこうな人達が起きて、色々と作業していた。今回のことはもう、街の人たち全員に伝わっているし、それぞれやることはいっぱいだからな。

『ねぇ、アーベル。僕達はどんなお仕事お手伝いするの?』

『そうだな。みんなには物を運んでもらう、お手伝いをしてもらおうかな。僕も回復魔法を使っていない時は、そういった仕事をするんだけど。もしも僕が回復魔法や、薬を扱っている時は、僕が言った必要な物を、僕の所へ持ってきてくれる?』

『俺、たくさんお手伝いするぞ!!』

『ハピちゃんも!!』

『ぼくもいっぱい運べるよ!』

「みんなよろしくね。ただ、そうだな。もしも魔獣が街に来て、バタバタしている時は、お手伝いしている時以外は、必ず僕の側にいてね。もしみんなで避難しなくちゃいけない時に、バラバラでいると、避難が遅れちゃうかもしれないからね」

『アーベルパパ達がやっつけるよ!!』

『絶対、みんな倒しちゃうぞ!!』

『カロリーナもいる、カロリーナの家族も!!』

『みんなとっても強い?』

 そうか、テディーはカロリーナの強さは知ってるけど、お父さん達の強さはまだ知らないっけ。僕の代わりにセレン達が、お父さんさん達の強さについて話す。すると話しを聞いたテディーの目が輝いて。

『ぼく、アーベルパパ達の戦ってるところ見たい!!』

 と言い出した。見せてあげたいけど、今回はさすがになぁ。と、僕が話しする前に、アンセルが今回はダメだって言ってくれたよ。それから今回の魔獣達のことを、もう少し詳しくみんなに話してくれて。

 そうしたらテディーは納得してくれて。でも今回のことが終わったら、みんなでどこかに行って、お父さん達が戦ってるところが見たいって、それの約束をして、さっきの注意に戻る。
 
 何かが起こって、僕がみんなを呼んだら、すぐに僕の所へ集まること。その時何をしていてもね。
 でも集まっている最中に、どうしても僕の所へ来られなかったら。あんまり考えたくはないけど、魔獣の遠距離攻撃で、建物が壊れちゃってバラバラになっちゃった、なんてこともあるかもしれない。

 その時はどこかで待ち合わせをすることに。分かりやすい場所が良いって事で、第2待ち合わせ場所まで考えた。第1待ち合わせは、これから行く治療院の前にある、大きな銅像の前。ドラゴンの銅像が置いてあるんだよ。分かりやすいからそこを第1待ち合わせにした。

 そして第2待ち合わせ場所だけど……。

「みんな、良い? 第1待ち合わせ場所が壊されていたら、こっちに来てね」

『美味しいクッキーのお店!!』

『大きなクッキーが好きだぞ!!』

『キラキラ甘ーいお菓子が好き!!』

『ぼくは、ぼくは』

 第2待ち合わせの場所は、治療院近くのクッキーのお店を選んだ。このクッキーのお店は、魔獣用のクッキーやそれ以外のお菓子も売っていてる、魔獣に大人気のお店なんだ。ちなみにハピちゃんが言ったのは、金平糖みたいなお菓子のことだ。

 それでどうしてこのお店を待ち合わせ場所に選んだのか。それはお店の屋根部分に、大きなクッキーの模型が付いているから。
 さっきのドラゴンの銅像じゃないけど、このクッキーの模型もかなり目立つし、何よりみんなが大好きなお店だから、ここへ行きやすいと思って。

『魔獣達がこっちにきてる間、クッキーないのは寂しい』

『良い匂いもしないぞ。いつもの美味しい匂い』

『中も真っ暗』

『お菓子いっぱいない?』

 みんなお店を覗いてがっかりしている。いつもみんな、ここのお菓子を楽しみにしているからな。お店の集まっている地区にくれば、毎回と言って良いほど寄っている。そんな大好きなお店に入れないのは、それはがっかりするだろう。

 でも僕は、こんな時のために、しっかりと準備してきた。

「みんな、大丈夫だよ。みんなのお菓子は僕がちゃんと持ってきたからね」

『本当!?』

『お菓子あるのか!!』

『キラキラお菓子!!』

『お菓子いっぱい!?』

 どれだけ今回のことが長引くかは分からないけれど、かなりのお菓子を持ってきたんだよ。いくら緊張していたって、時々はゆっくり落ち着く時間が必要だろう? 

 だけど一気には全部出さない。そのまま渡せば、必ずその日のうちになくなりそうだからな。午前、午後、夜と1個ずつあげるつもりだ。もちろん小さいお菓子の時は1個じゃなく2個あげるぞ。

 他にもいっぺんに出さないのには理由が。もし本当に避難することになったら? なるべく食料は取っておかないといけない。お菓子だって大切な食料だ。カバンには常に食料を入れておかないと。みんなにこの話しをすると、全員が分かってくれた。

「よし! じゃあ分かってくれたみんなに飴をあげるよ!」

 僕はポケットに入れてあった飴を取り出してみんなにあげる。疲れた時には甘いものを。カバンにもポケットにも、飴を入れてきたんだ。
 喜んで飴を舐めるみんな。舐める? 舐めるっていうか、バリバリ、ボリボリ、カカカカッと、噛んだり突いたりして、すぐに食べ終えていた。

「さぁ、みんな、待ち合わせ場所はしっかり覚えた?」

『『『『うん!!』』』』

「アンセル達も良い? みんなは匂いで、みんながどこに居るか分かるかもしれないけど、僕が分からないから、2箇所を待ち合わせ場所にさせてね」

『ああ、大丈夫だ』

『私達も大丈夫よ。ね、あなた』

『ああ。それと子供達のお菓子ありがとう』

「みんなの分もあるからね。よし!! じゃあ治療院へ行くよ!!」
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