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44.子ベアーを助けるためには
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少しの沈黙の後、親ベアーが口を開いた。
『……そうか。俺の息子は長く生きられんかもしれないのか』
まさか、ようやく薬を貰えるって、これでこれからまた、具合が悪くなっても安心だって。親ベアーは安心できただろうに。まさかこんな事実を突き付けられるなんて。僕は子ベアーを見ていられなくて下を向いてしまう。
「そう、このまま何もしなければ、そういう可能性があるということよ」
『息子を調べてくれてありがとう。このまま何も分からずに、息子を見ているしかできないよりもぜんぜん良い。それに今回分かったことで、これから息子のために、俺も色々なことを考えてやれる。そしていつか息子が旅立つ時が来た時は、その時はしっかりと送ってやろう』
親ベアーの言葉に、また部屋の中がし~んとなる。だけど、その沈黙はさっきよりも続かなかった。さっきまでの硬い感じではなく、柔らかい感じの声で、お母さんが話し始めたんだ。
「私の話しを聞いていた? このまま何もしなければ、と言ったでしょう?」
『ん? どういうことだ? 今のはこのまま森へ帰り、薬を使い切り、薬も効かなくなれば。というような感じで言ったのではないのか?』
「違うわよ。何もしなければっていうのは、このまま対策を取らなけらば、ということよ。対策をとればもしかしたら、他の同じ歳の子達よりも弱いかもしれないけれど。それでも森で、1匹で生きていけるくらいにまでは、元気に育つことができる可能性があるってことよ」
『本当か!?』
「あくまでもこれも可能性よ。だけど何もやらないよりは、あの子が生きられる可能性は高いわ」
『そんな……、まさかそんな事が』
僕が急いで顔を上げて親ベアーを見ると、心配顔ながら、嬉しそうな顔もしていた。
お母さんによると、お母さんが作っている薬の中に、特別な薬があるらしくて。それはお母さんオリジナルの薬で、僕達が住んでいる街にも、他の街にも売っていない、本当にオリジナルの薬らしい。
そしてその薬なんだけど。魔獣の基礎体力をあげる薬らしく。基礎体力が上がれば、それに合わせて体も丈夫になり、魔力も少しずつ上がってきて。薬なしでその状態が続くようになれば、もう普通の生活をしても問題なくなるって。
その薬ができたのは、偶然だったみたいだ。母さんが忙しくて、色々な薬を同時に作っていた時に、滑って転んで薬が混ざったらしく。
その混ざった薬を片付けていて、ふと何かを感じたお母さん。鑑定をしてみたら、なんと基礎体力増加の表示が。
それからお母さんは、どの薬がどれだけ混ざって、どの薬草が必要か、ずっと研究していたんだよ。僕はぜんぜん知らなかったけど。
そしてその薬がちょうど1年前に出来上がったって言うんだ。お母さんは出来上がった薬を、友達の契約魔獣に使うことに。友達もそれを了承してくれて。
どうもそのうちの契約魔獣が、今の子ベアーと同じ状態だったらしく。だからその友達は、お母さんの薬を試してみることに。
その結果、まだ薬は飲んでいるけれど、だいぶ体力が上がって、体も大きくなり。具合が悪くなることもなくなったって。
他にも1匹、お父さんの友達の契約子魔獣にも使っていて。その子魔獣もいい感じで成長できているらしんだ。
「まだしっかりと、許可を得た薬ではないけれど、私は自信を持っている薬なの。だから来年治療院に申請しようと。薬を認めてもらうために、薬をみんなに見てもらうのよ。それで認めてもらえれば、正式に薬を販売する事ができる」
『凄いじゃないか!! そんな薬を作ったのか』
「だけど今言ったように、まだ認められていない薬なの。だからもしこの薬を使うのなら、自己責任になるし。もしかしたら効かない場合もあるって事」
『ああ、そう言うことか』
「だから私は強制はしないわ。だけど何もしないままでいるよりも、可能性は大きく上がる。ちなみに。薬には特別珍しい薬草も素材も使っていないから、薬を飲んで体に害が起こる、なんてことはないから安心して。ただ、言った通り、効くか効かないかが問題ってこと」
『その薬は、すぐに使えるのか?』
「ええ。今日からでもすぐにね」
『それなら……』
言いかけた親ベアーをまたお母さんが止めた。まだ別の問題があるらしい。
薬は定期的に摂取しないといけなくて、最初は1ヶ月に2回。飲み続けると体力が上がってくるから、体力が上がったのをしっかりと確認できたら。1ヶ月に1回。そうしてその時その時で、薬の量も変えて摂取していくらしい。
『なるほど。短い間隔で続けていくという事だな』
「ええ。そしてそれが次の問題なのよ。あなた、本来あなた達が住んでいる森からこの街まで来るのに、どれだけ日数がかかったかしら? それが往復なら? 1ヶ月に2回の薬だと、どう考えても無理でしょう?」
『ああ~、確かにそれは』
そうだよ、スノーベアー親子が元々住んでいる森まで、往復で何日かかるんだ? もし往復できたとしても、森に帰ったらすぐにまたここへ来ることに。それじゃあいくら子ベアーのための薬でも、逆にその移動で疲れて病気になる可能性が。
「だからまた私からの提案よ。もしも嫌だったら、他の方法を考えるから、まずは聞いてくれないかしら」
『ああ、もちろん聞かせてくれ。君の提案だったら良い提案だろう』
「あなたとあなたの子、元住んでいた森へ帰らないで、私達の家族になって、この街で暮らさないかしら」
『は?』
僕も思わずお母さんの方を見る。家族になる? それってそういう事だよな?
『あ~、お前の家族とは。魔法を使っての家族か? それとも家族を装う感じの家族か?』
「どちらかといえば、どちらもという感じかしら。まぁ、これも場合によるのだけれど」
『どっちも? どういう事だ?』
本当、親ベアーじゃないけど、お母さんどういう事なんだ?
『……そうか。俺の息子は長く生きられんかもしれないのか』
まさか、ようやく薬を貰えるって、これでこれからまた、具合が悪くなっても安心だって。親ベアーは安心できただろうに。まさかこんな事実を突き付けられるなんて。僕は子ベアーを見ていられなくて下を向いてしまう。
「そう、このまま何もしなければ、そういう可能性があるということよ」
『息子を調べてくれてありがとう。このまま何も分からずに、息子を見ているしかできないよりもぜんぜん良い。それに今回分かったことで、これから息子のために、俺も色々なことを考えてやれる。そしていつか息子が旅立つ時が来た時は、その時はしっかりと送ってやろう』
親ベアーの言葉に、また部屋の中がし~んとなる。だけど、その沈黙はさっきよりも続かなかった。さっきまでの硬い感じではなく、柔らかい感じの声で、お母さんが話し始めたんだ。
「私の話しを聞いていた? このまま何もしなければ、と言ったでしょう?」
『ん? どういうことだ? 今のはこのまま森へ帰り、薬を使い切り、薬も効かなくなれば。というような感じで言ったのではないのか?』
「違うわよ。何もしなければっていうのは、このまま対策を取らなけらば、ということよ。対策をとればもしかしたら、他の同じ歳の子達よりも弱いかもしれないけれど。それでも森で、1匹で生きていけるくらいにまでは、元気に育つことができる可能性があるってことよ」
『本当か!?』
「あくまでもこれも可能性よ。だけど何もやらないよりは、あの子が生きられる可能性は高いわ」
『そんな……、まさかそんな事が』
僕が急いで顔を上げて親ベアーを見ると、心配顔ながら、嬉しそうな顔もしていた。
お母さんによると、お母さんが作っている薬の中に、特別な薬があるらしくて。それはお母さんオリジナルの薬で、僕達が住んでいる街にも、他の街にも売っていない、本当にオリジナルの薬らしい。
そしてその薬なんだけど。魔獣の基礎体力をあげる薬らしく。基礎体力が上がれば、それに合わせて体も丈夫になり、魔力も少しずつ上がってきて。薬なしでその状態が続くようになれば、もう普通の生活をしても問題なくなるって。
その薬ができたのは、偶然だったみたいだ。母さんが忙しくて、色々な薬を同時に作っていた時に、滑って転んで薬が混ざったらしく。
その混ざった薬を片付けていて、ふと何かを感じたお母さん。鑑定をしてみたら、なんと基礎体力増加の表示が。
それからお母さんは、どの薬がどれだけ混ざって、どの薬草が必要か、ずっと研究していたんだよ。僕はぜんぜん知らなかったけど。
そしてその薬がちょうど1年前に出来上がったって言うんだ。お母さんは出来上がった薬を、友達の契約魔獣に使うことに。友達もそれを了承してくれて。
どうもそのうちの契約魔獣が、今の子ベアーと同じ状態だったらしく。だからその友達は、お母さんの薬を試してみることに。
その結果、まだ薬は飲んでいるけれど、だいぶ体力が上がって、体も大きくなり。具合が悪くなることもなくなったって。
他にも1匹、お父さんの友達の契約子魔獣にも使っていて。その子魔獣もいい感じで成長できているらしんだ。
「まだしっかりと、許可を得た薬ではないけれど、私は自信を持っている薬なの。だから来年治療院に申請しようと。薬を認めてもらうために、薬をみんなに見てもらうのよ。それで認めてもらえれば、正式に薬を販売する事ができる」
『凄いじゃないか!! そんな薬を作ったのか』
「だけど今言ったように、まだ認められていない薬なの。だからもしこの薬を使うのなら、自己責任になるし。もしかしたら効かない場合もあるって事」
『ああ、そう言うことか』
「だから私は強制はしないわ。だけど何もしないままでいるよりも、可能性は大きく上がる。ちなみに。薬には特別珍しい薬草も素材も使っていないから、薬を飲んで体に害が起こる、なんてことはないから安心して。ただ、言った通り、効くか効かないかが問題ってこと」
『その薬は、すぐに使えるのか?』
「ええ。今日からでもすぐにね」
『それなら……』
言いかけた親ベアーをまたお母さんが止めた。まだ別の問題があるらしい。
薬は定期的に摂取しないといけなくて、最初は1ヶ月に2回。飲み続けると体力が上がってくるから、体力が上がったのをしっかりと確認できたら。1ヶ月に1回。そうしてその時その時で、薬の量も変えて摂取していくらしい。
『なるほど。短い間隔で続けていくという事だな』
「ええ。そしてそれが次の問題なのよ。あなた、本来あなた達が住んでいる森からこの街まで来るのに、どれだけ日数がかかったかしら? それが往復なら? 1ヶ月に2回の薬だと、どう考えても無理でしょう?」
『ああ~、確かにそれは』
そうだよ、スノーベアー親子が元々住んでいる森まで、往復で何日かかるんだ? もし往復できたとしても、森に帰ったらすぐにまたここへ来ることに。それじゃあいくら子ベアーのための薬でも、逆にその移動で疲れて病気になる可能性が。
「だからまた私からの提案よ。もしも嫌だったら、他の方法を考えるから、まずは聞いてくれないかしら」
『ああ、もちろん聞かせてくれ。君の提案だったら良い提案だろう』
「あなたとあなたの子、元住んでいた森へ帰らないで、私達の家族になって、この街で暮らさないかしら」
『は?』
僕も思わずお母さんの方を見る。家族になる? それってそういう事だよな?
『あ~、お前の家族とは。魔法を使っての家族か? それとも家族を装う感じの家族か?』
「どちらかといえば、どちらもという感じかしら。まぁ、これも場合によるのだけれど」
『どっちも? どういう事だ?』
本当、親ベアーじゃないけど、お母さんどういう事なんだ?
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