上 下
37 / 72

37.親子スノーベアーと僕たち家族とのまさかの出会い

しおりを挟む
 何だ? 僕とお母さんの名前に、凄い食いついてきたけど、僕達を知っているのか? 僕は1度も会ったことないぞ? 

「確かに僕はアーベルで、僕のお母さんは薬を作っているけど。それがどうしたんだ?」

『まさか、探して訪ねようとしていた人間に、こんなところで会うことができるなんて。しかも俺を含め、息子を2度も助けてもらえるとは!!』

 は? 探していた? 僕とお母さんを? それに2回も助けたって、やっぱり僕にはそんな記憶はないし。今回初めて会っているんだから、2匹を助けたのは1回目なのは当たり前だし。本当に一体何なんだ?

「僕はあなた達と会ったのは初めてのはずだけど? それに治療だって、初めて会ったんだから、初めてのはずだろう?」

 それとももしかして、俺が小さい頃にあったのか? 赤ん坊の頃とか。でも俺は最初から前世の記憶を持ったまま転生してきて、意識ははっきりしていたから、赤ん坊の頃から何をしていたのか、しっかりと覚えている。

 大きくなるまでは、街から出たこともなかったぞ? それなのにどうやって野生の魔獣と会うことができるんだよ。もしかして野生の魔獣じゃないのか? 
 僕と同じように、契約している人間がいて、その人が街へ連れてきていて。その時に出会っていたとか?

「僕の記憶だと、あなた達には会ったことはないはずだよ」

『あっ、いや。すまない、あまりの偶然と最高の出会いに、嬉しくて声を上げてしまった。確かに俺とアーベルとは初対面なのだが、実はお前の母親と会ったことがあるんだ』

「お母さんと?」

 詳しく話しを聞いた僕。話しを聞いてみると、どうもそれは1年ほど前の出来事で。確かにその頃お母さんは、どうしても必要な薬草があるとかで、少し遠い街。行きと帰り、滞在期間を合わせると6日くらいの旅に出ていた。
 その時はお母さんは、仕事仲間も一緒だったから、僕とお父さんは家で留守番をしていることに。
 
 そして行きか帰りか、それは分からないが、その時にこの親子スノーベアーとお母さんは出会ったようで。その時も子スノーベアーは風邪を拗らせていたらしく、親スノーベアーはどうにもできず、大変困っていたと。

 野生の魔獣達は、少しくらいの体調の変化なら問題はないが、もし悪化してしまった場合。自分が回復魔法を使えるか、仲間が回復魔法を使えれば問題なく、すぐに魔法で回復する事ができる。

 もし仲間で回復魔法が使える者がいなければ、仲の良い別の種類の魔獣に助けを求めることも。ただこの場合は、本当に本当に仲が良い魔獣に頼むため、ほとんど頼むことはないようだ。

 となると誰も回復魔法を使えなければ? 具合が悪化するのをただただ見ていることしかできず、更に体調を崩した魔獣は……。

 1年前の子スノーベアーは、まさにその状態だったと。そしてそのときの親スノーベアーは、もう子スノーベアーはダメだと思っていたらしい。あまりにも症状が酷かったから。

 その時突然ある人間が現れて。勿論親スノーベアーはその人間を攻撃しようとした。でも一瞬で投げ飛ばされて、そのまま動くなと圧をかけられ、動けなくなってしまった。

 そんな動けない親スノーベアーの前で、その人間は子スノーベアーに何かを飲ませた。親スノーベアーはそれを見ているしかなく。きっと飲まされた物は毒で、子スノーベアーを殺され、素材にされると思っていた。

 だがいくら経っても子スノーベアーは死なずに、それどころかあれだけ苦しんでいたのに、どんどん症状が良くなっていき。最後には完璧に回復してしまったと。
 驚いている中、人間が親スノーベアーに話しをしてきて。子スノーベアーがもう少し落ち着くまで、一緒にいると言ってきたって。

 色々その人間と話しをした親スノーベアー。その時に名前とその人間が何をしている人間なのかを聞き、家族の話も聞くことに。そしてそれから数時間、最後別れる時に、予備の薬をもらい別れたと。

 1週間前、子スノーベアーはまた風邪を引いてしまい、薬で回復させたが心配で。その人間を頼りにここまで来た。別れる時に、いつでも尋ねてこいって言われたらしいんだ。それでここまで来たんだけど。

 その人間っていうのが、お母さんだったんだよ。まさかのお母さん。お母さん、薬草を買いに行っただけじゃなかったのか? まったく危ないことをして。って僕もか。まさか親子揃ってこのスノーベアーの親子を助けるなんてなぁ。

「そうか。ならちょうど会えて良かった。お母さんは尋ねてこいって簡単に言ったみたいだけど。このままだったら絶対壁の所で止められていたし。下手したら攻撃されてたよ」

『俺もそれはどうしようかと思っていたんだが、そのうちこの辺をお前の母親が通るとか、それまでこの森で暮らそうと思っていたんだ』

「どうする?、このまま僕が連れていっても良いけど、やっぱり壁で止められると思うんだよ」

『魔獣と人が共に入ることはできるか? よく人間が住んでいる場所へ、入って行っている魔獣達がいるだろう? お前の家族の魔獣達もそうだが』

「確かのそうだけど、それは契約している魔獣なんだ。僕の連れだって言って入れてもらえるかどうか。あなたは大きいから。それに一応街では、あなたは危険とされる魔獣なんだよ」

『それならば、縮むのはどうだ? 俺は息子と同じくらいまで縮む事ができるんだ』

「そうなのか!? それなら何とかなるか? それとももしダメそうなら、裏の壁の方へ回ってもらって、お母さんを呼んでくるか」
 
『できるならば会いたいのだが』

「分かった、やってみるよ。だけど今僕達は薬草採取の最中なんだ。それが終わってからでも良いか?」

『ああ、ならば俺達もそれを手伝おう』

「そうか!! ありがとう!!」
 
 こうしてまさかの出会いを果たした僕達。セレン達がクッキーを食べ終わるのを待って、薬草を探して移動することに。その時に今回親スノーベアーがあんな酷い怪我を負った経緯を聞いたんだけど。そっちでもまさかの話しを聞くことになって。

 しかもその後の薬草採取で、またまたあることに巻き込まれるなんて。そしてその巻き込まれたことによって、僕達の運命が大きく変わり始めるなんて。そんなこと少しも思っていなかった。



      *********

お読みいただきありがとうございます。

明日の配信より、ボーナスタイム中の更新となります。
毎日配信時間が変わってしまいますが、
よろしくお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。 木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。 何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。 そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。 なんか、まぁ、ダラダラと。 で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……? 「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」 「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」 「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」 あ、あのー…? その場所には何故か特別な事が起こり続けて…? これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。 ※HOT男性向けランキング1位達成 ※ファンタジーランキング 24h 3位達成 ※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生したら守護者?になり称号に『お詫び』があるのだが

紗砂
ファンタジー
ある日、トラックに轢かれ死んだ都木涼。 そんな都木の目の前に現れたのは転生神だと名乗る不審者。 転生神)『誰が不審者じゃ!      わしは、列記とした神で…』 そんな不審……痛い奴……転生神のミスにより記憶があるまま転生してしまった。 転生神)『す、スルーしたじゃと!?      しかもミスしたなどと…』 しかもその世界は、なんと剣と魔法の世界だった。 ステータスの職業欄は何故か2つあるし?つきだし……。 ?って何だよ?って!! 転生神)『わし知らんもん。      わしはミスしとらんし』 そんな転生神によって転生させられた冒険者?のお話。 転生神)『ほれ、さっさと読ん……』 コメディー&バトルファンタジー(のつもり)スタートです! 転生神)『何故無視するんじゃぁぁ!』 転生神)『今の題は仮じゃからな!      題名募集中じゃ!』

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...