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29.神様のミスの尻拭い(***視点、後半アーベル視点)

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『はぁ、まだ見つからない。この辺に居るっていうのは分かったのに』

 あの子が転生して13年。神様のせいで色々大変な事になっちゃって。でもようやくあの子の痕跡を見つけたのに、それから情報がまったく集まらなくなっちゃった。

 大体さ、神様が悪いのに、何で私達が神様の尻拭いをしなくちゃいけないの? ミスをしたのは神様なんだから、神様が最後まで責任を持つべきなのよ。
 何が全てを見守っているよ。それがちゃんとできていないから、私達がこんなに苦労しているっていうのに。

 この世界の人達は5歳にならないと力を授かれないと思っているけど、それは違うわ。実はこの世界に誕生した時には、既に力を神様から授かっているの。それが目に見えるようになるのが5歳ってだけでね。
 転生している最中に神様が力を授けて、生まれる時には決まっているって感じね。

 それなのにあの人が転生する時、神様が授ける力を間違っただなんて。挙句その時に別でも問題が起きていて、それに気づいたのはかなり後になってから。
 しかも魔法が使える世界はいくつもあるのだけれど、予定されていた世界に転生していないって分かった時には……。

 勿論私達神の使いは、すぐに神様に彼を探すように言ったわ。それなのにそれまでの大きな問題、神様が原因だけど。その問題解決に力を使い過ぎていた神様は、すぐ探す事ができなくて。更に時間が経つ事に。

 そうしてあの人が転生してから13年、ようやく何とか、この世界の何処かにあの人がいるって分かったけど、それでも細かい場所までは。

 そこで私が選ばれる事に。私は他の神の使いよりも、周りの気配に敏感だから、この世界に来て彼を探して、使える魔法の修正をしてきて欲しいって。
 神様ったら、力を蓄えるためとはいえ、ベッドに寝たまま私に指示してきたのよ!! いくら力の回復のためとはいえ。せめて頼む時くらい、土下座するべきじゃない? 神様のミスでこんな事になっているんだから。

 でも、そんな事、彼には関係ないものね。本来の力を使えないなんて、そんなのダメの決まっているわ。だから帰ったら神様から、普段よりも多くご褒美をふんだくってやると、それから絶対に土下座させると。そう思いながら、私はこの世界に。

 そうして数日前、ようやく彼の気配を少し感じたのよ。だから気配の感じた場所を中心に探したのだけれど。それからは全然情報を得られなくて。

 それに今私、少しピンチなのよね。ここへ来るまでに、そして彼を探すために、ちょっと力を使い過ぎちゃって。回復するための特別な薬草を探したのだけど、それが見るからないし。挙句弱っている所をオークとゴブリンに襲われちゃって。

 どうしよう、このままじゃ……。フラフラと降りていって花の上に降りる。本当このままじゃ不味いわ。神様、貴方の可愛い使いがピンチなのよ! 助けなさいよ!! 

 誰かお願い。私を助けて……。

      *********
 
「それでね、今回は森の中にそんなに入らないし、採取してきてもらう薬草も少ないから、ちょうど良いと思うのよ」

「そうだな。俺達の方は1人では参加せさられないのは勿論、俺達が行くにしても、今回はアーベル達は連れて行かないつもりだったからな。さすがに依頼のレベルが高すぎる」

「どうかしら、アーベル、セレン、モグー、ハピちゃん。初めてのみんなだけの薬草採取、やってみる?」

「うん! 僕達もそろそろだって言ってたんだよ。ね、みんな」

『いつでも行けるように、いっぱい準備したんだ!』

『忘れもないように、何回もチェックしたんだよな!』

『ボク、いっぱい魔法の練習した』

 今日はお母さんが少し前に畑を広くしたんだけど、その畑のに新しい種を蒔く手伝いを、家族全員でしていた。そんな中、急に母さんが薬を作るのに使う、薬草が少なくなったっていう話しを始めて。
 それからどんどん話しは続いて、いつの間にか僕達だけの、初めての薬草採取の話しに。

 お母さんが今回必要としている薬に使う薬草は、森に入ってちょっとくらいの場所にけっこう生えていて。弱いボブリンでさえ、なかなか出てこないような場所だから、初めての僕達だけの採取にちょうど良いんじゃないかって。

 お父さん達の方は、明日から僕達のレベルじゃ、ぜんぜん敵わない魔獣を討伐しに行くから、そっちの方は必然的に無理だし。

 そう、ついに、ついに、僕達だけの素材採取の時がやってきたんだよ。いつこんな日が来ても良いように、僕もセレンもモグーもハピちゃんも、それぞれ準備を進めてきた。

 お父さんとお母さんに、13歳の誕生日に買ってもらったリュックに、数年前にお父さんとお母さん、それぞれからプレゼントされた、狩や素材採取に使う道具を入れて。その他にも必要な物を、少しずつ用意していって。全部の用意が終わったら、何回もチェックし直して。

 セレン達なんて、何もない日は、森や林に行った時のシュミレーションを何回もやっていたくらい、この日をワクワクしながら待っていたんだ。

「じゃあ決まりね。明日の朝早く出発すれば、夕方前には余裕で帰って来れるはずよ。素材については後でしっかりと書いておくわ。それと、まぁ、ないでしょうけど、珍しい何かを発見した時は、危険なものでなければ、それも持って帰ってきて」

「うん」

「そうだな。じゃあ今日の夜は、明日アーベル達が元気にしっかりと、素材採取に行けるように肉料理にしよう。今から買いに行ってくる」

「頼むわね」

 その日の夜は、お父さんとお母さんが一緒に作った、肉のフルコースを食べた。そしてご飯を食べ終われば、大丈夫だけど思うけど心配だって。俺達が用意したリュックをお父さん達が何回もチェックして。

 明日のために早く寝ようと思っていたけど、そのチェックにより予定よりも遅く寝る事に。最後はセレンの両親、モルトとミルによって、僕の部屋から出されていたよ。

「みんな、明日頑張るぞ!!」

『うん! 頑張る!!』

『絶対成功させるぞ!!』

『ボクは飛んで色々な所を探す!!』

 と、意気込んでいたのは良いんだけど。まさか初めての僕達の採取で、ああも事件が起こるなんて、この時の僕は知る由もなく。明日の採取にワクワクしながら、すぐに眠りに落ちたんだ。
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