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19.これは僕の役目!! さぁ 買い物へ
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「さぁ、後はこのリボンに石を通して、首に巻いてあげれば終わりです。どうしますか? アシュリーさんが付けますか?」
「ダメ!! ぼくがつける!!」
思わず乗り出して叫んだ僕に、ママが困った顔で笑う。
「大丈夫よ。そんなに慌てなくても、ちゃんと分かっているわよ。あなたがつけるんでしょう?」
僕は恥ずかしくなって、乗り出した体を元に戻すと、クスクス笑うメリアさんからリボンと革紐、それから石を受け取った。いや、これは僕の仕事でしょう? ちゃんと僕がリボンを付けてあげたいんだよ。
前からパパとママにそう言ってあって、パパ達は分かってくれていたんだけど。でもメリアさんにそう言われて、思わず慌てちゃったんだ。解くことはできなくても誰でも結ぶ事はできるからね。
まずはお父さんムーンラビットから。僕は少し前から結ぶ練習をしていた。どうも子供の体だからなのか、試しにリボンを結んでみたら、まぁ、酷い酷い。片結びになったり、縦結びになったり。輪っかの部分が左右でかなり違ったり、輪っかが3つになったり。
輪っかが3つになった時は、ママがどうしたらそうんな結び方ができるのよって、逆に感心されたけど。
だからこの時のために、僕は練習していたんだ。だって僕が結ぶって言っておいて、強く結び過ぎっちゃったり、ゆるゆる過ぎて、スポッ!! っと頭から抜けちゃったら? それじゃあ登録したら意味がなくなっちゃうからね。
よいしょよいしょと、細心の注意を払いながら、お父さんラムーンラビットが苦しくないように、まずは軽く結んでみて。様子をお父さんムーンラビットに聞いてみる。
『きゅ、きゅう』
「もう少しきつくても良いと言っているわよ」
ママに通訳してもらって、言われた通りもう少しだけ強く結んだら、お父さんムーンラビットから完璧って。その結んだ所をそれ以上動かさないように、そこからは難しい輪っかを作る作業。
ここをこうして、ここを通して……。ふぅ、何とかバランスよくリボン結びにできたけど。首の感じはどうかな?
『きゅ!!』
お父さんムーンラビットから、再び完璧!! って言われた僕。最後のリボン結び成功だよ。次はお母さんムーンラビットの番。
リボンは革紐と違って、ヒラヒラしているから、ちょっと難しい。でもあれだけ練習してきたし、お父さんムーンラビットのは成功したから、リボンの方も頑張るよ。
お父さんムーンラビットの時みたいに、まずは軽く結んで確認。そうしたらちょっと締め過ぎていたみたいで、慌てて緩めた僕。すぐに謝ったら、これくらい大した縛りじゃないんだから気にしないで、って言ってもらえたよ。
それからやり直して確認したら、今度は大丈夫って事で。その後は難しい輪っか部分に。でも1回目は失敗しちゃって、片結びになりそうになっちゃったんだ。慌てて途中で止めて、再度挑戦。
2回目は何とか結ぶことができて、お母さんムーンラビットに合格を貰うことができたんだ。
そしてついに子ムーンラビットのリボン。子ムーンラビットは僕が移動しなくても、自分から僕の前に来てくれて、僕が少しでも結びやすいようにって、角度まで考えて止まってくれたよ。何でそれが分かったか。
ママがそう言ったって。今までのリボン結びを見て、この角度が良いと思う。そう言ったらしいよ。凄いね子ムーンラビット。そこまで見ているなんて。
そっとそっと、リボンを結び始める僕。子ムーンラビットがはお父さんムーンラビット達よりも更に小さいから、その分リボンを結ぶのも難しくなって。それでも頑張らないとって、今までで1番集中していたかも。
そして結んで気づいたこと。本当にリボンが結びやすいんだよ。子ムーンラビットの考えてくれた角度のおかげで、こう、手が動きやすいっていうか、リボンを動かしやすいっていうか。
そのおかげで最初の軽くリボンを結ぶのは、1回で合格をもらった僕。そして肝心の輪っか部分もまさかの1回で合格。すぐに子ムーンラビットのリボン結には終わっちゃったんだ。
「……」
『……』
「かぞく……」
『きゅう……』
「ぼくたちみんなかぞく!!」
『きゅ、きゅう!!』
僕と子ムーンラビットはハイタッチ。それからすぐに僕の頭に上った子ムーンラビットは、頭の上でもカッコつけて立ち上がっているって。ふぅ、無事に登録が完了、リボン結びも完了。
僕はソファーに深く座って。思わずため息を吐いちゃったよ。今日1日の体力を全部使ったみたいな感覚が。あ~、本当に無事に済んで良かった。
「これで全て終了です。それにしても、欲しかった力を授かることができたなんて、本当に良かったですね」
「ああ。他の力にはほとんど興味がなかったからな」
「後は、面倒な連中をどうやってやり過ごすか、ですね」
「まぁ、その辺はな。もう少し落ち着いて、学びに行く前には一応話すつもりだ」
「ただでさえ面倒なのに、更に面倒な一家がいますもんね」
「それも後で考えるさ。今日はありがとう」
「いえ、私は仕事をしただけですから」
こうして魔獣登録は終了。個室から出て最初の受付がある所まで戻ると、さっきよりも人が少し増えていて。そんな中をメリアさんに手を振りながら外へ出る僕達。
「さぁ、とりあえずお昼にしよう。その後買い物だな」
「食べたらまず、必要な物を買ってしまいましょう。それからあなたがみたい物を見に行きましょうね」
大きく頷くお母さんムーンラビット。登録の時よりも生き生きしているような? よっぽど買い物楽しみにしていたんだろうな。
食堂へ向かう僕達。この時はその後の買い物で、あれだけダメージを受けるなんて、僕とパパ、そしてお父さんムーンラビットと子ムーンラビットは知るよしもなく。
そして僕達がダメージを受けた代わりに、ママとお母さんムーンラビットは、ここへきた時よりもパワーアップして帰路に着くことになったんだ。
*********
お読みいただきありがとうございます。
次回更新15:00です。
よろしくお願いします。
「ダメ!! ぼくがつける!!」
思わず乗り出して叫んだ僕に、ママが困った顔で笑う。
「大丈夫よ。そんなに慌てなくても、ちゃんと分かっているわよ。あなたがつけるんでしょう?」
僕は恥ずかしくなって、乗り出した体を元に戻すと、クスクス笑うメリアさんからリボンと革紐、それから石を受け取った。いや、これは僕の仕事でしょう? ちゃんと僕がリボンを付けてあげたいんだよ。
前からパパとママにそう言ってあって、パパ達は分かってくれていたんだけど。でもメリアさんにそう言われて、思わず慌てちゃったんだ。解くことはできなくても誰でも結ぶ事はできるからね。
まずはお父さんムーンラビットから。僕は少し前から結ぶ練習をしていた。どうも子供の体だからなのか、試しにリボンを結んでみたら、まぁ、酷い酷い。片結びになったり、縦結びになったり。輪っかの部分が左右でかなり違ったり、輪っかが3つになったり。
輪っかが3つになった時は、ママがどうしたらそうんな結び方ができるのよって、逆に感心されたけど。
だからこの時のために、僕は練習していたんだ。だって僕が結ぶって言っておいて、強く結び過ぎっちゃったり、ゆるゆる過ぎて、スポッ!! っと頭から抜けちゃったら? それじゃあ登録したら意味がなくなっちゃうからね。
よいしょよいしょと、細心の注意を払いながら、お父さんラムーンラビットが苦しくないように、まずは軽く結んでみて。様子をお父さんムーンラビットに聞いてみる。
『きゅ、きゅう』
「もう少しきつくても良いと言っているわよ」
ママに通訳してもらって、言われた通りもう少しだけ強く結んだら、お父さんムーンラビットから完璧って。その結んだ所をそれ以上動かさないように、そこからは難しい輪っかを作る作業。
ここをこうして、ここを通して……。ふぅ、何とかバランスよくリボン結びにできたけど。首の感じはどうかな?
『きゅ!!』
お父さんムーンラビットから、再び完璧!! って言われた僕。最後のリボン結び成功だよ。次はお母さんムーンラビットの番。
リボンは革紐と違って、ヒラヒラしているから、ちょっと難しい。でもあれだけ練習してきたし、お父さんムーンラビットのは成功したから、リボンの方も頑張るよ。
お父さんムーンラビットの時みたいに、まずは軽く結んで確認。そうしたらちょっと締め過ぎていたみたいで、慌てて緩めた僕。すぐに謝ったら、これくらい大した縛りじゃないんだから気にしないで、って言ってもらえたよ。
それからやり直して確認したら、今度は大丈夫って事で。その後は難しい輪っか部分に。でも1回目は失敗しちゃって、片結びになりそうになっちゃったんだ。慌てて途中で止めて、再度挑戦。
2回目は何とか結ぶことができて、お母さんムーンラビットに合格を貰うことができたんだ。
そしてついに子ムーンラビットのリボン。子ムーンラビットは僕が移動しなくても、自分から僕の前に来てくれて、僕が少しでも結びやすいようにって、角度まで考えて止まってくれたよ。何でそれが分かったか。
ママがそう言ったって。今までのリボン結びを見て、この角度が良いと思う。そう言ったらしいよ。凄いね子ムーンラビット。そこまで見ているなんて。
そっとそっと、リボンを結び始める僕。子ムーンラビットがはお父さんムーンラビット達よりも更に小さいから、その分リボンを結ぶのも難しくなって。それでも頑張らないとって、今までで1番集中していたかも。
そして結んで気づいたこと。本当にリボンが結びやすいんだよ。子ムーンラビットの考えてくれた角度のおかげで、こう、手が動きやすいっていうか、リボンを動かしやすいっていうか。
そのおかげで最初の軽くリボンを結ぶのは、1回で合格をもらった僕。そして肝心の輪っか部分もまさかの1回で合格。すぐに子ムーンラビットのリボン結には終わっちゃったんだ。
「……」
『……』
「かぞく……」
『きゅう……』
「ぼくたちみんなかぞく!!」
『きゅ、きゅう!!』
僕と子ムーンラビットはハイタッチ。それからすぐに僕の頭に上った子ムーンラビットは、頭の上でもカッコつけて立ち上がっているって。ふぅ、無事に登録が完了、リボン結びも完了。
僕はソファーに深く座って。思わずため息を吐いちゃったよ。今日1日の体力を全部使ったみたいな感覚が。あ~、本当に無事に済んで良かった。
「これで全て終了です。それにしても、欲しかった力を授かることができたなんて、本当に良かったですね」
「ああ。他の力にはほとんど興味がなかったからな」
「後は、面倒な連中をどうやってやり過ごすか、ですね」
「まぁ、その辺はな。もう少し落ち着いて、学びに行く前には一応話すつもりだ」
「ただでさえ面倒なのに、更に面倒な一家がいますもんね」
「それも後で考えるさ。今日はありがとう」
「いえ、私は仕事をしただけですから」
こうして魔獣登録は終了。個室から出て最初の受付がある所まで戻ると、さっきよりも人が少し増えていて。そんな中をメリアさんに手を振りながら外へ出る僕達。
「さぁ、とりあえずお昼にしよう。その後買い物だな」
「食べたらまず、必要な物を買ってしまいましょう。それからあなたがみたい物を見に行きましょうね」
大きく頷くお母さんムーンラビット。登録の時よりも生き生きしているような? よっぽど買い物楽しみにしていたんだろうな。
食堂へ向かう僕達。この時はその後の買い物で、あれだけダメージを受けるなんて、僕とパパ、そしてお父さんムーンラビットと子ムーンラビットは知るよしもなく。
そして僕達がダメージを受けた代わりに、ママとお母さんムーンラビットは、ここへきた時よりもパワーアップして帰路に着くことになったんだ。
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よろしくお願いします。
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