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6.明日の儀式の結果がどうであれ
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途中からムーンラビットが参加したおままごとは、時々カロリーナがムーンラビットに触ろうとして、ムーンラビットが『チッ!』と威嚇をするという攻防戦を繰り広げ。途中からおままごとじゃなくこちらが本命に。
そんなムーンラビットにどうしても触りたいカロリーナの事を、マーシアさんが怒るのを見ていると。カロリーナのお父さん、サムソンさんが僕を呼びに来て。いつの間にかママと約束をしていた、お昼ご飯前になっていた。
「送ってくるよ」
「ええ。ちょうど良いからチーを持って行って」
チーというのはチーズのことで。カロリーナの家では牛に似た魔獣、ムーを飼っているんだけど。そのムー達のミルクで作った物がチーで、これがとっても美味しいんだ。
「ムンちゃん、かえっちゃう。ブー、つぎはさわる!!」
『チッ!!』
今日1番の『チッ!!』が出た。そうしてまた怒られるカロリーナ。
「カロリーナ、バイバイ」
「きょうはおわり?」
「そうよ。今日はこの後予定があるから終わりよ。また遊びましょうね」
「ん!! バイバイ、アーベル!!」
こうしてムーンラビットに威嚇されるまでが、いつもの僕達の別れ方で。僕はその後サムソンさんと手を繋ぎながら、そしてムーンラビットを頭に乗せたまま、家に向かって歩き始めた。
ムーンラビットはバランスを取るのが上手で、僕が少しバランスを崩してフラフラしたくらいじゃ、落ちることはない。もし落ちそうになっても、すぐにジャンプして元の位置に戻るから、頭に乗せたまま歩いても大丈夫なんだ。
家に向かいながら、途中でサムソンさんが明日の話しをしてきた。そう、明日行われる儀式のことだ。
カロリーナも5歳。もちろん明日の儀式には参加する。僕の家族とカロリーナの家族、一緒に行く予定なんだ。
そしてサムソンさんのカロリーナの儀式の話し。これまでに何回聞いたことか。基本カロリーナの両親も僕の両親と同じ、どんな種類のどんなレベルの力を授かっても良い、というスタンスで。他の家族みたいにピリピリはしていないんだけど。
カロリーナ自身が、火属性の力を上げたいんだ。1年くらい前、僕はその時、別の場所へ避難して見ていなかったんだけど。強い魔獣が近くの森に出現して、そのまま街まで来ちゃってさ。それでみんな避難したんだよ。
そうしたらカロリーナが避難している方へ魔獣達が。その時、この世界には騎士以外に、冒険者という、これまた本や映画に出てくるような仕事をしている人々がいるんだけど。
たまたまその日は、遠く離れたこの国の首都から、上級冒険者が来ていて。その冒険者が火の上位魔法で魔獣を倒したらしいんだ。
それを見ていたカロリーナは、その冒険者と火魔法に憧れるように。だから難しい火魔法を使えるように、火魔法のレベルを上げて欲しいって、ずっと神様のお願いしているんだ。
その事をもちろん分かっているカロリーナの両親は、できれば火魔法のレベルが上げられればと。もし上がらなければ、どれだけカロリーナが落ち込むかと。それを心配していて、毎回その話しを僕にしてきていた。
そして僕はその話しを聞きすぎて、ちょっと、本当にちょっと、面倒臭いなと思っていた。僕にその話しをされても困るよ。
「明日は待ちに待った日だけれど、あの子が落ち込まなかだけが心配だよ」
うん、だから分かってるから。でもまぁ、子供のことを心配するのは、親として当たり前だからな。そんな当たり前の事を、前世の僕はしなかった。前世の僕も、両親やカロリーナの両親のようのに家族のこと考えていれば……。
「アーベルは明日が楽しみか? もしかしたらあの力を授かれるかもしれないからな。もちろん授からなくても、アーベル達の関係は変わらないだろうが。それでも授かれたら嬉しいな」
そう。今サムソンさんが言った事。これが唯一、僕が授かれたら良いなと思っていた力で。その能力とは、魔獣契約だ。
僕がもし、その力を授かる事ができたのなら、ムーンラビットと契約をしたい、そう思っていて。
初めて出会った時から、何となくお互いを思っていた僕達。それから2年、親友と呼べるまでの関係になれて。
だからもし、ムーンラビットが僕と契約しても良いと言ってくれたら、家族になろうと思っているんだ。
いやさ、もちろん親友と思っているのは僕だけで、実はムーンラビットは俺のことを何とも思っておらず。契約なんてしたくない、というなら契約はしないよ。
それにちゃんと、ムーンラビットの両親にも、家族になっても良いか聞かないといけないし、勝手に彼らの大切な子と契約なんかできない。
だけどもし、ムーンラビットが家族になっても良いって言ってくれて、家族も賛成してくれるのなら、是非家族にって。
だからできるのなら、魔獣契約を授かりたいんだ。だけど、まぁ。こればかりは授かり物だからね。もし契約魔法がダメでも、今の関係が終わるわけじゃないし。契約なしの家族になったって良いんだから。
「あした。たのしみ!」
『きゅ!!』
「お、ムーンラビットもそう思ってるのか? そうかそうか。だが……。契約魔法は色々問題もあるからな。アーベルがその問題に巻き込まれなければ良いが。まぁ、問題は一部の人間が起こしていることだから、大丈夫だとは思うけど」
そう、契約魔法にはある問題があるんだ。俺としては全く問題ないんだけど、ある一部の人達による、面倒な問題が。
そんな話しをしているうちに僕は家に着き。畑からパパ達の声が聞こえたから、サムソンさんにさようならをしてそのまま畑へ。畑でムーンラビットとご飯を食べ、ちょっと食休みをしてからまた遊び。
夕方ムーンラビットは巣に戻った。最後は俺の顔を見て、『きゅ!!』と力強く鳴いて。その姿と声は、明日待ってるとでも言っているようで。本当、明日の儀式が楽しみだ。
*・゜゚・*:.。..。.:*・ .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・ .。.:*・゜゚・*
お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。
今年もファンタジーカップに参加させていただきます!!
もふもふの溢れる楽しい物語をお届けできるよう頑張りますので、
皆様よろしくお願いいたします。
感想もよろしければよろしくお願いします。
次回の更新は21:00予定です。
そんなムーンラビットにどうしても触りたいカロリーナの事を、マーシアさんが怒るのを見ていると。カロリーナのお父さん、サムソンさんが僕を呼びに来て。いつの間にかママと約束をしていた、お昼ご飯前になっていた。
「送ってくるよ」
「ええ。ちょうど良いからチーを持って行って」
チーというのはチーズのことで。カロリーナの家では牛に似た魔獣、ムーを飼っているんだけど。そのムー達のミルクで作った物がチーで、これがとっても美味しいんだ。
「ムンちゃん、かえっちゃう。ブー、つぎはさわる!!」
『チッ!!』
今日1番の『チッ!!』が出た。そうしてまた怒られるカロリーナ。
「カロリーナ、バイバイ」
「きょうはおわり?」
「そうよ。今日はこの後予定があるから終わりよ。また遊びましょうね」
「ん!! バイバイ、アーベル!!」
こうしてムーンラビットに威嚇されるまでが、いつもの僕達の別れ方で。僕はその後サムソンさんと手を繋ぎながら、そしてムーンラビットを頭に乗せたまま、家に向かって歩き始めた。
ムーンラビットはバランスを取るのが上手で、僕が少しバランスを崩してフラフラしたくらいじゃ、落ちることはない。もし落ちそうになっても、すぐにジャンプして元の位置に戻るから、頭に乗せたまま歩いても大丈夫なんだ。
家に向かいながら、途中でサムソンさんが明日の話しをしてきた。そう、明日行われる儀式のことだ。
カロリーナも5歳。もちろん明日の儀式には参加する。僕の家族とカロリーナの家族、一緒に行く予定なんだ。
そしてサムソンさんのカロリーナの儀式の話し。これまでに何回聞いたことか。基本カロリーナの両親も僕の両親と同じ、どんな種類のどんなレベルの力を授かっても良い、というスタンスで。他の家族みたいにピリピリはしていないんだけど。
カロリーナ自身が、火属性の力を上げたいんだ。1年くらい前、僕はその時、別の場所へ避難して見ていなかったんだけど。強い魔獣が近くの森に出現して、そのまま街まで来ちゃってさ。それでみんな避難したんだよ。
そうしたらカロリーナが避難している方へ魔獣達が。その時、この世界には騎士以外に、冒険者という、これまた本や映画に出てくるような仕事をしている人々がいるんだけど。
たまたまその日は、遠く離れたこの国の首都から、上級冒険者が来ていて。その冒険者が火の上位魔法で魔獣を倒したらしいんだ。
それを見ていたカロリーナは、その冒険者と火魔法に憧れるように。だから難しい火魔法を使えるように、火魔法のレベルを上げて欲しいって、ずっと神様のお願いしているんだ。
その事をもちろん分かっているカロリーナの両親は、できれば火魔法のレベルが上げられればと。もし上がらなければ、どれだけカロリーナが落ち込むかと。それを心配していて、毎回その話しを僕にしてきていた。
そして僕はその話しを聞きすぎて、ちょっと、本当にちょっと、面倒臭いなと思っていた。僕にその話しをされても困るよ。
「明日は待ちに待った日だけれど、あの子が落ち込まなかだけが心配だよ」
うん、だから分かってるから。でもまぁ、子供のことを心配するのは、親として当たり前だからな。そんな当たり前の事を、前世の僕はしなかった。前世の僕も、両親やカロリーナの両親のようのに家族のこと考えていれば……。
「アーベルは明日が楽しみか? もしかしたらあの力を授かれるかもしれないからな。もちろん授からなくても、アーベル達の関係は変わらないだろうが。それでも授かれたら嬉しいな」
そう。今サムソンさんが言った事。これが唯一、僕が授かれたら良いなと思っていた力で。その能力とは、魔獣契約だ。
僕がもし、その力を授かる事ができたのなら、ムーンラビットと契約をしたい、そう思っていて。
初めて出会った時から、何となくお互いを思っていた僕達。それから2年、親友と呼べるまでの関係になれて。
だからもし、ムーンラビットが僕と契約しても良いと言ってくれたら、家族になろうと思っているんだ。
いやさ、もちろん親友と思っているのは僕だけで、実はムーンラビットは俺のことを何とも思っておらず。契約なんてしたくない、というなら契約はしないよ。
それにちゃんと、ムーンラビットの両親にも、家族になっても良いか聞かないといけないし、勝手に彼らの大切な子と契約なんかできない。
だけどもし、ムーンラビットが家族になっても良いって言ってくれて、家族も賛成してくれるのなら、是非家族にって。
だからできるのなら、魔獣契約を授かりたいんだ。だけど、まぁ。こればかりは授かり物だからね。もし契約魔法がダメでも、今の関係が終わるわけじゃないし。契約なしの家族になったって良いんだから。
「あした。たのしみ!」
『きゅ!!』
「お、ムーンラビットもそう思ってるのか? そうかそうか。だが……。契約魔法は色々問題もあるからな。アーベルがその問題に巻き込まれなければ良いが。まぁ、問題は一部の人間が起こしていることだから、大丈夫だとは思うけど」
そう、契約魔法にはある問題があるんだ。俺としては全く問題ないんだけど、ある一部の人達による、面倒な問題が。
そんな話しをしているうちに僕は家に着き。畑からパパ達の声が聞こえたから、サムソンさんにさようならをしてそのまま畑へ。畑でムーンラビットとご飯を食べ、ちょっと食休みをしてからまた遊び。
夕方ムーンラビットは巣に戻った。最後は俺の顔を見て、『きゅ!!』と力強く鳴いて。その姿と声は、明日待ってるとでも言っているようで。本当、明日の儀式が楽しみだ。
*・゜゚・*:.。..。.:*・ .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・ .。.:*・゜゚・*
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