異世界でチート無双! いやいや神の使いのミスによる、僕の相棒もふもふの成長物語

ありぽん

文字の大きさ
上 下
5 / 72

5.僕とムーンラビットの関係

しおりを挟む
 ムーンラビットと別れてから、元気のなかった僕。その日もまだ回復していなくて、ダラダラと畑仕事をしているママに寄りかかりながら。初めてムーンラビットを見つけた草むらを眺めていた。
 あの時のママはきっと、僕がかなり邪魔だっただろうな。あの時のママ、ごめんなさい。

 と、それは置いておいて。僕がダラダラ草むらを見ていると、見ていた草むらじゃなくて、すぐ隣の草むらから何かが転がって来て、そのまま畑に入る前で止まったんだ。

 よく見ればそれは真っ白い、モコモコとしたボールのような物で。そのボールからは小さな小さな耳が見えていた。それから右の方には、あの三日月型の傷痕が見えて。

 急いでボールに近づく僕。僕と、僕の駆け寄っている物に気づいたママも、僕の後を追って来たよ。そして僕はモコモコボールの、ちょっと前で止まると、ママは僕の隣に。

 寄ったは良いけど、その後どうしたら良いのか分からず、止まったままの僕と、時々小さい耳をぴくぴく動かすもこもこボール。最初に声をかけたのはママだった。

「あなたあの時の子よね? 今日はどうしたのかしら? 家族と一緒に来たの?」

 母さんは特別な力を儀式で授かっていた。それは魔獣の言葉が分かるというもので。レベルは高くはなかったけど、中級レベルの魔獣ならば、その魔獣達と話しをする事ができるんだ。
 これはとても珍しい力で。この力によってママは、魔獣関係の揉め事をよく解決している。

 だからこの時も、モコモコボールに向かって話しかけてくれて。ちなみにモコモコボールって言ったのは、この前のムーンラビットだって分かってはいたんだけど、もし違ったらいけないと思って、一応ボールって事にしていたんだ。

 だって普段のムーンラビットの姿じゃなかったから。ムーンラビットの姿は、うさぎに似ている。だけど耳が普通のうさぎの半分くらいで、しかもかなり小さく。最初に出会った時のムーンラビットは、俺の手のひらサイズだった。

 しかも毛がもふもふで、洗ったら最初の姿の半分になるんじゃって。俺の手のひらサイズなのに、さらに半分のなったら? どれだけ小さいうさぎなのか。

 そんなムーンラビットだから、動いていれば一応うさぎの姿に見えるんだけど。じっと止まって丸まっていると、モコモコボールに見えるんだ。ただ、この時の僕はまだ、ボール姿を見た事がなかったから。ムーンラビットか疑っていたんだよね。

 ママが質問した後、また少しの間沈黙が流れた。だけど少しして、もぞもぞとモコモコボールが動いたかと思うと。お尻は僕達の方、顔は草むらの方を向いて、モコモコボールは本来の姿に。

 そして周りをキョロキョロと見渡した後、慌てて僕達の方に向き直った。草むらから転がって来て、ボール姿をやめたは良いけど、僕達の姿が見えなくてビックリしたんだと思うよ。

 そうそう。これも後で知ったんだけど、ムーンラビットはうさぎみたいに跳ねて進むだけじゃなく、転がって進む時もあって。その時その時で変えて移動するんだ。
 だけどこの時は知らないから、草むらから転がって出て来たのは、何かに躓いたかして転んで、そのまま出てきたのかと思っていた。

『きゅ!!』

「アーベル、こんにちはって言っているわよ」

「こちゃ!」

『きゅう、きゅ、きゅう。きゅうぅぅぅ、きゅ』

 何かを話し始めたムーンラビット。その話しに頷くママ。話しはこうだった。今日はママや僕に、この前助けてもらったお礼を言いに、両親と一緒に来たと。ムーンラビットはお礼を言いに来てくれたんだ。

 ママがどうぞって言ったら、草むらに戻って行ったムーンラビット。でもすぐに3匹になって戻ってきた。大きさ的には、助けたムーンラビットの3倍の大きさのムーンラビットと、2倍のムーンラビットで。大きい方がお父さんだと。

 こうしてムーンラビットの両親から、お礼を言われた僕とママ。自然の魔獣でも、ちゃんとお礼をしに来てくれるんだ、と思っていると。そのお礼の後、ちょっと長い話しを始めた、親ムーンラビットとママ。

 どうも親ムーンラビットは、お礼以外に用事があったようで。それが僕と怪我をしたムーンラビットとの、長い長い付き合いの始まりだった。

 怪我を治したムーンラビットの子は、あの怪我をした日が、人との初めての触れ合いだったって。
 スラカっていう、カラスにした鳥魔獣がいるんだけど。街の中にタチの悪いスラカがいて。どうもそいつに目をつけられて襲われて、草むらに逃げて来た所を僕が発見したらしい。

 初めての人との接触、始めて会った自分に、優しくしてくれる人間達。怪我をしたムーンラビットは、その中でも僕に興味を持ったらしくて。そのことを親ムーンラビットに言ったんだ。

 それで親ムーンラビットは、そんなに優しい人間なら大丈夫だろうって。もしよかったら怪我をしたムーンラビットと僕と、一緒の遊んでくれないかって。それが本題だったんだ。
 その話しをを聞いて喜びを爆発させた僕。それから僕達は、時々、ほぼ毎日? 一緒に遊ぶようになったんだ。

 そうしてムーンラビットと出会って2年。今では親友と呼べるまでの関係に。親ムーンラビットも、それまでの巣から引っ越して。今は僕の家の、畑のすぐ近くに巣を作って。そこでみんなで暮らしている。時々畑の手伝いをしてくれているよ。

 あっ、ちなみにムーンラビットを襲ったスラカだけど。ムーンラビット以外にも、街で色々問題を起こしていて。
 でも少し経って、最近スラカがおとなしいなと思って、ママにスラカは? って聞いたら。街にとって不要な存在はいらないでしょう? とニコリと笑いながら言っていたから、たぶんそういう事なんだろう。

しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

処理中です...