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5.僕とムーンラビットの関係
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ムーンラビットと別れてから、元気のなかった僕。その日もまだ回復していなくて、ダラダラと畑仕事をしているママに寄りかかりながら。初めてムーンラビットを見つけた草むらを眺めていた。
あの時のママはきっと、僕がかなり邪魔だっただろうな。あの時のママ、ごめんなさい。
と、それは置いておいて。僕がダラダラ草むらを見ていると、見ていた草むらじゃなくて、すぐ隣の草むらから何かが転がって来て、そのまま畑に入る前で止まったんだ。
よく見ればそれは真っ白い、モコモコとしたボールのような物で。そのボールからは小さな小さな耳が見えていた。それから右の方には、あの三日月型の傷痕が見えて。
急いでボールに近づく僕。僕と、僕の駆け寄っている物に気づいたママも、僕の後を追って来たよ。そして僕はモコモコボールの、ちょっと前で止まると、ママは僕の隣に。
寄ったは良いけど、その後どうしたら良いのか分からず、止まったままの僕と、時々小さい耳をぴくぴく動かすもこもこボール。最初に声をかけたのはママだった。
「あなたあの時の子よね? 今日はどうしたのかしら? 家族と一緒に来たの?」
母さんは特別な力を儀式で授かっていた。それは魔獣の言葉が分かるというもので。レベルは高くはなかったけど、中級レベルの魔獣ならば、その魔獣達と話しをする事ができるんだ。
これはとても珍しい力で。この力によってママは、魔獣関係の揉め事をよく解決している。
だからこの時も、モコモコボールに向かって話しかけてくれて。ちなみにモコモコボールって言ったのは、この前のムーンラビットだって分かってはいたんだけど、もし違ったらいけないと思って、一応ボールって事にしていたんだ。
だって普段のムーンラビットの姿じゃなかったから。ムーンラビットの姿は、うさぎに似ている。だけど耳が普通のうさぎの半分くらいで、しかもかなり小さく。最初に出会った時のムーンラビットは、俺の手のひらサイズだった。
しかも毛がもふもふで、洗ったら最初の姿の半分になるんじゃって。俺の手のひらサイズなのに、さらに半分のなったら? どれだけ小さいうさぎなのか。
そんなムーンラビットだから、動いていれば一応うさぎの姿に見えるんだけど。じっと止まって丸まっていると、モコモコボールに見えるんだ。ただ、この時の僕はまだ、ボール姿を見た事がなかったから。ムーンラビットか疑っていたんだよね。
ママが質問した後、また少しの間沈黙が流れた。だけど少しして、もぞもぞとモコモコボールが動いたかと思うと。お尻は僕達の方、顔は草むらの方を向いて、モコモコボールは本来の姿に。
そして周りをキョロキョロと見渡した後、慌てて僕達の方に向き直った。草むらから転がって来て、ボール姿をやめたは良いけど、僕達の姿が見えなくてビックリしたんだと思うよ。
そうそう。これも後で知ったんだけど、ムーンラビットはうさぎみたいに跳ねて進むだけじゃなく、転がって進む時もあって。その時その時で変えて移動するんだ。
だけどこの時は知らないから、草むらから転がって出て来たのは、何かに躓いたかして転んで、そのまま出てきたのかと思っていた。
『きゅ!!』
「アーベル、こんにちはって言っているわよ」
「こちゃ!」
『きゅう、きゅ、きゅう。きゅうぅぅぅ、きゅ』
何かを話し始めたムーンラビット。その話しに頷くママ。話しはこうだった。今日はママや僕に、この前助けてもらったお礼を言いに、両親と一緒に来たと。ムーンラビットはお礼を言いに来てくれたんだ。
ママがどうぞって言ったら、草むらに戻って行ったムーンラビット。でもすぐに3匹になって戻ってきた。大きさ的には、助けたムーンラビットの3倍の大きさのムーンラビットと、2倍のムーンラビットで。大きい方がお父さんだと。
こうしてムーンラビットの両親から、お礼を言われた僕とママ。自然の魔獣でも、ちゃんとお礼をしに来てくれるんだ、と思っていると。そのお礼の後、ちょっと長い話しを始めた、親ムーンラビットとママ。
どうも親ムーンラビットは、お礼以外に用事があったようで。それが僕と怪我をしたムーンラビットとの、長い長い付き合いの始まりだった。
怪我を治したムーンラビットの子は、あの怪我をした日が、人との初めての触れ合いだったって。
スラカっていう、カラスにした鳥魔獣がいるんだけど。街の中にタチの悪いスラカがいて。どうもそいつに目をつけられて襲われて、草むらに逃げて来た所を僕が発見したらしい。
初めての人との接触、始めて会った自分に、優しくしてくれる人間達。怪我をしたムーンラビットは、その中でも僕に興味を持ったらしくて。そのことを親ムーンラビットに言ったんだ。
それで親ムーンラビットは、そんなに優しい人間なら大丈夫だろうって。もしよかったら怪我をしたムーンラビットと僕と、一緒の遊んでくれないかって。それが本題だったんだ。
その話しをを聞いて喜びを爆発させた僕。それから僕達は、時々、ほぼ毎日? 一緒に遊ぶようになったんだ。
そうしてムーンラビットと出会って2年。今では親友と呼べるまでの関係に。親ムーンラビットも、それまでの巣から引っ越して。今は僕の家の、畑のすぐ近くに巣を作って。そこでみんなで暮らしている。時々畑の手伝いをしてくれているよ。
あっ、ちなみにムーンラビットを襲ったスラカだけど。ムーンラビット以外にも、街で色々問題を起こしていて。
でも少し経って、最近スラカがおとなしいなと思って、ママにスラカは? って聞いたら。街にとって不要な存在はいらないでしょう? とニコリと笑いながら言っていたから、たぶんそういう事なんだろう。
あの時のママはきっと、僕がかなり邪魔だっただろうな。あの時のママ、ごめんなさい。
と、それは置いておいて。僕がダラダラ草むらを見ていると、見ていた草むらじゃなくて、すぐ隣の草むらから何かが転がって来て、そのまま畑に入る前で止まったんだ。
よく見ればそれは真っ白い、モコモコとしたボールのような物で。そのボールからは小さな小さな耳が見えていた。それから右の方には、あの三日月型の傷痕が見えて。
急いでボールに近づく僕。僕と、僕の駆け寄っている物に気づいたママも、僕の後を追って来たよ。そして僕はモコモコボールの、ちょっと前で止まると、ママは僕の隣に。
寄ったは良いけど、その後どうしたら良いのか分からず、止まったままの僕と、時々小さい耳をぴくぴく動かすもこもこボール。最初に声をかけたのはママだった。
「あなたあの時の子よね? 今日はどうしたのかしら? 家族と一緒に来たの?」
母さんは特別な力を儀式で授かっていた。それは魔獣の言葉が分かるというもので。レベルは高くはなかったけど、中級レベルの魔獣ならば、その魔獣達と話しをする事ができるんだ。
これはとても珍しい力で。この力によってママは、魔獣関係の揉め事をよく解決している。
だからこの時も、モコモコボールに向かって話しかけてくれて。ちなみにモコモコボールって言ったのは、この前のムーンラビットだって分かってはいたんだけど、もし違ったらいけないと思って、一応ボールって事にしていたんだ。
だって普段のムーンラビットの姿じゃなかったから。ムーンラビットの姿は、うさぎに似ている。だけど耳が普通のうさぎの半分くらいで、しかもかなり小さく。最初に出会った時のムーンラビットは、俺の手のひらサイズだった。
しかも毛がもふもふで、洗ったら最初の姿の半分になるんじゃって。俺の手のひらサイズなのに、さらに半分のなったら? どれだけ小さいうさぎなのか。
そんなムーンラビットだから、動いていれば一応うさぎの姿に見えるんだけど。じっと止まって丸まっていると、モコモコボールに見えるんだ。ただ、この時の僕はまだ、ボール姿を見た事がなかったから。ムーンラビットか疑っていたんだよね。
ママが質問した後、また少しの間沈黙が流れた。だけど少しして、もぞもぞとモコモコボールが動いたかと思うと。お尻は僕達の方、顔は草むらの方を向いて、モコモコボールは本来の姿に。
そして周りをキョロキョロと見渡した後、慌てて僕達の方に向き直った。草むらから転がって来て、ボール姿をやめたは良いけど、僕達の姿が見えなくてビックリしたんだと思うよ。
そうそう。これも後で知ったんだけど、ムーンラビットはうさぎみたいに跳ねて進むだけじゃなく、転がって進む時もあって。その時その時で変えて移動するんだ。
だけどこの時は知らないから、草むらから転がって出て来たのは、何かに躓いたかして転んで、そのまま出てきたのかと思っていた。
『きゅ!!』
「アーベル、こんにちはって言っているわよ」
「こちゃ!」
『きゅう、きゅ、きゅう。きゅうぅぅぅ、きゅ』
何かを話し始めたムーンラビット。その話しに頷くママ。話しはこうだった。今日はママや僕に、この前助けてもらったお礼を言いに、両親と一緒に来たと。ムーンラビットはお礼を言いに来てくれたんだ。
ママがどうぞって言ったら、草むらに戻って行ったムーンラビット。でもすぐに3匹になって戻ってきた。大きさ的には、助けたムーンラビットの3倍の大きさのムーンラビットと、2倍のムーンラビットで。大きい方がお父さんだと。
こうしてムーンラビットの両親から、お礼を言われた僕とママ。自然の魔獣でも、ちゃんとお礼をしに来てくれるんだ、と思っていると。そのお礼の後、ちょっと長い話しを始めた、親ムーンラビットとママ。
どうも親ムーンラビットは、お礼以外に用事があったようで。それが僕と怪我をしたムーンラビットとの、長い長い付き合いの始まりだった。
怪我を治したムーンラビットの子は、あの怪我をした日が、人との初めての触れ合いだったって。
スラカっていう、カラスにした鳥魔獣がいるんだけど。街の中にタチの悪いスラカがいて。どうもそいつに目をつけられて襲われて、草むらに逃げて来た所を僕が発見したらしい。
初めての人との接触、始めて会った自分に、優しくしてくれる人間達。怪我をしたムーンラビットは、その中でも僕に興味を持ったらしくて。そのことを親ムーンラビットに言ったんだ。
それで親ムーンラビットは、そんなに優しい人間なら大丈夫だろうって。もしよかったら怪我をしたムーンラビットと僕と、一緒の遊んでくれないかって。それが本題だったんだ。
その話しをを聞いて喜びを爆発させた僕。それから僕達は、時々、ほぼ毎日? 一緒に遊ぶようになったんだ。
そうしてムーンラビットと出会って2年。今では親友と呼べるまでの関係に。親ムーンラビットも、それまでの巣から引っ越して。今は僕の家の、畑のすぐ近くに巣を作って。そこでみんなで暮らしている。時々畑の手伝いをしてくれているよ。
あっ、ちなみにムーンラビットを襲ったスラカだけど。ムーンラビット以外にも、街で色々問題を起こしていて。
でも少し経って、最近スラカがおとなしいなと思って、ママにスラカは? って聞いたら。街にとって不要な存在はいらないでしょう? とニコリと笑いながら言っていたから、たぶんそういう事なんだろう。
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