31 / 61
30.ミルバーンの衝撃、本当に大変な事が起きる!?
しおりを挟む
「先ずは温度からね。うん、温度は問題ないわ。ここまでは良い感じね。最近は安定してきているし、ミルクの温度はこのままいけば、抱っこよりも先に合格させられそうね」
「そうか……」
レイナさんに最初の合格を言ってもらえるかもしれないんだから、もっと喜べば良いのに。だってレイナさんから合格を貰うのは、かなり難しいと思うんだよな。
「さぁ、次よ。今日は気をつけてね、一昨日はいい感じだったのに、昨日は元に戻りそうになっていたから」
次はいよいよ俺がミルクを飲むんだけど。少しの間レイナさんが俺にミルクをくれていたが、最近は最初にミルバーンにやらせるようにしている。いい加減練習しないと、いつまで経ってもミルクを飲ませられないからって。
ミルクは俺のミルクだけども、俺が関わって作るわけじゃないから。ほら俺を抱っこしたり、あやさなくて良いだろう? だからミルバーンは、ミルクを作る事に関しては、これで積極的にやっている。
そして夜中の、本当は俺は見ているが、誰も見ていないと思っているミルバーンの、ぬいぐるみ抱っこの練習も。自分で自由に練習できるからなのか、ずっと続いているし。
ただ、ミルク飲ませだけは……。1度ミルバーンのミルク飲ましで死にかけた俺。2回目の時もやってくれた。
また俺が死にかけないように、いつでも動けるように、レイナさんが警戒する中。やっぱり俺の口からミルクは溢れ、鼻に入りそうになり。素早く助けてもらった俺。その後もう1度だけやってみたけれど、やっぱり同じ事に。だからレイナさんは俺にミルクを飲ませてくれて。
ミルバーンはその後、全ての練習が終わってから、補習みたいな感じで、マンツーマンでミルクも指導をさせられたんだよ。そのかいあってか、4日もすると、流石に鼻の方へはミルクを流さなくなって。そして一昨日は、口から溢す量も減ってさ。
だけど昨日、またミルバーンはやらかした。鼻の方にミルクがさ。レイナさんが警戒してくれてたから大丈夫だったけど。
「……」
無言でジッと俺を見てくるミルバーン。おい、なんか手が震えていないか? 深呼吸だ深呼吸。その震えじゃまた鼻の方に来るぞ。
なんて思った俺。ふとミルバーンの手が止まると、その手を引っ込めて、ミルバーンが静かに深呼吸をした。俺の気持ちが通じたか?
そうして深呼吸をやめて、再度スプーンを俺の方へ近づけてくるミルバーン。スプーンを持っている手は、もう震えていなかった。
「……」
「そっとよ、そっと」
俺の口にスプーンが触れる。少しずつミルクを飲む俺。うん、ミルクの温度と味はいい感じだな。レイナさんのよりもちょっと。ほんのちょっとだけ薄い気もするけど、たいした違いじゃない。
「ごくんっ! けぷっ」
うん、今日は1回目にしてはけっこう飲めたんじゃないかな? 口から出た分を引いても、かなり飲めたはず。いい感じだミルバーン!
「ばぶう!!」
まずまずだった事にお礼を言う。今日は鼻に入りそうになっての、ドタバタがなくて良いな。……ん? ドタバタがない? そういえば誰も何も言っていないような?
いつもだったら、少しでも俺の口からミルクを溢せば、シャイン達のあまりためにならないアドバイスが始まるのに。
『もっとこうだぜ、こう!! するっと!!』
『違うよ、もっと手をこうやるんだよう、こう!! シュッ!!』
『スプーンの角度は、三角の積み木と同じ角度だようぉ。』
シャインとフラフィーは、こうって言いながら、ほとんど音で伝えてくるから分からないし。ラピーはラピーで、物に例えてくるから分かりにくし。そんなみんなの、余計なアドバイスの声が聞こえてこない。
そしてそれはみんなだけじゃなかった。いつもはすぐに、どこが悪いってミルバーンに注意するレイナさん。もちろんシャイン達とは違う、的確で分かりやすいアドバイスをしてくれるんだけど。そのレイナさんの声も聞こえないんだ。
俺はみんなを見てみる。すると何故か、全員がぼけってとした顔で、俺のことを見ていた。ミルバーンまでもが同じ顔をしている。
「ばぁぶぅ?」
みんなどうしたんだ? って聞いてみる。だけど誰も俺の声に反応してくれなくて。仕方なくもう1度、もっと大きな声で話しかけてみた。
「ばあぶうぅぅぅ!!」
すると最初に話し始めたのはシャイン達で。話し始めたどころか、俺のお腹の上で慌て始めた。
『初めてだった!! 大変だ!!』
『本当の本当に大変だよ!! やっぱり明日何かが起こるんだ!! みんな危ないよ!!』
『大変だぁ、危ないのぉ。みんな隠れないとぉ!!』
何だ? どうしたんだ? みんな落ち着いて、ちゃんと詳しく話してくれ!! そう言ったけど慌てているみんなには聞こえなかったらしく。そのうちレイナさんの声が。
「溢していないわよね?」
って。溢していない? うん、今日は1回であれだけ飲めたんだから、溢した量は少ないはず。ミルバーンを褒めてやってくれ。
「本当に零していないわよね?」
だから溢れた量は少ないって……。ん? なんか言い方が。
「ばあぶう? ばぶう?」
みんな? 本当にどうしたんだ? 俺が思わずそう言うと、それはシャイン達に聞こえたようで、急いで俺の胸の所へ来て、慌てたまま話してきた。
『ティニー、顔、ミルクで汚れてないぞ!!』
『ぜんぜんミルクが溢れてない!! 鼻の方だけじゃなくて、口からもだよ!!』
『だから大変なのぉ。変な事が起こるかもなぉ!!』
ん? 鼻の方に溢れていないのは分かっているけど。口からも溢れていない?
「ミルバーン!! あなたついにできたじゃない!! 少しも溢さずに、ミルクを飲ませる事ができたわ!!」
レイナさんが大きな声でそう言った。な、何と!? 少しも溢さずに、ミルクを飲ませただって!? あれだけ口から溢れさせて、鼻にまで流してきて。俺はミルクで死にそうにまでなったのに。そして昨日もそれをやりそうになったのに。ぜんぜん溢してないだって!?
*********
お読みいただきありがとうございます。
次回更新
13:00、15:00、16:00、17:00
です。
よろしくお願いします。
「そうか……」
レイナさんに最初の合格を言ってもらえるかもしれないんだから、もっと喜べば良いのに。だってレイナさんから合格を貰うのは、かなり難しいと思うんだよな。
「さぁ、次よ。今日は気をつけてね、一昨日はいい感じだったのに、昨日は元に戻りそうになっていたから」
次はいよいよ俺がミルクを飲むんだけど。少しの間レイナさんが俺にミルクをくれていたが、最近は最初にミルバーンにやらせるようにしている。いい加減練習しないと、いつまで経ってもミルクを飲ませられないからって。
ミルクは俺のミルクだけども、俺が関わって作るわけじゃないから。ほら俺を抱っこしたり、あやさなくて良いだろう? だからミルバーンは、ミルクを作る事に関しては、これで積極的にやっている。
そして夜中の、本当は俺は見ているが、誰も見ていないと思っているミルバーンの、ぬいぐるみ抱っこの練習も。自分で自由に練習できるからなのか、ずっと続いているし。
ただ、ミルク飲ませだけは……。1度ミルバーンのミルク飲ましで死にかけた俺。2回目の時もやってくれた。
また俺が死にかけないように、いつでも動けるように、レイナさんが警戒する中。やっぱり俺の口からミルクは溢れ、鼻に入りそうになり。素早く助けてもらった俺。その後もう1度だけやってみたけれど、やっぱり同じ事に。だからレイナさんは俺にミルクを飲ませてくれて。
ミルバーンはその後、全ての練習が終わってから、補習みたいな感じで、マンツーマンでミルクも指導をさせられたんだよ。そのかいあってか、4日もすると、流石に鼻の方へはミルクを流さなくなって。そして一昨日は、口から溢す量も減ってさ。
だけど昨日、またミルバーンはやらかした。鼻の方にミルクがさ。レイナさんが警戒してくれてたから大丈夫だったけど。
「……」
無言でジッと俺を見てくるミルバーン。おい、なんか手が震えていないか? 深呼吸だ深呼吸。その震えじゃまた鼻の方に来るぞ。
なんて思った俺。ふとミルバーンの手が止まると、その手を引っ込めて、ミルバーンが静かに深呼吸をした。俺の気持ちが通じたか?
そうして深呼吸をやめて、再度スプーンを俺の方へ近づけてくるミルバーン。スプーンを持っている手は、もう震えていなかった。
「……」
「そっとよ、そっと」
俺の口にスプーンが触れる。少しずつミルクを飲む俺。うん、ミルクの温度と味はいい感じだな。レイナさんのよりもちょっと。ほんのちょっとだけ薄い気もするけど、たいした違いじゃない。
「ごくんっ! けぷっ」
うん、今日は1回目にしてはけっこう飲めたんじゃないかな? 口から出た分を引いても、かなり飲めたはず。いい感じだミルバーン!
「ばぶう!!」
まずまずだった事にお礼を言う。今日は鼻に入りそうになっての、ドタバタがなくて良いな。……ん? ドタバタがない? そういえば誰も何も言っていないような?
いつもだったら、少しでも俺の口からミルクを溢せば、シャイン達のあまりためにならないアドバイスが始まるのに。
『もっとこうだぜ、こう!! するっと!!』
『違うよ、もっと手をこうやるんだよう、こう!! シュッ!!』
『スプーンの角度は、三角の積み木と同じ角度だようぉ。』
シャインとフラフィーは、こうって言いながら、ほとんど音で伝えてくるから分からないし。ラピーはラピーで、物に例えてくるから分かりにくし。そんなみんなの、余計なアドバイスの声が聞こえてこない。
そしてそれはみんなだけじゃなかった。いつもはすぐに、どこが悪いってミルバーンに注意するレイナさん。もちろんシャイン達とは違う、的確で分かりやすいアドバイスをしてくれるんだけど。そのレイナさんの声も聞こえないんだ。
俺はみんなを見てみる。すると何故か、全員がぼけってとした顔で、俺のことを見ていた。ミルバーンまでもが同じ顔をしている。
「ばぁぶぅ?」
みんなどうしたんだ? って聞いてみる。だけど誰も俺の声に反応してくれなくて。仕方なくもう1度、もっと大きな声で話しかけてみた。
「ばあぶうぅぅぅ!!」
すると最初に話し始めたのはシャイン達で。話し始めたどころか、俺のお腹の上で慌て始めた。
『初めてだった!! 大変だ!!』
『本当の本当に大変だよ!! やっぱり明日何かが起こるんだ!! みんな危ないよ!!』
『大変だぁ、危ないのぉ。みんな隠れないとぉ!!』
何だ? どうしたんだ? みんな落ち着いて、ちゃんと詳しく話してくれ!! そう言ったけど慌てているみんなには聞こえなかったらしく。そのうちレイナさんの声が。
「溢していないわよね?」
って。溢していない? うん、今日は1回であれだけ飲めたんだから、溢した量は少ないはず。ミルバーンを褒めてやってくれ。
「本当に零していないわよね?」
だから溢れた量は少ないって……。ん? なんか言い方が。
「ばあぶう? ばぶう?」
みんな? 本当にどうしたんだ? 俺が思わずそう言うと、それはシャイン達に聞こえたようで、急いで俺の胸の所へ来て、慌てたまま話してきた。
『ティニー、顔、ミルクで汚れてないぞ!!』
『ぜんぜんミルクが溢れてない!! 鼻の方だけじゃなくて、口からもだよ!!』
『だから大変なのぉ。変な事が起こるかもなぉ!!』
ん? 鼻の方に溢れていないのは分かっているけど。口からも溢れていない?
「ミルバーン!! あなたついにできたじゃない!! 少しも溢さずに、ミルクを飲ませる事ができたわ!!」
レイナさんが大きな声でそう言った。な、何と!? 少しも溢さずに、ミルクを飲ませただって!? あれだけ口から溢れさせて、鼻にまで流してきて。俺はミルクで死にそうにまでなったのに。そして昨日もそれをやりそうになったのに。ぜんぜん溢してないだって!?
*********
お読みいただきありがとうございます。
次回更新
13:00、15:00、16:00、17:00
です。
よろしくお願いします。
383
お気に入りに追加
1,099
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Retry 異世界生活記
ダース
ファンタジー
突然異世界に転生してしまった男の物語。
とある鉄工所で働いていた佐藤宗則。
しかし、弱小企業であった会社は年々業績が悪化。
ある日宗則が出社したら、会社をたたむと社長が宣言。
途方に暮れた宗則は手持ちのお金でビールと少しのつまみを買い家に帰るが、何者かに殺されてしまう。
・・・その後目覚めるとなんと異世界!?
新たな生を受けたその先にはどんなことが!?
ほのぼの異世界ファンタジーを目指します。
ぬるぬる進めます。
だんだんと成長するような感じです。
モフモフお付き合いおねがいします。
主人公は普通からスタートするのでゆっくり進行です。
大きな内容修正や投稿ペースの変動などがある場合は近況ボードに投稿しています。
よろしくお願いします。
鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」
突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。
和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。
訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
================================================
一巻発売中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる