異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ありぽん

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9.俺達の表情、そして蝶達とスライムの正体?

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 みんなが一斉に笑ったエルフの方を見た。いや、そりゃあ見るでしょう? みんな真剣にこれからのことについて話しているのに。まぁ、ほとんどが文句だけどさ。それでもこれから生活する上で、とっても大切なことなんだから。

 それなのに、笑うなんてどういうことなんだ? あ~あ~、蝶達とスライムが笑ったエルフに向かって、パンチの格好してるよ。このままだと、本当にパンチしに行きそうだ。

「エリノア、大切な話し合いの最中なのよ。そんな大きな声で笑うなんて」

 笑ったエルフの名前はエリノアさんと言うらしい。レイナさんが注意をしてくれた。そうだよ、笑うにしたって、さっきのエレナさんみたいに、俺にしか聞こえないような小さな声で、誰にも気づかれないように笑わなくちゃ。

「す、すみません」

 パッ! と口を手で塞ぐエリノアさん。でも体は震えていて、たぶんあれ、笑ってるよね?

「はぁ、何をそんなに笑っているの」

「い、いえ。その。赤ちゃんとその子達の表情が」

「表情って。人の顔を見て笑うのはいけない事よ」

「ですが、あの、見てください。同じ物凄い表情をしているもので」

「もう」

 少し呆れた声で言いながら、レイナさんが、そして周りの人達が全員、俺達の事を見てきた。そしてすぐにエレノアさんは、困った顔をして笑って。いや、エリノアさんみたいに声を出しては笑わなかったぞ。ただ。

「あらあら、まぁまぁ。可愛い顔が台無しね」

 そう言ったんだ。そしてその後すぐに、今度は1番偉い人がおでこと顔の部分を手で押さえて、とても嫌そうに? それから困っている感じで。

「お前はどれだけ、この者達の不興を買ったんだ。このような小さな者達に、このような表情をさせるなど」

「今の表情だったら、会ってからすぐやっていたぞ」

「何だと、出会ってからすぐにこの表情をさせたのか!?」

「はぁ、お前は小さな者達に対して、何をやっているんだ」

 ミルバーンの答えに、他のエルフ達がミルバーンを責める。ん? 表情? そういえば確かに、ミルバーンと出会ってからすぐ、ミルバーンが俺達の表情の事を言っていたな。何でみんな俺達の表情の事を言ってくるんだ?

「今の顔、見てみる?」

 そうレイナさんが言うと、エリノアさんとは反対に立っていたエルフに頷いて。そのエルフは部屋の外へ。でもすぐに戻ってきて、手には小さな鏡を持っていた。さっき靴を脱いだ所に置いてあった物だろう。

 その鏡をレイナさんに渡すと。レイナさんは俺達全員が映るように、鏡を持ってくれて。その鏡に映った俺達の表情は……。

 まぁ、酷い顔をしていたよ。俺は額に皺を寄せ目を細め、口をへに字に曲げ。こう相手のことをすごむ感じとでもいうのか。そんな感じの酷い顔をしていた。
 そしてそんな酷い顔を、蝶達とスライムもしていたんだよ。どちらかっていうと、みんなの方がドスが効いている感じだ。

 まさかこんなに酷い顔をみんなでしているとは思わず、みんなも驚いたんだろう。思わず自分達の顔をモミモミしていた。それから俺の方へきて、俺の頬をモミモミしてくれて。ゴブリンを倒しちゃうみんなだからな。小さい手でもしっかりと俺の頬をモミモミしてくれた。

 そんな事をしていると、今度はさっきのエリノアさんみたいな、ちょっと失礼だけど、バカ笑いじゃなくて。ふふふってレイナさんみたいに、上品な笑い方をしながら、あの緑の女の人が、すっと俺達の方へ近づいてきた。

『まったく、出会ったばかりだというのに、もう息ピッタリなのね。でもその息ピッタリは、あまり良くないわ。レイナの言う通り、可愛い顔が台無しだもの』

 そう言ってから俺の方を見てきた緑の女の人。それから緑の女の人は自己紹介をしてくれて、蝶達とスライム達との関係。そして俺にあるお願いをしてきたんだけど。この緑の女の人、ただの緑の女の人じゃなかったんだ。

『私はこの森に住んでいる精霊のドライアドよ。でもドライアドってただ言われるのは寂しいし、なんかそっけないから、自分で名を考えたの。アイラと呼んでね』

 緑の女の人、まさかの精霊、まさかのドライアドだったんだ。名前はアイラさん。まさかこの世界に精霊まで居るなんて。
 結構色々なことに驚きながら、何とかここまできたけど、驚きとしては1番の驚きだった。1番のダメージは、レイナさんのお尻を綺麗にされたことだけど……。

 そしてアイラさんの話しで、さらに驚きの事実が。この小さな蝶達とスライムも精霊だったんだよ。しかもアイラさんに仕えている精霊で。いつもアイラさんの手伝いをしてるんだって。
 まさかただの昆虫とスライムだと思っていたみんなが、アイラさんに仕える精霊だったとは。

 それでそんなアイラさんに仕えているみんなが、どうしてあの時俺の所へ来てくれたのか。そして守ってくれたのか。
 
 いつも通りの朝を迎えて、いつも通りの生活が始まって。いつもはアイラさんが住んでいる聖域から出てこなかったみんな。それはもう何年も続いていたんだけど。何故か今日は何年振りかに外へ出てきて。

 そんなみんなが久しぶりの外を楽しんでいると、いきなりみんなの近くで力の爆発が起こったらしいんだ。こう魔力が爆発するような、元々大地に流れている力が爆破したような。
 それで最初は慌てて逃げようとしたんだけど。爆発の後は何事もなかったように、いつも通りの森に戻って。しかも何故か、爆発した場所に惹かれたらしい。

 それは誰か1匹だけじゃなくみんな同じ思いで。だからちょっとだけ様子を見に行くことにしたみんな。近くでの爆発だったから、すぐに現場に着き。見た感じ爆発で森が破壊されていることはなかったから、ホッとしたみんな。

 でも……。すぐにそれに気づいたんだ。本来ならこの森に居るはずのない、存在が居ることに。それが籠に入って、木に寄りかかって寝ている俺だった。
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