エリアスとドラゴンともふもふは、今日も元気に遊んでいます!?

ありぽん

文字の大きさ
上 下
10 / 72

8あの日の出来事とこれからの話

しおりを挟む
 エリアス達がエンシェントドラゴンから離れ、花壇の方へと、ムーちゃんと名付けられたドラゴンの子供と手を繋ぎながら歩いて行く。人間の姿へと変身したエシェットドラゴンが我々の方に歩いて来た。
 すぐに私はドラゴンに対する挨拶をした。もちろんそこにいた全員だ。

『頭を上げろ。今回は我が自ら話をしに来たのだ。そんなにかしこまらないでも良い。が、お前達の子供達はきちんとお前達を見習い、ちゃんと挨拶ができている。とても良いことだ。と、ちなみに我のことはエンと呼べ。呼び方があった方が楽であろう』
 
 エンシェントドラゴン改めエン様は、子供達の方を見ながらニコニコと笑っている。ちょうどラッセル達がムーに挨拶をしているところだった。

『さて、話を始めるか』

 皆で席に着き、エン様が静かに話し始めた。

『まず初めに言っておくが、あの子供エリアスは、おそらく今この世界の中で1番きれいな魔力を体に宿している。エリアスがこの世界に生まれた事で、私の世界は何千ぶりに動き始めたのだ』

 エン様の言葉にグロリアが息を呑みエリアスの方を見た。そしてそのあとエン様が話す話に、私達は驚く事しか出来なかった。

 エン様はエリアスが生まれた瞬間から、エリアスの存在を感じ、人間にバレないようにエリアスのことを見守っていたというのだ。そしてあの事件現場にも隠れて様子を見ていたと。

『エリアスはケイルトンという街の、確かフーバーという名前の騎士の子供として生まれた』

 ケトルトンのフーバー…あの騎士団長か!? 皆も気づいたらしい。ケトルトンのフーバーといえば騎士から絶大な信頼を得ていた騎士団長だった。だったというのは彼は4年前に死んでいるからだ。フーバーだけではない。屋敷の人間全員が4年前、不自然な死を遂げていた。
 
 彼が死んだ時、あれだけ騎士から信頼を受けていた彼の屋敷から、犯罪組織の闇ギルドとの繋がりを示す証拠がたくさん出てきたため、首都トラッシュから調査が入った。
 たしかに証拠だけならば彼が黒と言えるのだが、その証拠が隠されていた場所や、わざわざ見つかるように隠されていたため、本当に彼が犯罪に関わっているのか断定できなかった。そう、彼は誰かにはめられたのでは、という可能性も残っていた。
 長く行われた調査は結局、証拠不十分で真実がわからないまま、調査は打ち切られてしまったのだ。

 だが彼は結婚していなかったはず。結婚していないのになぜエリアスが? 

『確かなんと言っていたか? 相手の女の名前はタニアと言ったか? タニアはフーバーの屋敷で働く召使だ』

 そうか。確かフーバーの父親は世間体をかなり重要視する親だったはず。召使とそういう事になったとなれば。父親が黙っていなかっただろう。それで表向きは独身のフリをしていたか?

 まぁそんな事は良いのだが、と続けるエン様。どうでも良い訳ではないのだが…。

『ある日の夜中。我はいつものように屋敷にエリアスの様子を見に行っていた。しかしその日はいつもと違ってフーバー達は寝ておらず、旅の格好をしたタニアがエリアスを抱き、フーバーと何かを話していた』

 話によると、何かを解決したすぐに迎えに行くと、タニアに話していたらしい。それまではフーバーの頼れる、その人物は誰だか忘れたらしいが、その人物の所に身を隠せと。
 フーバーが2人にキスをし、タニアとエリアスを乗せた馬車は走り出した。

『我も様子がおかしいと思い、エリアスを追おうとしたのだが、我の方で身問題が起きてな。それで少しの間エリアス達から離れてしまった。そしてあの事件は起こった。タニア達が向かった先に、たまたま盗賊達が待ち伏せをしていたのだ』

 エン様が気がついたときには、エリアス達が盗賊に襲われた後で、エン様はエリアスの所へと急いだ。そして奇跡的に生きていたエリアスを回復させた。
 そして回復が終わったとき、私が部下を引き連れて、エリアスの元へと現れた、という事らしい。

「じゅあ、あの時、エリアスがほとんど怪我もなく元気だったのは」

『盗賊に襲われて気絶し、奴らに見つからなかったのは本当に運が良かった』

「しかしなぜ、エン様はエリアスを」

 少しの間黙ったエン様は、チラリとエリアスとムーの方を見た。そしてまた静かに話し始めた。

『これは他言無用だ。話せばお前達が、いやこの国がなくなると思え。ふむ、この世界を全て消してしまうか』

 エン様の言葉に全員に緊張が走る。そんなに大変な話なのか?

『まずは話さないと約束しろ。それが出来なければ、我は今すぐエリアス達を連れ、ここから離れる。育てるのには苦労するかもしれんが仕方がない』

 そう言ったエン様の言葉にすぐに反応したのはグロリアだった。

「私は約束いたします。絶対に他言いたしません。エリアスのためならばなんだってします!」

 それに続き私も約束する。

「私も同様です。エリアスは私達の大事な大事な息子です。エン様のいう通りにいたします」

 エン様が頷き、それから陛下や他の皆を見渡す。皆が頷きもう1度頭を下げた。

『よし、では話すとしよう。我の命はもうそう長くはもたん。とは言ってもお前達の感覚からすれば、まだあと10年くらいは大丈夫だが。我からしたら10年はとても短いものだ』

 まさかの衝撃的な言葉から始まった。
 何千年と生きてきたエン様の寿命が近づいてるというのだ。それに気がつきした時、エン様は魔力を集め、そしてそれは成功し1つの卵が生まれた。それがムーの卵だったらしい。
 
 そして卵が生まれて数年後、ある街で1人の子供が生まれた。それがエリアスだった。エリアスが誕生した瞬間、太陽のように暖かかく輝く光が、エリアスを中心に世界へと広がったらしい。
 それに気づいたエン様は、これからどれくらい生きられるか分からない自分よりも、エリアスに自分の子供ムーを託そうと決めた。エリアスならばムーを導いてくれると。

 それからはちょくちょくエリアスの様子を屋敷に見に行っていたのだが、あのエリアスが屋敷から何故か逃げた日、卵の中のムーの様子があまり良くなく、すぐに卵の所に戻り世話をしていた所に、あの事件が起きてしまった。

『あの時はただでさえ少ない寿命がさらに縮んだ気がしたぞ』

 私のもとで暮らし始めたエリアスの様子を、変わらずに確認しに来ていたエン様。
 
 あの事件から何事もなく育ったエリアスの3歳の誕生日の日、エン様はこれから生まれてくるムーが最初の契約魔獣となるのは流石に無理かと、慣れてもらおうとプレゼントを用意した。それがぷるとウルだった。
 エン様は自分の魔力とエリアスのまだ芽生えていない魔力を混ぜ、エリアスにぷるとウルと契約を行ったのだ。

「あの日突然ルーファスが魔獣が現れたと騒いだのは」

「途中まで我が結界を張っていたからな。解いた瞬間、突然現れたように感じたのだろう」

 まさかそんな事をしていたとは。驚く私の隣をグロリアが前に出てくると、突然エン様を怒り始めた。

「なんて危ない事をなさるのですか! エリアスはまだ魔力が使えるとされる年齢になっていないのですよ。それを無理やり魔力を使わせるなど、エリアスに何かあったらどうするおつもりだったのですか!!」

『いや、それは我がやるのだから危険は…』

「そんなの分からないではありませんか! エンシェントドラゴンともあろうお方が、何をなさっているのです! だいたいあなたは…」

 グロリアの説教が止まらなくなってしまった。最初はいろいろ言い訳をしていたエン様だったが、次第に声が小さくなり、最後にはしょんぼりと肩を落とし、グロリアの説教を聞いていた。
 流石に止めに入ったが、エン様は小さな声でグロリアに謝り、はぁとため息をついていた。

『話を戻すが、ここからが本題だ。この後ムーが育ち、エリアスと共にドラゴン騎士になるのも、冒険者になるのも、自由に暮らすのも、それはムー達に任せようと思っている。が、お前達の考えで国を守らせようと、ムー達を誘導するような真似はするな』

 それから国に縛り付ける事もするなと。必ずムーやエリアス達の自由にさせるように。おそらくムー達が大きくなり、将来の事を決めるまでには、エン様も生きておられるため、もし約束を違えれば先程言ったと同様、国を滅ぼすと。

 ならば大きくなってからムーが大きくなってから、エリアスと引き合わせても良かったのでは? と思った。エリアスのその1番綺麗だという魔力が、完全に目覚めてからでも良かったはず。子供は7歳になれば自然と魔力が目覚めるのだから。
 そうエン様に聞けば、

『ムーは我の初めての息子。育て方がイマイチ分からん。お前達の所にいるドラゴン達に教育を頼みたいのだ』

 それが2番目の理由だと。自分で育てる自信がないと聞いて、グロリアの視線がエン様に突き刺さる。その視線にエン様は少し慌てながら、1番の理由を話てきた。
 エリアスの近くにいるだけでムーは、まだエリアスが力に目覚めていなくても、自然とその内に秘めた力を受け取る事ができ、その力はムーにとって素晴らしい物になるのだと。

『教育とはどのような?』

 陛下のケイトルスがそう聞いた時だった。後ろの方で大きな炎が上がった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です 詳細説明 生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。 そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。 そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。 しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。 赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。 色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。 家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。 ※小説家になろう様でも投稿しております

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【完結】政略結婚をしたらいきなり子持ちになりました。義娘が私たち夫婦をニヤニヤしながら観察してきます。

水都 ミナト
恋愛
私たち夫婦は祖父同士が決めた政略結婚だ。 実際に会えたのは王都でのデビュタントだけで、それ以外は手紙で長らく交流を重ねてきた。 そんなほぼ初対面にも等しき私たちが結婚して0日目。私たちに娘ができた。 事故で両親を亡くした遠い親戚の子を引き取ることになったのだ。 夫婦としてだけでなく、家族としてもお互いのことを知っていかねば……と思っていたら、何やら義娘の様子がおかしくて――? 「推しカプ最高」って、なんのこと? ★情緒おかしめの転生幼女が推しカプ(両親)のバッドエンド回避のため奔走するハイテンション推し活コメディです ★短編版からパワーアップしてお届け。第一話から加筆しているので、短編版をすでにご覧の方も第一話よりお楽しみいただけます!

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

次は幸せな結婚が出来るかな?

キルア犬
ファンタジー
バレンド王国の第2王女に転生していた相川絵美は5歳の時に毒を盛られ、死にかけたことで前世を思い出した。 だが、、今度は良い男をついでに魔法の世界だから魔法もと考えたのだが、、、解放の日に鑑定した結果は使い勝手が良くない威力だった。

簡単に聖女に魅了されるような男は、捨てて差し上げます。~植物魔法でスローライフを満喫する~

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』
ファンタジー
ifルート投稿中!作品一覧から覗きに来てね♪ 第15回ファンタジー小説大賞 奨励賞&投票4位 ありがとうございます♪ ◇ ◇ ◇  婚約者、護衛騎士・・・周りにいる男性達が聖女に惹かれて行く・・・私よりも聖女が大切ならもう要らない。 【一章】婚約者編 【二章】幼馴染の護衛騎士編 【閑話】お兄様視点 【三章】第二王子殿下編 【閑話】聖女視点(ざまぁ展開) 【四章】森でスローライフ 【閑話】彼らの今 【五章】ヒーロー考え中←決定(ご協力ありがとうございます!)  主人公が新しい生活を始めるのは四章からです。  スローライフな内容がすぐ読みたい人は四章から読むのをおすすめします。  スローライフの相棒は、もふもふ。  各男性陣の視点は、適宜飛ばしてくださいね。  ◇ ◇ ◇ 【あらすじ】  平民の娘が、聖属性魔法に目覚めた。聖女として教会に預けられることになった。  聖女は平民にしては珍しい淡い桃色の瞳と髪をしていた。  主人公のメルティアナは、聖女と友人になる。  そして、聖女の面倒を見ている第二王子殿下と聖女とメルティアナの婚約者であるルシアンと共に、昼食を取る様になる。  良好だった関係は、徐々に崩れていく。  婚約者を蔑ろにする男も、護衛対象より聖女を優先する護衛騎士も要らない。  自分の身は自分で守れるわ。  主人公の伯爵令嬢が、男達に別れを告げて、好きに生きるお話。  ※ちょっと男性陣が可哀想かも  ※設定ふんわり  ※ご都合主義  ※独自設定あり

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...