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2巻

2-3

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 次の日、予定通りに僕たちは、洞窟どうくつへとやって来ました。しっかり、自分たちでバケツに道具を入れて持ってきています。ストライドやクラウドが荷物を持ってくれるって言ったんだけど、自分でできることは自分でしないといけません。
 でも、途中でどうしても持っていられなくなったら持って、とお願いしました。さすがに、それで洞窟どうくつ探索が遅れたら困ります。
 あと、お屋敷を出発する前に、アビアンナさんから特別なプレゼントをもらいました。僕とフィル、それからクルクルに、カバンです。
 僕は肩からかけるタイプで、フィルのイラストが描いてあるカバンでした。
 フィルとクルクルは、サイズピッタリのリュックで、ちゃんとそれぞれの絵が描いてあるから、誰のカバンか一発で分かります。二匹とも、つけた状態でしっかりと動けるか、動作確認もしました。もちろん、二匹ともいつも通りに走ったりジャンプしたり、飛んだり、まったく問題ありませんでした。
 そのカバンにハンカチと、地球のティッシュに似ているもの、後は途中で食べるおやつを入れたら完璧です。僕もフィルたちもニコニコ。アビアンナさんにきちんとお礼を言いました。
 アリスターのカバンは、アリスターの体と同じ色の、僕と同じ首からかけるタイプのカバンです。そこには、僕たちのカバンに入れたものの他に、ノートとペンが入っています。
 見つけた素材について書くんだって。遊びに来たんだけど、初めてのことは書くのが勉強だと、エセルバードさんたちに言われてるみたいです。
 今日洞窟どうくつに行くのは、僕たちとアリスター、クラウドにストライド、それからアリアナです。洞窟どうくつに着くまでにも、色々見たことがないお店がありました。気になったけど今日は洞窟どうくつ探索。今度また連れてきてもらおうって、みんなで話しながら進みます。
 そして洞窟どうくつの前に着きました。本当に大きな洞窟どうくつが里の中にありました。入口には、ドラゴンたちによる洞窟どうくつに入るための列ができています。僕たちも列に並びました。前から聞こえてきた声は――

『今日は何人で?』
『夕方までですね』
『ルールを守って楽しんでください』

 洞窟どうくつの門番さんが、色々と聞いていました。ちゃんと人数と帰る時間を確認して、しっかり書き留めています。いくら子供が入れるといっても、洞窟どうくつ洞窟どうくつです。記録しておけば、何かあってもすぐに分かります。
 そして待つこと数分。やっと僕たちの番です。

『ストライド、話は聞いております。人数と時間もすでに』
『そうか、人数に変更はない。それに時間も予定通りだ』
『了解いたしました。ではみなさん、こちらをつけてください』

 門番のドラゴンから渡されたのは、オレンジの石がついたペンダントでした。これはさっきの危機対策と同じく、洞窟どうくつから帰ってこない人たちを見つけられるようにするためです。
 石に魔力を流すと、同じ材質の石が反応するので、それを辿たどって見つけるんだとか。

『では、洞窟どうくつ探索、楽しんでくださいね』
「うん!」
『はやくいくなの!』
『キラキラ、ピカピカ、宝物!』
『今日は何が見つかるかなあ』

 みんなでぞろぞろ洞窟どうくつの中へ入ります。入った瞬間、空気がヒヤ~としました。さすが洞窟どうくつ、外よりもすずしいです。
 ちなみに、今この世界は、始まりの季節なんだそうです。他にも順番に緑の季節、次へ向かう季節、白の季節があります。話を聞いた感じ、日本で言うところの、春夏秋冬に似ています。
 今は春にあたる始まりの季節で、暑くもなく寒くもなく、ちょうどいい時期です。

『ここから暗くなりますので、足元に気をつけて。私たちが明るくしますから大丈夫だとは思いますが』

 すぐにストライドとクラウドが、周りを明るくしてくれました。といっても、暗くないと見つからないものもあるらしくて、足元がうっすら見える程度の明るさです。

『ねえねえ、カナデ。なにみつかるかななの!』
『みんなで宝物見つける、一緒の宝物。それで、みんなでしっかり宝物入れにしまう』

 クルクル、それいいかもね。みんなおそろい、絶対いいよ。
 どんどん中へ入っていきます。少し行くと、先に入っていたドラゴンの家族が何かをしていました。子供ドラゴンが虫籠むしかごみたいなものに、何かを入れています。よく見たらクルクルみたいな、モコモコボールでした。僕の指の先っぽくらいの大きさです。

『あれは、チョウという虫です』

 クラウドが教えてくれました。チョウってちょう

『どこにでもいる虫で、可愛かわいいと子供に人気です』

 あっ、虫籠むしかごの中で飛んだ! 本当だ、飛んだら蝶だって分かりました。クルクルみたいに、飛んでいないときは羽を丸くしているようです。うん、可愛かわいい! 僕も見つけたら捕まえたいな。飛ぶところが見たいんです。その後はちゃんと自然に戻します。
 ちなみに、この蝶の寿命は、五十年以上でした。地球の蝶と全然違います。ビックリしてしまいました。ただ、この世界の生き物は、もともとそれくらい長生きするそうです。これは、ストライドが言ってました。
 虫取りドラゴン家族を追い抜いて、さらに洞窟どうくつを進んでいきます。

『あっ! あそこ、何か光った! 行こう!!』

 クルクルが僕の手に降りてきて、斜め前の方向を羽でさしました。
 僕たちはそこに向かって走り出します……が、石につまずいて『べしゃー!!』と転びました。
 ちゃんと前に手を出したんだけど、勢いがついていて、顔も手もお腹もひざも、全部がこすれるわ、ぶつけるわで、痛いのなんの。

「い、いちゃ、いちゃあぁぁぁ!!」

 子供の体になっていて、痛みを我慢がまんできない僕は、ギャン泣きです。

『カナデ、だいじょぶなの!!』
『カナデ!! 大変!』
『ストライド! 早く薬! 持ってきたでしょう!?』
『カナデ様!!』
『クラウド、これを!!』

 ストライドがクラウドに小瓶こびんを渡して、クラウドはギャン泣きの僕に、その中身を飲むように言いました。グッドフォローさん特製の怪我けがを治す薬で、飲めばすぐに効くそうです。
 僕は泣きながら、なんとかそれを飲み干すと……飲んで数秒後、痛みが引きはじめたと思ったら、きずも消えはじめて、一分もしないで怪我けがが完璧に治りました。うん、やっぱりグッドフォローさんはすごい。

『カナデ、だいじょぶなの?』
『もう痛くない?』

 フィルとクルクルが心配してたずねてきます。

「うん、いちゃにゃい」
『カナデ様、皆様も、暗い場所で急に走ってはいけません。いくら明るくしていても、最低限の明るさなのです。今みたいに怪我けがをして、薬がなかったらどうしますか? 洞窟どうくつ探索はできなくなってしまいますよ。怪我けがが酷ければ動けずに、洞窟どうくつから出られなくなる可能性もあるのです』

 僕たちはストライドに、ごめんなさいをしました。

『いいですか、今度から何かを見つけても、決して走ってはいけませんよ。せっかくの楽しい洞窟どうくつ探索が、悪い思い出になってしまいます。この後は約束を守って、楽しく探索をしましょうね』

 みんなでしっかり『はい!!』と返事をします。そうしたら厳しい顔をしていたストライドが、ニコッと一瞬だけ笑って、その後はいつも通り仕事中のスンって顔になりました。
 僕は立ち上がると、気合を入れ直して、今度はみんなで歩いて、クルクルが何かを見つけた場所に行きます。

『ストライドさん、申し訳ありません。急なことに反応できませんでした』
『クラウド、子供は私たちが思っている以上に、急な動きをします。まあ、それが子供なのですが、あなたにもいい教訓になったでしょう。次からは気をつけてください。今回は危険がない洞窟どうくつでしたが、いつも何もない場所であるとは限りませんので』
『はっ!』

 走らずに気をつけて。うん、今みたいにしっかり歩けば大丈夫。よし、クルクルが見つけたものは……

「クルクルど?」
『なにもないなの』
『あれえ? さっきはあったのに』
『別のところだった?』

 クルクルが何かを見た場所と、その周辺を見たんだけど……これといって何もありません。壁にキラキラしているものが見えたそうです。う~ん、でも何もないよ。

『アリスター様、洞窟どうくつでは色々試しなさいと、旦那様に教えられませんでしたか?』

 ストライドが言います。試す? 何を? アリスターは何か気がついたみたいで、『あっ!』と言ったあと、ストライドにもう少し明かりを暗くするよう頼みました。ストライドがうなずいて、光魔法を弱めます。そうしたら……

『キラキラ出た!!』
『いきなりキラキラになったなの!!』
「にゃんで!?」

 クルクル、フィル、僕は一斉にさけびました。壁の一ヶ所に、キラキラが現れています。よく見ると、壁にとっても小さいキラキラ光る石がはさまっていたんです。本当に小さくて、僕の指先くらい。でもキラキラが強くて、だから、遠くからでもクルクルは見つけられたようです。

『正解です』

 洞窟どうくつには、周りの明るさによって、見え方が変わるものもあるんだとか。今回は、明るいと見えない石です。明るいとただの石で、暗くすると、今みたいにキラキラ光ります。
 夜、この石を部屋にいて明かりを消すと、星空の中にいるみたいにとっても綺麗きれいに見えるとのことです。
 プラネタリウムの床バージョン? それやってみたいかも。この石はお店で売っているから、ストライドが『買って帰りますか』と言います。でも僕はみんなと相談して、洞窟どうくつで集めて持って帰ることにしました。
 だって、せっかくの洞窟どうくつ探索だから、みんなで探して持って帰った方がいいに決まってます。
 ということで、これからは他のものも探しつつ、時々周りを暗くして、この石を探すことにしました。
 最初の一個目は、見つけたクルクルが取ります。上手く足を使って、ひょいっと壁から外した後、石が下に落ちる前に、空中でキャッチです。僕たちは拍手はくしゅします。
 クルクルは、なくさないように、持ってきていた小さな布袋に石をしまいました。袋は、小さいものを入れる用、ちょっと大きめなもの用を用意していて、もっと大きなものはバケツに入れます。
 これも、洞窟どうくつに行くときには大事なことです。小さなものをバケツに入れて、気づかないうちになくしてたら嫌ですから。
 こうして、僕たちは最初の戦利品を手に入れました。もちろん、みんなで嬉しいときの『やったぁ!』のポーズをします。洞窟どうくつ探索はまだまだこれからです。

「ちゅぎは、あち!!」
『こんどはなにかなあなの!!』
『なんかピカッ、ピカッて点滅してる』
『あれ、僕も見たことないよ』

 本当? 何回か洞窟どうくつに入ったことのあるアリスターが見たことないなんて。もしかしたら、大発見かもよ。

「はちりゃにゃい、みにゃ、ゆっくり!」
『いくなの!!』

 僕たちは、新しく発見した何かに向かって前進。でも約束した通り、走りません。また転んだら大変です。まだ薬はあるみたいだけど、最後まで怪我けがをしないことが大切です。


         *


『嫌だわ、ストライド、何あれ。早歩き? それとも横走り? いいえ、走ってはいないから横歩きかしら』

 カナデたちの様子を見にやって来たアビアンナが言った。

『アビアンナ様、カナデ様方は、最初以外は私どもの言うことを聞いてくださり、どこへ行くにもちゃんと歩いて向かわれるのですが……』
『なぜかあのような歩き方に』

 ストライドとクラウドが答えた。

『なるほどね、クラウド。早歩きの方は、細かく足を出して、なるべく走らないようにしているのが分かるわね。ただ、普通に歩いた方が前に進むでしょうに。横歩きの方は……どうして横に歩くのかしら? 子供って、時々謎の動きをするわよね』
『先ほど、普通に歩いていいのですよ、とお伝えしたのですが、カナデ様方は分かっていないご様子で』
『まあ、約束を守るのはいいことね。私も面白い動きが見られてよかったわ。早く仕事を切り上げてきた甲斐かいがあったわよ』


         *


「とちゃく!」

 僕――カナデたちの前には今、岩にくっついている何かがあります。石みたいなのに、もこもこしたやわらかそうなものがついているような、よく分からないものです。ただ、ピカッ、ピカッて点滅して面白いんです。
 途中で合流したアビアンナさんたちがすぐに追いついてきました。
 アビアンナさんは、僕たちの初めての洞窟どうくつを心配して、様子を見にきてくれたそうです。エセルバードさんも来ようとしたんだけど……
 来る前に、ストライドがリラックスルームで、エセルバードさんに書類の山を渡していました。僕の背丈の大きさの書類の山が、全部で五つ。今日のノルマだそうです。
 それが全然終わらないんだとか。アビアンナさんが来るときに見たら、まだ一つ目の書類の山の途中だったみたいです。
 そんなにたくさんのお仕事大変だねって、お話をしていたら……どうも、僕たちがドラゴンの里に来る前からのサボり分がまりにまっているだけで、今更後悔しても遅い、とストライドが言っていました。
 それはともかく、アビアンナさんによると――

『これがここにあるのは珍しいわね。普通はもっと大きな洞窟どうくつか、危険な洞窟どうくつに生えることが多いの。これは光苔ひかりごけの仲間よ』

 光苔ひかりごけにはたくさん種類があります。まず、光るときの色が白だったり、青だったりと、色んな色が。それから、こけの葉の形も様々で、あと単体で生えているか、群生しているか……他にも色々と違うことが。今までに発見されているこけの種類は千を超えているとのことです。
 地球でも集めている人たちがいるように、この世界でもそういった人たちがいて、珍しいこけは高値で売り買いされるんだとか。品評会とかもあるらしいです。
 そして、今僕たちの前に生えているこけは、とっても珍しい種類でした。本来は、僕たちが行けない、しかも年齢制限がかけられている洞窟どうくつで、時々見つかるんだそうです。

『ストライド、確かこのこけは、光り方が珍しいけど、育てるのは思ったよりも楽だったわよね』
『はい、環境さえ合えば、すぐに生長するかと』
『この量を育てれば増えるわよね。そうすれば、暗い部屋で綺麗きれいこけを見ることができるから、持って帰りましょうか』
『ピカピカきれい、もってかえるなの!』
『ピカピカが増えた!』
『しっかり持って帰ろうね。僕、帰ったら、ノートにしっかり絵を描こう!』

 こけを取るのはちょっと難しいから、ストライドがいくつか取ってくれました。それを、そのまま箱に入れます。今は少しのこけでも、上手くいけば増えてたくさんのこけが見られます。楽しみだなあ。
 今、持ってきたバケツ三つのうち、一個と半分に、色々な素材が入っています。それとは別に、袋二つにも。
 エセルバードさんは、素材が少ないから今の時期はいてるって言ってたけど、嘘でした。洞窟どうくつの中は素材だらけ。まだまだ持って帰りたいのがいっぱいです。
 今までに見つけたものは……最初の暗くすると光る石。それから踏むと『キュッキュッ!』と音が鳴る石。簡単に手でもちぎれるのに、水をかけてから切ろうとすると、まったく切れなくなる、とっても丈夫なツル。洞窟どうくつにしか咲かない、とっても可愛かわいい花。あとはねえ、面白い形の石に、透明な石。これは僕が蹴るまで、そこに石があるって分かりませんでした。それからそれから……うん、いっぱい!!
 ただ、とっても楽しいのはいいんだけど、やっぱり今日中に洞窟どうくつを全部見て回るのはダメそうで、半分まで行ったら帰ることになってます。次回は別の入口から入って、もう半分で遊べばいいからって。
 もちろん半分まで行っても、そのまま帰るわけがありません。戻るときだって、しっかり探索しながらです!


『じゃあ、ストライド、今日はそろそろ戻りましょうか?』
『そうですね、アビアンナ様。ちょうどいいくらいかと』

 僕たちは帰りながらも、どんどん素材を集めていきます。部屋にくつもりでいる石もしっかり集めないと。だって、あれだけ大きな部屋なんだから、いっぱいいります。
 あっ、それから、この石は踏んでも大丈夫です。壁から取るまでは、普通の石と同じく硬いんだけど、壁からとって少し経つとやわらかくなるんです。ワタを丸く固めた感じ。だから踏んでも大丈夫です。
 もちろん遊んだり、プラネタリウムみたいにしたりした後は、みんなでお片付けをします。風の魔法で集めてもらった石を、バケツに片付ける予定です。

『あっちにも、なにかあるなの!』
『発見!』
『あっ、これも持って帰ろう。まだまだ知らないものがいっぱいだよ』

 洞窟どうくつの奥まで分かれ道はなく、ただまっすぐ進んだはずなのに、見落としていたものがいっぱいありました。ちなみに、洞窟どうくつの奥まで行くと、分かれ道になっていました。
 右に行くと岩とか石とかがいっぱい、左に行くとこけとか花がいっぱいなんだとか。同じ洞窟どうくつなのに、あるものが違うって面白いです。
 と、出口まで戻る途中、僕もキョロキョロ周りを見回していたら『ポワッ!!』と何かが輝いている感じがして、そっちを見ました。
 でもそんな光っているものはなく、そこはただの壁でした。う~ん……なんか感じるんだよね。僕は壁に近づいて、しっかり調べてみます。もちろんストライドに灯りを暗くしてもらったり、さっと壁をでてみたり。でも、やっぱり何もありません。
 う~ん、やっぱり僕の気のせい? 最初通ったときは、こんな感覚にならなかったのに。もう少し別のところも見てみようかな? 立ったまま見える範囲を調べていたので、しゃがんで地面や、壁の下の方を確かめてみました。
 すると、地面と壁のちょうど境い目に違和感を覚えました。とはいえ、見る分にはただの地面と壁です。よし!! 僕は思い切って、その部分を触ってみることにしました。

「ちゃあ!!」

 気合を入れて『ペシッ!』と思いきりたたきます。僕の手では、力の抜けた音しかしません。でもたたいてすぐでした。
 ピシッ! パシッ!! ピシシッ!! パラパラ、バラバラバラッ!!
 突然のことにビックリしていると、隣にいたクラウドがあわてて僕の前に立ちます。そして、僕がたたいた部分から壁が崩れて、僕が入るのにちょうどいいくらいの穴が開きました。
 その壁の崩れた音に気づいたフィルたち、アビアンナさんたちも、急いでこちらに集まってきます。

「あにゃ、あいちゃ」
『え、ええ、穴ね』
「ぱちって、やっちゃの。あにゃ、ごめんしゃい」

 いくらわざとじゃなくても、穴を開けてしまいました。しかも他の人たちも来る洞窟どうくつ。この穴、誰かふさげないかな?
 エセルバードさんたちの先生だったメイリースさんが魔法で木を生やすみたいに、もしくは僕が頑張がんばって土魔法を練習して穴を塞ぐとか、一生懸命アビアンナさんに伝えます。

『大丈夫よカナデ、そんなに心配しなくても。洞窟どうくつなんてその日その日で変わるものなの。昨日はなかった穴が次の日には存在して、新しい道が見つかるなんてことはよくあるのよ。だから、心配しないで』

 そうなの? はあ、よかった。ビックリしました。みんなで一緒に穴の中をのぞき込みます。あっ! 光ってる! ポワッて!! 綺麗きれいに光ってるものがあるよ。

『なにかあるなの!』
『ちょっと奥にあるね』
綺麗きれいな光だね。かあ様、取ってもいい?』
『そうね、嫌な感じはしないし、大丈夫だと思うけれど。ストライド、クラウド、アリアナ、あなたたちはどう?』
『私も何も感じません。どちらかといえば、いい気配を感じます』
『私も同様に』
『わ、私もです!』
『なら、いいわね』
『やった! カナデが見つけたからカナデが取ってくる?』

 うん、アリスター! 僕が見つけたんだもん、僕が行くよ。それに、穴の大きさも僕にピッタリだし。僕はハイハイで穴に入っていきます。クルクルもついていくって、僕のおしりつかまりました。
 穴は数メートル奥まで続いています。幅は入口は僕が一人、ハイハイで通れるくらいで、中は僕がハイハイのまま、スレスレでUターンできるくらいでした。
 魔法で明るくしているとはいえ、そこまでよく見えるわけでもないので、ちゃんとクルクルがおしりにくっついているか確認しながら進みます。
 そして奥まで行くと……そこには青色の涙の形をした宝石みたいな石が、キラキラ、ポワッと光っていました。

「きりぇにぇ」
『うん、とっても綺麗きれい!! カナデが、とってもすごい宝物見つけた! すごい!!』
「もっちぇかえりょ!」
『うん!』

 そっと石を触ります。触っても光は消えません。持ってハイハイは大変だから、僕は石を服の中にしまって、そのままUターンしました。
 穴から出た途端、フィルとアリスターがずずいっと僕の前に来ました。

『カナデ、なんだったなの!?』
『石? こけ? 花?』

 待って待って、今見せるから。僕はみんなに石を見せました。


『わぁ! すごくきれいなの!!』
『こんなの初めて見た!! すごすごい!!』
『これは一体……』
『私も初めて見たわ。こんなものが、こんなところにあるなんて』
『ここはこの里ができた当時からある洞窟どうくつ。何百年も誰にも気づかれず、ずっとここに?』

 喜ぶ僕たちの一方で、クラウド、アビアンナさん、ストライドが考え込んでいます。一応持って帰っていいか聞いたら、洞窟どうくつで見つけたものは、見つけた人のものだから大丈夫だって。ただ、目立つといけないから、クラウドが隠して持って帰ってくれることになりました。とっても綺麗きれいだもんね。
 こうして僕たちは、その後も色々素材を集めて、初めての洞窟どうくつ探索を終えました。


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