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2巻
2-2
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お屋敷の中はいつも通りです。ザワザワしているわけじゃないし、慌てている様子もありません。ただ、いつもよりはドラゴン騎士さんたちが多いくらいでした。
それからほぼ普段と同じ時間に夜のご飯です。ただ、食べたのは僕たちだけです。エセルバードさんとアビアンナさんがいないのは初めてでした。でも人数が少なくても、その分みんなでお話ししながら食べたから、楽しかったし、美味しいご飯でした。
食後、リラックスルームでゴロゴロしていると、僕、フィル、クルクルを、ストライドが呼びに来て、そのまま初めての部屋に行きました。会議室だって。
中に入れば、相変わらずの大きな部屋に、大きな大きな丸いテーブルがあります。
テーブルについていたり、その周囲に立っていたりするドラゴンとたぶん人型ドラゴンたちが、一斉に僕たちを見てきたので、思わずフィルの後ろに隠れてしまいました。
座っているのは、エセルバードさんと隣にアビアンナさん。それから右から順番に、人型ドラゴンが二人、ドラゴンが二匹。その近くに立っているのが、やっぱり二人の人型ドラゴンに、ドラゴンが二匹です。
ストライドが僕たちを、アビアンナさんの隣に連れていき、僕たち専用の椅子に座らせてくれました。クルクルはフィルの頭の上です。
そして、エセルバードさんが口を開きました。
『カナデ、ビックリしたと思うが、ちょうど皆集まっているから、カナデたちを紹介しようと思ってな。ここにいるのは、この里を守るドラゴン騎士部隊の隊長と、副隊長だ』
隊長と副隊長、なんかカッコいいね。そんな凄い人たちが集まってるの? 今までちょっとビクビクしていたんだけど、すぐにそれが収まりました。
この里には五つのドラゴン騎士部隊があって、第一部隊はエセルバードさんが率いているそうです。それから、第二部隊隊長のリゴベルトさんに、副隊長のジェッドさん。二人は人型です。第三部隊隊長のトラビスさんに、副隊長のタイレルさん。二人も人型でした。
残りのドラゴンたちが、第四部隊隊長ヘクタールさんと、副隊長のホリスさん。最後は第五部隊隊長アンジェリナさんと、副隊長のトレーシーさんです。
僕たちはきちんと挨拶しました。
『よろしくな!』
『本当にまだ幼いのですね』
『がはははは! 本当に集まっているんだな。まさかこんな一度に、色々と集まるとは』
『あらあ、可愛いわねえ。持って帰りたいわ』
なんて返されながら、僕は全体を見て、確かに部屋は広くないといけないなあって思いました。大きいドラゴンが四匹もいると、大きな部屋なのに普通に見えます。もし全員がドラゴンだったら?
挨拶が終わると、アリスターと会ったときのこととか、ドラゴンの里には慣れたかとか、そんな話をして、それが終わったらすぐに部屋を出ました。出るときはクラウドも一緒です。
もう寝る時間でした。でも、僕たちの部屋に戻る前にアリスターの部屋に寄って、おやすみなさいをします。アリスターは起きていてくれました。
それで、自分のベッドに入ろうとしたところ、クラウドに止められました。
『すみません。寝る前にお話があります。今日の鐘のことです』
ああ、そうか。だからみんなバタバタしてたんだもんね。あれはなんだったの?
今日鳴った鐘の音は、ドラゴンの里、または周辺で、ちょっとした問題が起きて、すぐに里に影響を与えないけど、それでも気をつけてほしいときに鳴るものだそうです。
鐘が鳴ったら、用事のないドラゴンは家に帰って、仕事があるドラゴンはその仕事を終わらせたら、すぐに家に帰るって決まりです。
そうか。だから、子供ドラゴンがいたあのドラゴン家族も、その他のドラゴンたちも、ささっと遊ぶのをやめて帰ったんだね。
「もんじゃい、あちゃ?」
『ええ、ですがちょっとした問題ですよ。ただ、もしこれからまたこういうことがあったら、私の言う通りにしてください。それは、カナデ様たちを守るためですので』
「あい!」
『うんなの!!』
『ねえねえ、他にも音、あるでしょう?』
クルクルがそう言いました。え? そうなの?
「べちゅのおちょ、ありゅ?」
『うん、ボク前に聞いたよ。一回だけ』
『クルクル、それは二年前の、石の音か?』
クラウドが尋ねます。
『う~ん、二年? たぶん? でもずっと前だよ。それでその音の後、魔獣が里の周りに、いっぱい転がってた。だからボク、いっぱいご飯食べられて大満足!!』
え? それも何か危険を知らせる音だったんじゃ? 魔獣がいっぱい転がってたのって、魔獣が里を襲ったんじゃないの? 大満足……
『やはりそうか。そうだ、確かに危険を知らせる音は、もう一つ、石を使ったものがあります。それは里に危険が迫っているときに鳴らされます。鐘よりも大きな音が鳴るのですよ。それは――』
『ふす~、ぷす~』
大事な部分をクラウドが話そうとしたとき、隣からそんな音が聞こえました。見たら、隣に座っているフィルが、完全に寝ています。しかも、ピシッとした姿勢で。ずいぶん器用に寝るよね……
「ふぃりゅ、おきちぇ? おはなち、しゃいちゅよ?」
『う~ん、まほう、ば~んなの!!』
ば~んって言葉に、ビクッとする僕。でも、その後もフィルはまたぷすぷす言って寝続けます。今の寝言? かなりはっきりした寝言なんだけど。しかも『まほう、ば~ん』って。
『ふへへ、アリスターパパ、あたまぼ~んなの。ふへへへへ。ぷす~、ぷす~』
……え? あたまぼ~ん? どんな夢なの!?
『あ~、今日はもう終わりにしましょう。明日、今の話の続きを。それと、音を聞いてもらった方が分かりやすいでしょうから、その石もお見せします』
というわけで、みんなでベッドに入って、お休みなさい。クラウドがフィルをベッドに寝かせてくれました。でもその後何回か、『ば~ん!』とか『ぼ~ん!!』とか、あげくのはてには――
『おちたなの!! あっ、おかしのプールなの! ……ちがった、やさいだったなの、プールだったなの』
極めつけは――
『ボクのぬいぐるみ、やさいにおそわれてるなの!? たすけるなの! たあー!! なのぉ!』
本当にどんな夢を見てるの!? しかも『たあー!!』のときに、フィルは僕の顔をグイグイ押してきました。僕はほっぺをすりすりされたせいで、フィルの夢が気になって、ぐっすり眠れませんでした。クルクルはすぐに寝てました。よくあれで寝られるよね。
*
私――エセルバードにクラウドがそのことを知らせに来たのは、前日の夜、カナデたちが眠りについた頃だった。カナデたちには他にも数人、護衛をつけてあるから大丈夫だろうと思うが、クラウドが自分から護衛対象から離れるとは意外だった。
彼は、カナデがおかしな様子を見せたと、伝えに来たのだ。部屋に入る途中で、突然立ち止まったカナデ。詳しく話を聞けば、里の外に、何か嫌な気配を感じたらしい、と。
ただ、そのときには、嫌な気配はもう消えていたという。そこで、部屋に入ると、アリアナにカナデたちを任せ、私のところへ来たそうだ。
『カナデ様は「神の愛し子」様です。私には分かりませんでしたが、カナデ様だから、何かの変化に気づいたのではと思います』
確かに、たとえほんの数秒でも、何かが起こった可能性がある。自然に発生したものか、または何者かが故意に起こしたものか。私たちに気づかれず、カナデにしか分からないようなことを。
『一応、調査した方がいいかと』
『そうだな、その方がいいだろう。今は何も感じないとはいえ、何かが起こってからでは遅いからな。明日早朝から、第三部隊に調査をさせよう。お前は通常通り、カナデたちの護衛を』
『はっ!!』
こうして次の日、私は第三部隊に、森の調査をさせたのだが――
その知らせは、昼すぎにもたらされた。私は、すぐに現場へと向かう。そこで見たのは、私の里に暮らす、三体のドラゴン騎士の遺体だった。
『これは一体? トラビス、死因は分かったか?』
『魔法と剣による攻撃かと。しかも、かなりの腕を持っている者の犯行だと思われます。確実に殺しにきている』
『エセルバード様! 隊長!』
『タイレル、どうでしたか? どこかに戦闘の跡は』
『隊長、どこにも、いつも通りの森です。この辺一帯の木々もそうですが、他でも木一本さえ倒れていません』
私は殺されたドラゴン騎士を確認する。傷の感じから、殺されたのは昨日の夜、フィルたちが寝る準備を始めていた頃……そうか、もしかしたらカナデは、これを感じたのかもしれないな。
カナデが嫌な気配を感じたという方角の探索は、トラビスたちの部隊に任せた。しかしそれ以外でも何かあるといけないので、他の場所にも数名ずつ、ドラゴン騎士を向かわせていた。だが、彼らからは、何も異常がないと、すでに報告を受けている。
傷はトラビスの言う通りに、魔法と剣によるもので、どちらかと言うと魔法の傷の方が多いが、一つ一つの攻撃が確実に綺麗につけられている。しかも、森のどこにも余計な被害を出していない。
そうなると、ドラゴン騎士たちは攻撃することさえできずに殺されたことになる。ドラゴンたちが攻撃をしていれば、木が一本も倒れていないはずがない。
つまり、相当な実力者が、ドラゴン騎士を殺したのだろう。
『エセルバード様! こちらにこのようなものが!』
別の遺体の確認作業をしていたタイレルが私を呼んだ。すぐにそちらに行くと、タイレルの手には一枚の布切れがあった。その布切れにはドクロの絵が描いてあり、それと同じものを最近見たことがあった。
カナデたちが魔力を発散するために、初めて魔法を使ったとき、その魔法によって壊滅させられた盗賊たちが使っていたものだ。
『これが遺体の下にありました』
落ちていた場所を確認する。
『これはおかしいですね、色々と』
……そうだ、タイレルの言う通り、どうにもおかしい。これだけで犯人が分かるのであれば、どんなに楽か。あのとき、カナデたちの攻撃から生き残り、さらに私たちの手から逃れ、そしてドラゴン騎士を倒す……そんな者があの盗賊の中にいるとは思えない。
大体、これだけのことができる者が、このような証拠を残していくか?
これはまあ、とりあえず置いたもので間違いないだろう。犯人たちもこんなもので、私たちが騙されるなどと思ってはいないはずだ。少しでも捜査を遅らせるためだろう。
事実、いくら盗賊ではないと分かっていても、ここに布切れが落ちていた以上、調べないわけにはいかない。そちらに少しばかりだが、ドラゴンを送ることになる。
『第三部隊はこのあたり一帯を詳しく調べろ。それと、夜には一度報告に戻れ』
『はっ!!』
私はその後すぐに里へ戻り、他の部隊に指示を出した。また、里のドラゴンたちに警戒するよう、里で一番弱い警報――鐘を鳴らさせた。そして夜は部隊長、副隊長を集めた。
私はここで、カナデを皆に会わせる。今後、何かあったとき、カナデを守るために部隊が動くことがあるかもしれない。すでに皆、カナデについて知っているが、カナデは皆を知らないからな。不安を抱かないように、会わせておく必要があると思ったのだ。
カナデだけが気づいた気配。もしかしたらカナデの存在に気づき、どこかの馬鹿が仕掛けてきたのかもしれない。そうなれば、私たちは全力でカナデを守る。『神の愛し子』を。そしてカナデの大切な家族と友を。
そのためにも今回の事件、早く解決しなければ。
3.里の危険とフィルの寝言
朝、僕――カナデは寝不足で、目をしょぼしょぼさせていました。フィルにどうしたのか聞かれたけど……いや、フィルのせいだからね! まあ、寝言だから仕方ないよね……今度耳栓がないか聞いてみようかな?
朝ご飯を食べた後は、昨日クラウドが言った通り、音を出す石を見に行くことに。アリスターはもちろん知ってるから、僕たちと来ないで、飛ぶ練習しに行きました。僕たちが魔法を頑張ってるから、自分も飛ぶ練習頑張るって。
庭に出てそのまま、まだ行ったことのない方へ向かいます。そう、まだ庭を全部見れてないんです。この前はケサオの花のせいで、途中でお庭見学が中止になったし。それからは色々毎日忙しくて、まだ半分見て回れていません。今日行くのは、僕たちが行ったことのある場所から、もう少し先。大きな縦長の塔みたいなものが立っていて、その中に入ります。
中に入ったら、クラウドが僕たちを抱っこして、一気に塔のてっぺんまで上がります。凄く高い塔なのに、二分くらいでてっぺんに着きました。ここまでとは言わないから、僕も自分の羽で登れるようになるといいな。もちろん、フィルに乗っての移動でもいいし。
塔のてっぺんは、三百六十度外が見えるようになっていて、また中央には、僕の顔よりも大きな石が置いてありました。
『この石を使って、里の住民に危険を知らせます』
鐘の音を鳴らすよりも危険なとき。それは、里のすぐ目の前まで危険が迫っているときです。
数年に一度、魔獣があふれかえって、里を襲ってくるときがあるそうです。最近では二年前。クルクルが聞いたのも、これのようです。そのときは魔獣たちが里を襲うと分かったのが一日前で、かなり大変だったみたいです。
でも、ドラゴンみんなで相手をしたら、無事に魔獣たちの大暴走は解決しました。クルクルは大満足って言ってたけど、危険だったんだからね?
『そして、その石と同じものがこれです』
大きな石を見ていたら、クラウドがポケットから、小さい石を取り出しました。今からこの小さな石に魔力を流すそうです。そうすると、音が鳴るみたい。どうして小さい石でやるのか? それは、これくらいの石じゃないと、音が大きすぎて近くにいたら耳が壊れるんだとか。
『いいですか、では鳴らします』
クラウドが魔力を流すと、石が赤色に光ります。そして……
ぶおぉぉぉ~って、結構大きな音が鳴りました。
うん、考えていたよりもぜんぜん大きな音でした。小さい石でこれだけ大きな音が鳴るんじゃ、こっちの大きな石だったら、どれだけ大きいんだろうね。
しばらくして音が止まり、僕は耳から手を離します。フィルもクルクルも『あ~、うるさかった』って。
『いいですか? これが、里に危険が迫っているときの音です。そのときは、魔力量の多いドラゴンがこの石を鳴らすことになっています。音が聞こえるのは里と、里から十分くらい出たところまででしょうか』
そんなところまで音が聞こえるんだ。やっぱり大きな音だね。里というけど、僕からしたら里じゃないもん。言いすぎかもしれないけど、国だもんね。
『この音を聞いたら、避難する者はすぐに避難、里を守る者は、すぐに準備をします。すぐ避難をするというのは、里を守る者たちの邪魔にならないように、というのも考えなくてはいけません。邪魔をして準備が遅れたら、取り返しのつかないことになる可能性もあります。皆が怪我をするかもしれないということです』
そうだよね、すぐそこに迫った危機だもんね。もし、『まだ大丈夫だよ』と思って遅れて避難したせいで、戦うドラゴンたちに迷惑をかけたら、里が被害を受けるかも。二年前だったら、魔獣がドラゴンの里に入って、ドラゴンたちが怪我しちゃうとか。最悪の場合は……
『ですので、私とともにいるときにこの音を聞いたら、屋敷の敷地外にいたなら、すぐに屋敷へ避難を。いえ、どこにいても私はいつもおそばにおりますが。昨日は静かについてきてくださった。それが正しい行動です。いいですね』
「あい! しじゅかに、ひにゃん!」
『すぐににげるなの!』
『早くのときは、クルクル転がるのもいい? ボクは転がるの速い』
いやいや、確かにクルクルは転がるのが速いけど、避難のときはクラウドに任せようね。
『ありがとうございます。それと、クルクル。あなたも私と避難を』
ほら、やっぱりそう言われたでしょう?
音の話が終わったら塔をおりて、アリスターの練習が終わるのを待つことにしました。待ってる間に僕たちも練習って思ったものの、変に今からやったら、逆にアリスターを待たせることになるかもしれないからね。
それで、玄関前で遊ぶことにします。遊びはじめてから少しして、ドラゴン二匹が大きな箱を抱えてやってきて、それを玄関の前に『ドシンッ! ドシンッ!!』とおろします。気になった僕たちが、中を見てもいいか聞いたら、問題ないとのことでした。
だから、クラウドに抱っこしてもらって、箱の中を覗きました。だって、僕の背の三倍はある箱なんだもん。普通に見えるわけありません。
箱の中には、とっても綺麗な石? 岩の塊? がたくさん入っていました。キラキラ、ピカピカ、発光しているものも、ダイヤモンドみたいなものもあります。
「きりぇねえ」
『ボクたちがすきなやつなの!』
『ボクの宝物にも似てる』
「くりゃうど、こりぇ、にゃに?」
『これは武器や防具の材料です。他にも家具や調理器具にも使います。それにしても、今回は多いな』
『今回は、少し遠くの洞窟に行ってきたんです』
『最近見つけた洞窟で、他の洞窟は石を育てている最中なんで』
クラウドの言葉に、二匹のドラゴンが答えます。
それにしても、石を育てるとは、どういうこと? それに、こんな綺麗な石が取れる洞窟があるの?
「どくちゅ、ありゅ?」
『はい。アリアナ、カナデ様方は、まだあちらには?』
『ええ、まだ。なかなか時間が合わず、ゆっくり里をご案内すると、かなりの時間がかかるので。少しずつご案内することにしていたのです。なにしろ、庭もまだですから』
『そういえば、塔も初めてだと言っていたな。そうか』
クラウドは何かを考えはじめました。そこへ、セバスチャンが通りかかり、クラウドは彼と少し話したあと、僕たちのところに戻ってきます。
「おはなち、おわり?」
『ねえねえ、このいし、いまからどうするなの?』
『これから旦那様に石を確認してもらって、その後はそれぞれ石を分けて、色々な場所へ持っていくんだ』
『石を道具に変えてくれるお店や工場に持っていくんだよ』
ドラゴンたちが説明してくれました。どんな道具になるのかな。光ってる石で作ったら綺麗な道具ができそう。
そして、すぐにエセルバードさんが来て、ドラゴンの姿で石をチェックします。これだけ大きな箱の中の石を調べるから、人型だとなかなか終わらないよね。
エセルバードさんが箱の中を調べていると、石以外のものも出てきました。
綺麗に切り揃えられた木材に、ツル、それから何かの骨みたいなもの。全部素材になりそうで、みんな同じ洞窟から取ってきたみたいです。こんなものも洞窟にはあるんだね。
ちなみに今回の洞窟は、他の里のドラゴンとも共有していて、素材を一つの里が多く取りすぎないように、取っていい量が決まっているとのことです。もちろん、その里だけが使っていい洞窟もあります。いい素材が取れる大きな洞窟は、ほとんど共有らしいです。
確認が終わると、ドラゴンたちは素材を箱に戻して、またどこかへ行ってしまいました。そしてクラウドはエセルバードさんとお話ししています。僕たちは練習が終わったアリスターと合流して、お昼ご飯まで玄関前で遊ぶことにしました。
今日のお昼は、久しぶりにエセルバードさんも一緒です。エセルバードさんは一番偉いドラゴンだから、やらないといけない仕事がいっぱいで、このごろは一緒にご飯が食べられませんでした。そんなエセルバードさんが言います。
『カナデ、フィル、クルクル、話があるんだが』
「おはなち?」
『なぁになの?』
『クルクル回るお話?』
『いや、クルクル回らないが、そうだな楽しい話だ』
楽しい話、なんだろう?
『さっき洞窟から素材を持ってきていただろう? そういう洞窟には年齢制限があってな。人間の歳でいうと十五歳までは入れないことになっているんだ』
洞窟にはいっぱい素材があって、定期的にそれを取りに行きます。でも洞窟の中には、強い魔獣もいっぱいいます。だから、年齢制限があるそうです。特に、今日ドラゴンたちが行っていた洞窟には。
なぜかは分からないけど、いい素材や、珍しい素材がたくさん取れる洞窟には、強い魔獣が多くいて、他の魔獣や人間、獣人たちの侵入をはばんでくるんだとか。
でも、どこでも取れるような素材がある洞窟には、大人や実力のあるドラゴンとなら、十五歳未満でも入ってもいいみたい。とはいえ、洞窟の前には入場を確認するドラゴンたちがそれぞれの里から来ていて、ちゃんと年齢をチェックしているから、ごまかしはききません。
本当は今日、あの箱の中を見て、洞窟に行ってみたいなあって思っていたんだけど、この様子だと僕たちは行けなそうです。強い魔獣とも遭いたくないし。強くてもエセルバードさんたちみたいに、優しい魔獣だったらいいのに。
エセルバードさんは僕たちが行きたいって言うと思って、先に話してくれたのかも。う~ん、残念。なんて思っていたら、急にエセルバードさんが真剣な表情から、ニッコリ笑顔になります。
『小さな子供でも入れる、特別な洞窟があるんだが。どうだ? 行ってみたいか?』
なんですと!! そんな洞窟があるの!? 僕は思わず前に身を乗り出してしまいました。
フィルとクルクルは、どこまで話が分かっているかは分からないけれど、『洞窟!! 遊ぶ!!』って、ジャンプしたりクルクル回ったり。クルクルは、まるでブレイクダンスの動きです。
「ぼく、いきちゃ!」
『ボクもなの! どうくついくなの!!』
『キラキラ、ピカピカ、宝物増える!!』
『はは、聞くまでもなかったか。じゃあ、明日にでも行ってくるといい。時期的に今は空いているから、ゆっくり中を見られるだろう』
え? そんなすぐに行っていいの? それに空いてるって? 洞窟にも混む混まないってあるの? そういえば、さっきのドラゴンは、他の洞窟は石を育てている最中だって言ってた。
「しゅいちぇりゅ?」
『ああ、それはな――』
洞窟で採れる素材には種類があります。もちろん石とかツルとか他にも色々。僕は素材を取ったら、それで終わりだと思っていたんだけど。素材の中には時間が経つと、また出てくるものがあるんだそうです。
例えば、ある石を取っても一ヶ月くらいすると、同じ場所にそれが復活するんだとか。どうやって復活するかは分かっていません。その復活を見た人の話を聞いたところ、その場にぽんっと現れたらしいです。
他にも、最初は小さい石として現れて、だんだんとそれが大きくなって、元の大きさになるものもあるとか。
だからドラゴンたちは、洞窟の何かが、復活させられるものは復活させ、そして育てているんじゃないか、と考えているみたいです。それであの『育てている最中』って言葉だったんだね。
そして、素材が育つのに時期があるようです、今がその時期。だから今の洞窟には、あんまり素材がないんだとか。ということは、素材を取りにくるドラゴンも少なくて、洞窟は空いています。
ちなみに、素材がいっぱいのときは、子供連れのドラゴン家族で大混雑だって。ゴールデンウィークとか夏休みの日本みたい。お父さんたちが、あ~疲れた、早く帰ってゆっくりしたいとか、次はもっと空いているところに行こうとか、他の時期に行こうとか、そんなことを言ってそう。
ただ、まったく素材がないわけじゃないから、初めての僕たちにはゆっくり見ることができていいだろうということです。うん、初めてはゆっくり見たいよね。
『それに、小さな子供が入れる洞窟だからな。準備するものもほとんどない。バケツやスコップ……そうだな、砂遊びの道具を持っていけば十分だ』
あら、そんな子供用の道具でいいんだね。
『道具は僕のを持っていけばいいよ。僕、三つ持ってるの。お家で遊ぶ用と、庭用、それからお外用。だから、みんなで使えるよ』
「ありしゅた、ありがちょ!」
『よし、決まりだな。明日は洞窟だ』
と、待って待って。洞窟ってどの辺にあるの? 里から遠い? それとも結構近く?
「えちょ、どくちゅ どこ?」
『すぐ近くだぞ。里の中にあるからな』
え? 里の中に洞窟があるの? 外じゃなくて? 確かにドラゴンの里は大きくて、あの公園遊園地もあるけど、洞窟まで?
『公園と真逆の方角にあるんだ。まだカナデたちが行っていない方だな』
そうか、なら知らないよね。ほわあ、まさか里の中にあるなんて。これなら本当に朝からゆっくり、洞窟探索ができるよ。
「どくちゅいく!」
『あした、あそびいくなの!!』
『宝物探す!!』
『僕も久しぶり、楽しみ!!』
ドラゴンたちが素材を持ってきてくれてよかった。それを見たクラウドが、エセルバードさんに洞窟の話をしてくれたそうです。クラウドもありがとう!!
わあ、明日楽しみだなあ。どんなものがあるのかな? フィルたちが喜ぶキラキラ、ピカピカがあるといいなあ。それから、人の顔とか動物の姿とか、星とかさ、形が面白い石とか。洞窟の中なら、壁とか、岩とかにぶつかって削れて、面白い形の石になってるかもしれません。
あとは、まだ見たことがない植物なんかも見たいです。ただ、ごき……ううん、あんまり好きじゃない虫が出てきたら嫌だな……
いずれにしても、明日の洞窟探索、楽しみ!!
それからほぼ普段と同じ時間に夜のご飯です。ただ、食べたのは僕たちだけです。エセルバードさんとアビアンナさんがいないのは初めてでした。でも人数が少なくても、その分みんなでお話ししながら食べたから、楽しかったし、美味しいご飯でした。
食後、リラックスルームでゴロゴロしていると、僕、フィル、クルクルを、ストライドが呼びに来て、そのまま初めての部屋に行きました。会議室だって。
中に入れば、相変わらずの大きな部屋に、大きな大きな丸いテーブルがあります。
テーブルについていたり、その周囲に立っていたりするドラゴンとたぶん人型ドラゴンたちが、一斉に僕たちを見てきたので、思わずフィルの後ろに隠れてしまいました。
座っているのは、エセルバードさんと隣にアビアンナさん。それから右から順番に、人型ドラゴンが二人、ドラゴンが二匹。その近くに立っているのが、やっぱり二人の人型ドラゴンに、ドラゴンが二匹です。
ストライドが僕たちを、アビアンナさんの隣に連れていき、僕たち専用の椅子に座らせてくれました。クルクルはフィルの頭の上です。
そして、エセルバードさんが口を開きました。
『カナデ、ビックリしたと思うが、ちょうど皆集まっているから、カナデたちを紹介しようと思ってな。ここにいるのは、この里を守るドラゴン騎士部隊の隊長と、副隊長だ』
隊長と副隊長、なんかカッコいいね。そんな凄い人たちが集まってるの? 今までちょっとビクビクしていたんだけど、すぐにそれが収まりました。
この里には五つのドラゴン騎士部隊があって、第一部隊はエセルバードさんが率いているそうです。それから、第二部隊隊長のリゴベルトさんに、副隊長のジェッドさん。二人は人型です。第三部隊隊長のトラビスさんに、副隊長のタイレルさん。二人も人型でした。
残りのドラゴンたちが、第四部隊隊長ヘクタールさんと、副隊長のホリスさん。最後は第五部隊隊長アンジェリナさんと、副隊長のトレーシーさんです。
僕たちはきちんと挨拶しました。
『よろしくな!』
『本当にまだ幼いのですね』
『がはははは! 本当に集まっているんだな。まさかこんな一度に、色々と集まるとは』
『あらあ、可愛いわねえ。持って帰りたいわ』
なんて返されながら、僕は全体を見て、確かに部屋は広くないといけないなあって思いました。大きいドラゴンが四匹もいると、大きな部屋なのに普通に見えます。もし全員がドラゴンだったら?
挨拶が終わると、アリスターと会ったときのこととか、ドラゴンの里には慣れたかとか、そんな話をして、それが終わったらすぐに部屋を出ました。出るときはクラウドも一緒です。
もう寝る時間でした。でも、僕たちの部屋に戻る前にアリスターの部屋に寄って、おやすみなさいをします。アリスターは起きていてくれました。
それで、自分のベッドに入ろうとしたところ、クラウドに止められました。
『すみません。寝る前にお話があります。今日の鐘のことです』
ああ、そうか。だからみんなバタバタしてたんだもんね。あれはなんだったの?
今日鳴った鐘の音は、ドラゴンの里、または周辺で、ちょっとした問題が起きて、すぐに里に影響を与えないけど、それでも気をつけてほしいときに鳴るものだそうです。
鐘が鳴ったら、用事のないドラゴンは家に帰って、仕事があるドラゴンはその仕事を終わらせたら、すぐに家に帰るって決まりです。
そうか。だから、子供ドラゴンがいたあのドラゴン家族も、その他のドラゴンたちも、ささっと遊ぶのをやめて帰ったんだね。
「もんじゃい、あちゃ?」
『ええ、ですがちょっとした問題ですよ。ただ、もしこれからまたこういうことがあったら、私の言う通りにしてください。それは、カナデ様たちを守るためですので』
「あい!」
『うんなの!!』
『ねえねえ、他にも音、あるでしょう?』
クルクルがそう言いました。え? そうなの?
「べちゅのおちょ、ありゅ?」
『うん、ボク前に聞いたよ。一回だけ』
『クルクル、それは二年前の、石の音か?』
クラウドが尋ねます。
『う~ん、二年? たぶん? でもずっと前だよ。それでその音の後、魔獣が里の周りに、いっぱい転がってた。だからボク、いっぱいご飯食べられて大満足!!』
え? それも何か危険を知らせる音だったんじゃ? 魔獣がいっぱい転がってたのって、魔獣が里を襲ったんじゃないの? 大満足……
『やはりそうか。そうだ、確かに危険を知らせる音は、もう一つ、石を使ったものがあります。それは里に危険が迫っているときに鳴らされます。鐘よりも大きな音が鳴るのですよ。それは――』
『ふす~、ぷす~』
大事な部分をクラウドが話そうとしたとき、隣からそんな音が聞こえました。見たら、隣に座っているフィルが、完全に寝ています。しかも、ピシッとした姿勢で。ずいぶん器用に寝るよね……
「ふぃりゅ、おきちぇ? おはなち、しゃいちゅよ?」
『う~ん、まほう、ば~んなの!!』
ば~んって言葉に、ビクッとする僕。でも、その後もフィルはまたぷすぷす言って寝続けます。今の寝言? かなりはっきりした寝言なんだけど。しかも『まほう、ば~ん』って。
『ふへへ、アリスターパパ、あたまぼ~んなの。ふへへへへ。ぷす~、ぷす~』
……え? あたまぼ~ん? どんな夢なの!?
『あ~、今日はもう終わりにしましょう。明日、今の話の続きを。それと、音を聞いてもらった方が分かりやすいでしょうから、その石もお見せします』
というわけで、みんなでベッドに入って、お休みなさい。クラウドがフィルをベッドに寝かせてくれました。でもその後何回か、『ば~ん!』とか『ぼ~ん!!』とか、あげくのはてには――
『おちたなの!! あっ、おかしのプールなの! ……ちがった、やさいだったなの、プールだったなの』
極めつけは――
『ボクのぬいぐるみ、やさいにおそわれてるなの!? たすけるなの! たあー!! なのぉ!』
本当にどんな夢を見てるの!? しかも『たあー!!』のときに、フィルは僕の顔をグイグイ押してきました。僕はほっぺをすりすりされたせいで、フィルの夢が気になって、ぐっすり眠れませんでした。クルクルはすぐに寝てました。よくあれで寝られるよね。
*
私――エセルバードにクラウドがそのことを知らせに来たのは、前日の夜、カナデたちが眠りについた頃だった。カナデたちには他にも数人、護衛をつけてあるから大丈夫だろうと思うが、クラウドが自分から護衛対象から離れるとは意外だった。
彼は、カナデがおかしな様子を見せたと、伝えに来たのだ。部屋に入る途中で、突然立ち止まったカナデ。詳しく話を聞けば、里の外に、何か嫌な気配を感じたらしい、と。
ただ、そのときには、嫌な気配はもう消えていたという。そこで、部屋に入ると、アリアナにカナデたちを任せ、私のところへ来たそうだ。
『カナデ様は「神の愛し子」様です。私には分かりませんでしたが、カナデ様だから、何かの変化に気づいたのではと思います』
確かに、たとえほんの数秒でも、何かが起こった可能性がある。自然に発生したものか、または何者かが故意に起こしたものか。私たちに気づかれず、カナデにしか分からないようなことを。
『一応、調査した方がいいかと』
『そうだな、その方がいいだろう。今は何も感じないとはいえ、何かが起こってからでは遅いからな。明日早朝から、第三部隊に調査をさせよう。お前は通常通り、カナデたちの護衛を』
『はっ!!』
こうして次の日、私は第三部隊に、森の調査をさせたのだが――
その知らせは、昼すぎにもたらされた。私は、すぐに現場へと向かう。そこで見たのは、私の里に暮らす、三体のドラゴン騎士の遺体だった。
『これは一体? トラビス、死因は分かったか?』
『魔法と剣による攻撃かと。しかも、かなりの腕を持っている者の犯行だと思われます。確実に殺しにきている』
『エセルバード様! 隊長!』
『タイレル、どうでしたか? どこかに戦闘の跡は』
『隊長、どこにも、いつも通りの森です。この辺一帯の木々もそうですが、他でも木一本さえ倒れていません』
私は殺されたドラゴン騎士を確認する。傷の感じから、殺されたのは昨日の夜、フィルたちが寝る準備を始めていた頃……そうか、もしかしたらカナデは、これを感じたのかもしれないな。
カナデが嫌な気配を感じたという方角の探索は、トラビスたちの部隊に任せた。しかしそれ以外でも何かあるといけないので、他の場所にも数名ずつ、ドラゴン騎士を向かわせていた。だが、彼らからは、何も異常がないと、すでに報告を受けている。
傷はトラビスの言う通りに、魔法と剣によるもので、どちらかと言うと魔法の傷の方が多いが、一つ一つの攻撃が確実に綺麗につけられている。しかも、森のどこにも余計な被害を出していない。
そうなると、ドラゴン騎士たちは攻撃することさえできずに殺されたことになる。ドラゴンたちが攻撃をしていれば、木が一本も倒れていないはずがない。
つまり、相当な実力者が、ドラゴン騎士を殺したのだろう。
『エセルバード様! こちらにこのようなものが!』
別の遺体の確認作業をしていたタイレルが私を呼んだ。すぐにそちらに行くと、タイレルの手には一枚の布切れがあった。その布切れにはドクロの絵が描いてあり、それと同じものを最近見たことがあった。
カナデたちが魔力を発散するために、初めて魔法を使ったとき、その魔法によって壊滅させられた盗賊たちが使っていたものだ。
『これが遺体の下にありました』
落ちていた場所を確認する。
『これはおかしいですね、色々と』
……そうだ、タイレルの言う通り、どうにもおかしい。これだけで犯人が分かるのであれば、どんなに楽か。あのとき、カナデたちの攻撃から生き残り、さらに私たちの手から逃れ、そしてドラゴン騎士を倒す……そんな者があの盗賊の中にいるとは思えない。
大体、これだけのことができる者が、このような証拠を残していくか?
これはまあ、とりあえず置いたもので間違いないだろう。犯人たちもこんなもので、私たちが騙されるなどと思ってはいないはずだ。少しでも捜査を遅らせるためだろう。
事実、いくら盗賊ではないと分かっていても、ここに布切れが落ちていた以上、調べないわけにはいかない。そちらに少しばかりだが、ドラゴンを送ることになる。
『第三部隊はこのあたり一帯を詳しく調べろ。それと、夜には一度報告に戻れ』
『はっ!!』
私はその後すぐに里へ戻り、他の部隊に指示を出した。また、里のドラゴンたちに警戒するよう、里で一番弱い警報――鐘を鳴らさせた。そして夜は部隊長、副隊長を集めた。
私はここで、カナデを皆に会わせる。今後、何かあったとき、カナデを守るために部隊が動くことがあるかもしれない。すでに皆、カナデについて知っているが、カナデは皆を知らないからな。不安を抱かないように、会わせておく必要があると思ったのだ。
カナデだけが気づいた気配。もしかしたらカナデの存在に気づき、どこかの馬鹿が仕掛けてきたのかもしれない。そうなれば、私たちは全力でカナデを守る。『神の愛し子』を。そしてカナデの大切な家族と友を。
そのためにも今回の事件、早く解決しなければ。
3.里の危険とフィルの寝言
朝、僕――カナデは寝不足で、目をしょぼしょぼさせていました。フィルにどうしたのか聞かれたけど……いや、フィルのせいだからね! まあ、寝言だから仕方ないよね……今度耳栓がないか聞いてみようかな?
朝ご飯を食べた後は、昨日クラウドが言った通り、音を出す石を見に行くことに。アリスターはもちろん知ってるから、僕たちと来ないで、飛ぶ練習しに行きました。僕たちが魔法を頑張ってるから、自分も飛ぶ練習頑張るって。
庭に出てそのまま、まだ行ったことのない方へ向かいます。そう、まだ庭を全部見れてないんです。この前はケサオの花のせいで、途中でお庭見学が中止になったし。それからは色々毎日忙しくて、まだ半分見て回れていません。今日行くのは、僕たちが行ったことのある場所から、もう少し先。大きな縦長の塔みたいなものが立っていて、その中に入ります。
中に入ったら、クラウドが僕たちを抱っこして、一気に塔のてっぺんまで上がります。凄く高い塔なのに、二分くらいでてっぺんに着きました。ここまでとは言わないから、僕も自分の羽で登れるようになるといいな。もちろん、フィルに乗っての移動でもいいし。
塔のてっぺんは、三百六十度外が見えるようになっていて、また中央には、僕の顔よりも大きな石が置いてありました。
『この石を使って、里の住民に危険を知らせます』
鐘の音を鳴らすよりも危険なとき。それは、里のすぐ目の前まで危険が迫っているときです。
数年に一度、魔獣があふれかえって、里を襲ってくるときがあるそうです。最近では二年前。クルクルが聞いたのも、これのようです。そのときは魔獣たちが里を襲うと分かったのが一日前で、かなり大変だったみたいです。
でも、ドラゴンみんなで相手をしたら、無事に魔獣たちの大暴走は解決しました。クルクルは大満足って言ってたけど、危険だったんだからね?
『そして、その石と同じものがこれです』
大きな石を見ていたら、クラウドがポケットから、小さい石を取り出しました。今からこの小さな石に魔力を流すそうです。そうすると、音が鳴るみたい。どうして小さい石でやるのか? それは、これくらいの石じゃないと、音が大きすぎて近くにいたら耳が壊れるんだとか。
『いいですか、では鳴らします』
クラウドが魔力を流すと、石が赤色に光ります。そして……
ぶおぉぉぉ~って、結構大きな音が鳴りました。
うん、考えていたよりもぜんぜん大きな音でした。小さい石でこれだけ大きな音が鳴るんじゃ、こっちの大きな石だったら、どれだけ大きいんだろうね。
しばらくして音が止まり、僕は耳から手を離します。フィルもクルクルも『あ~、うるさかった』って。
『いいですか? これが、里に危険が迫っているときの音です。そのときは、魔力量の多いドラゴンがこの石を鳴らすことになっています。音が聞こえるのは里と、里から十分くらい出たところまででしょうか』
そんなところまで音が聞こえるんだ。やっぱり大きな音だね。里というけど、僕からしたら里じゃないもん。言いすぎかもしれないけど、国だもんね。
『この音を聞いたら、避難する者はすぐに避難、里を守る者は、すぐに準備をします。すぐ避難をするというのは、里を守る者たちの邪魔にならないように、というのも考えなくてはいけません。邪魔をして準備が遅れたら、取り返しのつかないことになる可能性もあります。皆が怪我をするかもしれないということです』
そうだよね、すぐそこに迫った危機だもんね。もし、『まだ大丈夫だよ』と思って遅れて避難したせいで、戦うドラゴンたちに迷惑をかけたら、里が被害を受けるかも。二年前だったら、魔獣がドラゴンの里に入って、ドラゴンたちが怪我しちゃうとか。最悪の場合は……
『ですので、私とともにいるときにこの音を聞いたら、屋敷の敷地外にいたなら、すぐに屋敷へ避難を。いえ、どこにいても私はいつもおそばにおりますが。昨日は静かについてきてくださった。それが正しい行動です。いいですね』
「あい! しじゅかに、ひにゃん!」
『すぐににげるなの!』
『早くのときは、クルクル転がるのもいい? ボクは転がるの速い』
いやいや、確かにクルクルは転がるのが速いけど、避難のときはクラウドに任せようね。
『ありがとうございます。それと、クルクル。あなたも私と避難を』
ほら、やっぱりそう言われたでしょう?
音の話が終わったら塔をおりて、アリスターの練習が終わるのを待つことにしました。待ってる間に僕たちも練習って思ったものの、変に今からやったら、逆にアリスターを待たせることになるかもしれないからね。
それで、玄関前で遊ぶことにします。遊びはじめてから少しして、ドラゴン二匹が大きな箱を抱えてやってきて、それを玄関の前に『ドシンッ! ドシンッ!!』とおろします。気になった僕たちが、中を見てもいいか聞いたら、問題ないとのことでした。
だから、クラウドに抱っこしてもらって、箱の中を覗きました。だって、僕の背の三倍はある箱なんだもん。普通に見えるわけありません。
箱の中には、とっても綺麗な石? 岩の塊? がたくさん入っていました。キラキラ、ピカピカ、発光しているものも、ダイヤモンドみたいなものもあります。
「きりぇねえ」
『ボクたちがすきなやつなの!』
『ボクの宝物にも似てる』
「くりゃうど、こりぇ、にゃに?」
『これは武器や防具の材料です。他にも家具や調理器具にも使います。それにしても、今回は多いな』
『今回は、少し遠くの洞窟に行ってきたんです』
『最近見つけた洞窟で、他の洞窟は石を育てている最中なんで』
クラウドの言葉に、二匹のドラゴンが答えます。
それにしても、石を育てるとは、どういうこと? それに、こんな綺麗な石が取れる洞窟があるの?
「どくちゅ、ありゅ?」
『はい。アリアナ、カナデ様方は、まだあちらには?』
『ええ、まだ。なかなか時間が合わず、ゆっくり里をご案内すると、かなりの時間がかかるので。少しずつご案内することにしていたのです。なにしろ、庭もまだですから』
『そういえば、塔も初めてだと言っていたな。そうか』
クラウドは何かを考えはじめました。そこへ、セバスチャンが通りかかり、クラウドは彼と少し話したあと、僕たちのところに戻ってきます。
「おはなち、おわり?」
『ねえねえ、このいし、いまからどうするなの?』
『これから旦那様に石を確認してもらって、その後はそれぞれ石を分けて、色々な場所へ持っていくんだ』
『石を道具に変えてくれるお店や工場に持っていくんだよ』
ドラゴンたちが説明してくれました。どんな道具になるのかな。光ってる石で作ったら綺麗な道具ができそう。
そして、すぐにエセルバードさんが来て、ドラゴンの姿で石をチェックします。これだけ大きな箱の中の石を調べるから、人型だとなかなか終わらないよね。
エセルバードさんが箱の中を調べていると、石以外のものも出てきました。
綺麗に切り揃えられた木材に、ツル、それから何かの骨みたいなもの。全部素材になりそうで、みんな同じ洞窟から取ってきたみたいです。こんなものも洞窟にはあるんだね。
ちなみに今回の洞窟は、他の里のドラゴンとも共有していて、素材を一つの里が多く取りすぎないように、取っていい量が決まっているとのことです。もちろん、その里だけが使っていい洞窟もあります。いい素材が取れる大きな洞窟は、ほとんど共有らしいです。
確認が終わると、ドラゴンたちは素材を箱に戻して、またどこかへ行ってしまいました。そしてクラウドはエセルバードさんとお話ししています。僕たちは練習が終わったアリスターと合流して、お昼ご飯まで玄関前で遊ぶことにしました。
今日のお昼は、久しぶりにエセルバードさんも一緒です。エセルバードさんは一番偉いドラゴンだから、やらないといけない仕事がいっぱいで、このごろは一緒にご飯が食べられませんでした。そんなエセルバードさんが言います。
『カナデ、フィル、クルクル、話があるんだが』
「おはなち?」
『なぁになの?』
『クルクル回るお話?』
『いや、クルクル回らないが、そうだな楽しい話だ』
楽しい話、なんだろう?
『さっき洞窟から素材を持ってきていただろう? そういう洞窟には年齢制限があってな。人間の歳でいうと十五歳までは入れないことになっているんだ』
洞窟にはいっぱい素材があって、定期的にそれを取りに行きます。でも洞窟の中には、強い魔獣もいっぱいいます。だから、年齢制限があるそうです。特に、今日ドラゴンたちが行っていた洞窟には。
なぜかは分からないけど、いい素材や、珍しい素材がたくさん取れる洞窟には、強い魔獣が多くいて、他の魔獣や人間、獣人たちの侵入をはばんでくるんだとか。
でも、どこでも取れるような素材がある洞窟には、大人や実力のあるドラゴンとなら、十五歳未満でも入ってもいいみたい。とはいえ、洞窟の前には入場を確認するドラゴンたちがそれぞれの里から来ていて、ちゃんと年齢をチェックしているから、ごまかしはききません。
本当は今日、あの箱の中を見て、洞窟に行ってみたいなあって思っていたんだけど、この様子だと僕たちは行けなそうです。強い魔獣とも遭いたくないし。強くてもエセルバードさんたちみたいに、優しい魔獣だったらいいのに。
エセルバードさんは僕たちが行きたいって言うと思って、先に話してくれたのかも。う~ん、残念。なんて思っていたら、急にエセルバードさんが真剣な表情から、ニッコリ笑顔になります。
『小さな子供でも入れる、特別な洞窟があるんだが。どうだ? 行ってみたいか?』
なんですと!! そんな洞窟があるの!? 僕は思わず前に身を乗り出してしまいました。
フィルとクルクルは、どこまで話が分かっているかは分からないけれど、『洞窟!! 遊ぶ!!』って、ジャンプしたりクルクル回ったり。クルクルは、まるでブレイクダンスの動きです。
「ぼく、いきちゃ!」
『ボクもなの! どうくついくなの!!』
『キラキラ、ピカピカ、宝物増える!!』
『はは、聞くまでもなかったか。じゃあ、明日にでも行ってくるといい。時期的に今は空いているから、ゆっくり中を見られるだろう』
え? そんなすぐに行っていいの? それに空いてるって? 洞窟にも混む混まないってあるの? そういえば、さっきのドラゴンは、他の洞窟は石を育てている最中だって言ってた。
「しゅいちぇりゅ?」
『ああ、それはな――』
洞窟で採れる素材には種類があります。もちろん石とかツルとか他にも色々。僕は素材を取ったら、それで終わりだと思っていたんだけど。素材の中には時間が経つと、また出てくるものがあるんだそうです。
例えば、ある石を取っても一ヶ月くらいすると、同じ場所にそれが復活するんだとか。どうやって復活するかは分かっていません。その復活を見た人の話を聞いたところ、その場にぽんっと現れたらしいです。
他にも、最初は小さい石として現れて、だんだんとそれが大きくなって、元の大きさになるものもあるとか。
だからドラゴンたちは、洞窟の何かが、復活させられるものは復活させ、そして育てているんじゃないか、と考えているみたいです。それであの『育てている最中』って言葉だったんだね。
そして、素材が育つのに時期があるようです、今がその時期。だから今の洞窟には、あんまり素材がないんだとか。ということは、素材を取りにくるドラゴンも少なくて、洞窟は空いています。
ちなみに、素材がいっぱいのときは、子供連れのドラゴン家族で大混雑だって。ゴールデンウィークとか夏休みの日本みたい。お父さんたちが、あ~疲れた、早く帰ってゆっくりしたいとか、次はもっと空いているところに行こうとか、他の時期に行こうとか、そんなことを言ってそう。
ただ、まったく素材がないわけじゃないから、初めての僕たちにはゆっくり見ることができていいだろうということです。うん、初めてはゆっくり見たいよね。
『それに、小さな子供が入れる洞窟だからな。準備するものもほとんどない。バケツやスコップ……そうだな、砂遊びの道具を持っていけば十分だ』
あら、そんな子供用の道具でいいんだね。
『道具は僕のを持っていけばいいよ。僕、三つ持ってるの。お家で遊ぶ用と、庭用、それからお外用。だから、みんなで使えるよ』
「ありしゅた、ありがちょ!」
『よし、決まりだな。明日は洞窟だ』
と、待って待って。洞窟ってどの辺にあるの? 里から遠い? それとも結構近く?
「えちょ、どくちゅ どこ?」
『すぐ近くだぞ。里の中にあるからな』
え? 里の中に洞窟があるの? 外じゃなくて? 確かにドラゴンの里は大きくて、あの公園遊園地もあるけど、洞窟まで?
『公園と真逆の方角にあるんだ。まだカナデたちが行っていない方だな』
そうか、なら知らないよね。ほわあ、まさか里の中にあるなんて。これなら本当に朝からゆっくり、洞窟探索ができるよ。
「どくちゅいく!」
『あした、あそびいくなの!!』
『宝物探す!!』
『僕も久しぶり、楽しみ!!』
ドラゴンたちが素材を持ってきてくれてよかった。それを見たクラウドが、エセルバードさんに洞窟の話をしてくれたそうです。クラウドもありがとう!!
わあ、明日楽しみだなあ。どんなものがあるのかな? フィルたちが喜ぶキラキラ、ピカピカがあるといいなあ。それから、人の顔とか動物の姿とか、星とかさ、形が面白い石とか。洞窟の中なら、壁とか、岩とかにぶつかって削れて、面白い形の石になってるかもしれません。
あとは、まだ見たことがない植物なんかも見たいです。ただ、ごき……ううん、あんまり好きじゃない虫が出てきたら嫌だな……
いずれにしても、明日の洞窟探索、楽しみ!!
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