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2巻
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しおりを挟む1.クラウドさんとの生活とフィルの羽?
中学生の僕――望月奏は、子犬を助けようとして一緒に車に轢かれ命を落としました。でも、神様の力で異世界に生まれ変わることになります。その子犬――フィルと名付けました――はフェンリルに、僕は……なぜか二歳児になって新しい世界へ、挙句、神様は僕たちを間違えた場所に転移させてしまいました。どうすればいいのか分からなくて困ったけれど、寂しくはありません。なぜなら、僕とフィルは家族になったからです。
そんな僕たちの前に、ドラゴンの子供のアリスターが現れます。彼と友達になった僕たちは、彼の住むドラゴンの里でお世話になることになりました。
それから、僕が『神の愛し子』であることが判明したり、ホフティーバードのクルクルがお友達になったりと、楽しく毎日を過ごしています――
ドラゴンのクラウドが僕たちの護衛をしてくれることになってから二日。初めて会った日は、僕たちと遊んで少しは緊張がほぐれたと思ったのに、遊ぶのが終わったら、またピシッとした態度になっていました。
もう少し力を抜かないと疲れちゃうよ?
ずっと僕たちの警護ということは、ずっと仕事ってことで。それだとピシッが続いちゃうから……う~ん、何かいい方法はないかな? 後で考えなくちゃ。
ちなみに、クラウドと呼び捨てにしているのは、クラウド自身に言われたからです。しかも、ちょうどタイミングがいいからと、筆頭執事のセバスチャンさん、メイド長のマーゴさん、執事のストライドさんにメイドのアリアナさんからも、〝さん〟はいらないと言われました。
気は進まなかったんだけど、さんづけだと示しがつかないから、とアリスターのお父さんで、この里を治めるエセルバードさんに言われました。そこは、身分とかその人の職業とか、色々と関係するみたいで……
そして今日は、朝から魔法の練習です。この前の羽魔法の確認をします。
『羽! カナデが出せなくても、僕がお手伝いするからね!』
アリスターが言ってくれました。
「ありがちょ!」
『フィルも魔力溜めるの頑張って!!』
『うんなの!! がんばるなの! フィルも、はねでないかななの』
僕は、すぐに魔力を溜めることができました。最初は溜める魔力の量が少なくなったり多くなったりしたけど、それも二、三回やれば一定にできるようになります。これに関しては、お医者さんでエセルバードさんの友人のグッドフォローさんが、もう少しでずっと一定にできるようになるだろうって言ってくれました。
溜めた魔力が一定になったら、次は羽です。羽もすぐに出すことができました。ただ、羽を見たクラウドは、いつも無表情なのに、一瞬だけ驚いた顔になりました。
なお、ドラゴンは人の姿にもなれますが、今のクラウドはドラゴンの姿です。初めて会ったときは黒いドラゴンだと思ったけれど、それは首からお腹にかけてだけで、全体を見ると素敵なシルバードラゴンでした。
『グッドフォロー様、カナデ様のこの魔法は?』
『ああ、君は見るのは初めてだったね。この羽魔法は今のところ、カナデだけが使える魔法なんだよ。僕も初めて見たときは驚いた』
『カナデ様だけが……』
『ああ、それでね……』
『できたなの!!』
声を上げたフィルを見たら、僕よりも小さい土の羽が、背中についていました。おお!! やったフィル!!
『あ~、この世界で二人だけができる魔法になったね。エセルバードに伝えないと』
『は?』
『ああ~、きえちゃったなの』
フィルの羽がスッと消えました。羽の魔法は初めてだからかな? でも、すぐにまた魔法を始めます。フィルが頑張ってるんだから、僕も頑張らなくちゃ!
僕も羽を出すところまではできました。さあ、次は羽をパタパタ動かして、今度こそ爪の先よりも高く飛ぼう!
羽をパタパタ、羽をパタパタ。少ししてクルクルが、羽がパタパタしたって教えてくれました。鏡で確認したら、前回みたいにちゃんと羽が動いています。よし、あとは!
すぐに足元を見ます。そして、アリスターとクルクルが確認をしてくれました。
『う~ん、カナデ、僕の爪先だよ』
『ボクの足は余裕で入るよ』
それは、クルクルの足が小さいからだよ。もう少しだけでいいから上に!! さらに飛ぶことを考えますが、そのあと何回やっても、爪の先よりも上に飛べませんでした。
『カナデ、そんなに焦らなくていいんだよ。カナデたちは魔法の練習を始めたばかりなんだから。魔力を溜められるだけだって凄いんだ。まあ、羽が出せること自体おかしいんだけどね』
グッドフォローさんがニヤニヤしながら、僕の羽を見てきます。なんかね、グッドフォローさん、僕の羽を研究したいらしくて、さっきから凄い勢いでノートに何か書いてるんだ。その目と仕草が……下手したら不審者だよ。
「どちて、とばにゃいにょかにゃ?」
『やっぱり羽が小さいからかな?』
僕の疑問に、アリスターが言います。
『ボクは小さいけど飛べる』
それはクルクルが鳥だし、体が小さいからだよ。やっぱり、すぐにはできないのかな? そうだよね、こういうのはたくさん練習が必要なはずだもんね。
『前みたいに、ボクがお尻を持ちあげる?』
う~ん、変な格好になっちゃうけど、クルクルが手伝ってくれたら、僕だけよりも飛べるよね。やっぱりお願いしようかな? それで飛べたら、今度は前に進む練習をする、できるのかな? 右左は?
『ほらカナデ、また色々考えてるんじゃない? いいかい、一つずつ、一つずつだよ』
グッドフォローさんが、注意してくれます。そうだよね、一つずつだよね。うん、とりあえず一人でやってみて、それでダメならクルクルに手伝ってもらおう。まずは高く飛ぶ練習から。進むのはまたその後。と、練習を再開しようとしたとき――
『あらあ、またきえちゃったなの』
フィルの声がして、それに続いてアリスターが『あっ!!』と叫びました。
『カナデとクルクルが一緒に飛んでる格好、カナデがフィルに乗ってるときのに似てるよ!!』
ん? なんのこと?
『カナデ、ちょっとフィルに乗ってみて』
アリスターにそう言われて、僕がフィルによじ登ろうとしたら、クラウドが手伝ってくれました。大丈夫だよ、僕、フィルには、ススッと乗れるようになったから。
『カナデ、僕たちは見慣れているけど、クラウドにはまだ、君がずり落ちそうに見えるんだよ』
そうなの、アリスター? でも、本当に乗るの上手くなったんだよ。まあ、かっこいい乗り方じゃないけど。それでも、手伝ってくれてありがとう!
クラウドにお礼を言って、いつも通りの姿勢をとります。そうしたら、鏡を見てみてって、アリスターに言われました。
僕は相変わらずハイハイの姿勢で、フィルの背中にピタッとくっついていました。それから、ギュッとフィルの毛を握ります。フィル大丈夫? 痛くない?
「いちゅもどり、ふぃりゅ、いちゃにゃい?」
『だいじょぶなの!』
『ほら、やっぱり同じだよ。その格好、クルクルが手伝ってくれたときとそっくり。ねえ、体が浮くならさ、それを利用すれば、楽にフィルに乗れるんじゃないかな?』
そうか! それなら、僕が毛をギュッと握って、フィルが痛い思いをすることもなくなるかも。あと、自由に飛べるようになれば、もっとかっこいい姿勢でフィルに乗れるようになるかも。
うんうん、やってみよう!! 僕はすぐに羽を出します。それから爪先分だけ浮きました。クルクルがそれを確認して、僕のお尻を持ち上げて飛んでくれます。
準備が終わったら、次はフィルが僕の下に入ってきます。僕はまだ前に進めないからね。そして、フィルはそのまま立ち上がります。僕たちの浮いてる高さは、フィルの背中の高さにピッタリでした。
僕もしっかり乗った感覚がありつつも、力を入れないで乗れています。そのおかげで、手にも力が入らず、そっとフィルの首に添える感じになりました。
「のれちゃ!! ぴっちゃり!」
『ちゃんと乗れてる? ボクの浮いてる高さ、これで大丈夫?』
『わあ、なんか、のそのそ、しゅん、ピタッてかんじなの!!』
のそのそ、しゅん? ピタッ? それはどういう感じなの? フィルの動作を表してるの? と、それよりも。
「ふぃりゅ、いちゃにゃい?」
『うんなの! さっきもいたくなかったなの、でもいまは、もっといたくないなの!』
……やっぱり痛かったんじゃん。もう、ちゃんと言ってよね。僕はフィルに痛い思いさせたくないんだから。でも……
「カナデ、これなら少しの間だけだけど、フィルに乗れるね。階段を上れるかも!」
そうだよ階段!! 早速やってみよう! と思って階段まで行こうとしたんだけど、僕の羽が消えて前のめりになってしまいました。クルクルがお尻を上げてくれてたからね。
そのせいで変に体重がかかっちゃって、フィルがおととととって、フラフラ歩いちゃって、最後はぺちゃって、前足と後ろ足を伸ばした伏せの姿勢になりました。
「ふぃりゅ、ごめにぇ」
『ボクだけだとお尻しか上がらない』
『ははは、階段はもう少し後でかな。まずは長く羽を出す練習と、長く今の状態でフィルに乗っていられるかを確認しないとね』
グッドフォローさんが言いました。そして、クラウドが黙ってじっと僕を見ていることに気づいたようです。
『どうしたんだい、クラウド?』
『飛べるものなのですか? 格好はその、あれですが、「神の愛し子」様だからですか?』
『まあ、それも関係はしてると思うけど、何度か調べさせてもらったが、今のカナデは普通の人の子だよ。まあ、強い魔力に、かなりの魔力量、そして全属性を持っているけれどね』
『その話を聞く限り、やはり今の状況は……』
『ただね、今のカナデは自分のことが全く分かっていないし、ここに来るまでは、魔法のことも、他のことも、何も知らない、まだ何も習っていないその辺にいる人間の子供と、変わりがなかった。いや、もっと知らないかもね。それと、体も体力も他の子と変わりない』
『それは確かに』
『成長すれば、僕たちなんて手も足も出なくなるだろうけど、今は本当に小さな子供だよ。だからね、僕は考えたんだ。あの独特の魔法は、カナデ特有の魔法なんじゃないかって。「神の愛し子」とか関係なく、カナデだからできた魔法だってね』
『それはどういう……』
『まあ、まだ僕も色々考えてる最中だからね。今はただ飛べるって思っておけばいいよ』
『はあ?』
『いやあ、調べがいがあるよね』
グッドフォローさんが笑っています。
よし、今日は羽を長く出す練習をしよう。フィルも一緒にね。羽を出すことができたフィルは大喜びでした。
ちなみに、最初に出たフィルの羽が土だったのは、フィルが最初に使った魔法が土の魔法をちょっと変えた、泥魔法だったからかもって。
グッドフォローさんたちが、僕のときみたいにフィルの羽を確認したところ、僕と一緒で、今できる全部の属性の羽ができました。
『う~ん、はねだから、つちよりべつのがいいなの』
だから、好きな羽を思い浮かべて練習してみるそうです。そうか、僕もやってみようかな。色々な羽が出せた方が楽しそう。でも今日は、しっかり羽を長い時間出す練習だよ。
これでなんとか、フィルに乗る問題と、移動問題は解決できそうです。
*
「そっちはどうだ?」
「大丈夫だ。誰にも気づかれてはいない」
「よし、じゃあそろそろ戻るぞ。時間がかかりすぎてしまった。もしかすると、移動用の魔法陣が消えてしまっているかもしれない。そうなれば……さらに報告が遅れれば、俺たちがどうなるか」
「俺だって分かってるさ。だが死体はどうする? 下手に残しておけばやつらが」
「そんな時間はない。俺たちだという証拠を残さなければいいだけだ。あの力は使っていないだろうな?」
「ああ、もちろん」
「ならば、そのままにしておくのが一番だ。それに、ここには最近まで盗賊たちがいたからな。そいつらの生き残りがやったとでも思わせておけ」
「ドラゴンたちに見つからずに、隠れてこれをやったと? ちょっと無理がある気がするが」
「まあ、すぐに気づくだろうが、俺たちのことがバレなければどうでもいいさ。さあ、行くぞ」
2.不穏な空気
『――まさか、フィルまで羽が出せるようになるとは。しかも、違う羽も出せるように練習を始めたなんて』
『まだできてないけどね』
『当たり前だ、そう簡単にできてたまるか!』
『羽はすぐ出せたじゃないか』
僕――カナデたちは夜のご飯が終わって、リラックスルームでごろごろしたり、遊んだりしていました。すると、そんなエセルバードさんとグッドフォローさんの会話が廊下から聞こえて、通りすぎていきます。アビアンナさんに『聞こえるわよ』と、エセルバードさんが怒られました。
うん、バッチリ聞こえたよ。別に、コソコソ話さなくてもいいのに。だって、もしも僕がエセルバードさんだったら、やっぱり同じことを言ってると思うし。
それはともかく、今は明日の予定を立てています。午前中はお店通りで遊んで、その後あの大きな公園に行きます。
お小遣いももらったから、お店通りと公園で半分ずつ使おうって決めました。何が食べたいとか、あれが欲しいとか、みんなやっと外に出られるからワクワクです。遠足前の気分と同じかな。
クルクルは楽しみすぎて、ずっとリラックスルームにつけてもらった止まり木で、グルグル回転しています。ご飯を食べたばっかりだから、あんまり回ると気持ち悪くなって吐いちゃうよ?
「あちた、たにょちみ!」
『ボクもなの! いっぱいあそぶなの!』
『ボクも! クルクルはクルクルでいっぱい遊ぶんだよ! クルクル~!』
『あの大きなウォータースライダーもやろうね』
そうやって色々予定を考えていたら、もう寝る時間になりました。みんなで寝る準備を始めます。そして、アリスターにおやすみをして、自分の部屋へ入ろうとしたとき、僕は足を止めました。
『カナデ様、どうされましたか?』
アリアナさんに聞かれたんだけど……ちょっと待ってね。今ちょっと……
『どうした?』
『カナデ様が止まられてしまって』
『どうされましたか、カナデ様』
クラウドがしゃがんで、僕と目を合わせます。先に部屋に入ったフィルとクルクルも、心配して戻ってきてくれました。
『カナデ様、何かあったなら、どんなことでもいいのでおっしゃってください』
『そうですよ、カナデ様。私はカナデ様のメイドなんですから! なんでもおっしゃってください! 小腹が空きましたか? 果物でも持ってきましょうか? 歯はまた磨けばいいのです!』
ふふ、アリアナありがとう。うん。心配かけるなら言った方がいいよね。気のせいだとは思うんだけど……
「えちょ、むこにょほ、にゃんかだめ」
僕は廊下の奧を指さします。
『廊下の奥ですか?』
「ううん、もっちょむこ、えちょね、しゃとのしょと、もっちょむこ」
『里の外で合っていますか?』
「うん」
『それは今も感じますか?』
「ううん、いまはちにゃい。しゃき、ちょちにぇ。いまはもにゃい」
『そうですか……』
「ちょまっちぇ、ごめんしゃい、も、にぇりゅ」
『待ってくださいカナデ様! すぐに戻りますから!』
アリアナはどこかに行き、その間に僕たちは部屋の中へ入りました。そしてアリアナが戻ってきたら、今度はクラウドが出ていきます。アリアナはさっき話していた通り、果物を持ってきてくれました。嫌な感じがしたまま、寝るのはダメって言います。
ありがとう、アリアナ。彼女が持ってきてくれた果物は、ブドウに似たものと、みかんに似たものでした。でも味は、ブドウがさくらんぼで、みかんが桃でした。
最初食べたときは味とのギャップに、ちょっとビックリしました。でも食べている間に慣れて、美味しく完食できました。
それから、食べている間にアビアンナさんが来て、心配だから僕たちが寝るまで部屋にいてくれることになりました。心配かけてごめんなさい。でも、本当に少しだけ、嫌な感じがしたんです。
なんて言えばいいのかな? こう体が受けつけないっていうか、ドロドロしてるっていうか。それから嫌な感じがした場所は、嫌な空気がまとうっていうのかな。本当に嫌な感じでした。でも、ほんの十秒くらいで、何もなかったみたいに消えたんです。だから、思わずその場で立ち止まってしまいました。
『さあ、クリーン魔法をかけるわね。このまま寝たら、虫歯になっちゃうわ。クルクルはクチバシを綺麗にしましょうね』
歯ブラシはなし。今日は遊び用の家で寝ることにして、アビアンナさんに絵本を読んでもらってたら、いつの間にか眠っていました。
朝起きて一応、昨日変な感じがした方を確認してみたんだけど、まったく問題なし。最初は気にしてたものの、今日遊びに行く話をしているうちに忘れていました。
*
「ひょおぉぉぉ~!!」
『わお~んなのぉ!!』
『ぴゅろろろろ~!!』
『クルクル、これでいい!?』
予定通りお店通りで遊んだ後、僕たちは午後から公園遊園地に行きました。そして今、あのウォータースライダーで遊んでいます。もちろん、人型用の方のね。
今日一緒に滑ってくれたのはクラウドです。人型のクラウド、とってもカッコいいんです。アイドルみたい。それに、護衛の前はドラゴン騎士だったせいか、今も仕事の時間以外はトレーニングをしているらしくて、体ががっしり、筋肉がいい具合についています。
人型のクラウドを見た瞬間、僕もフィルもクルクルもカッコいいを連発してしまいました。アリスターは知ってたから、カッコいいの連発はなかったけど、『そうでしょう、そうでしょう』って、なぜか胸を張っていました。
アリスターじゃなくて、クラウドがカッコいいんだからね? 今アリスターが変身できても、人型だと五歳くらいなんでしょう? きっとカッコいいよりも可愛いだよ。うん、可愛い。フィルたちと一緒。
『可愛いのはカナデ様も一緒なんですけどね』
ん? アリアナ、今何か言った?
それで、そんなカッコいいクラウドと一緒に滑ったウォータースライダーは、この前と同じく、とっても楽しかったです。二回目だからか、周りを見る余裕もあったしね。
フィルは新しい滑り方をあみ出していました。シャチホコみたいな格好で滑ったり、でんぐり返しで転がりながら滑って……というか、転がっていったり。
クルクルは、一回目はアリスターの膝に乗せてもらって、二匹で回転しながら滑っていきました。あとはフィルみたいに、自分から転がっていったよ。まさか下りた勢いのまま、水面を転がるとは思わなかったけど。見ていたドラゴンたちが拍手していました。
人型用のウォータースライダーの後は、もちろんドラゴン用のウォータースライダーに行って、波の出るプールで遊びます。一回クルクルが波に飲まれちゃって大変でした。
すぐにクラウドが助けてくれたけど、助けてもらった後、クルクルは彼の頭の上で、波に向かって蹴りを入れてました。小さい足の蹴りだったので、とっても可愛かったです。
それからちょっと休憩してから、クルクルが乗りたがっていた、メリーゴーランドに乗りました。クルクルはずっと目がキラキラ、顔はニコニコで、嬉しいなあ、楽しいなあって言っていました。そして、順番にみんなの頭を移動、最後は僕の頭の上で、可愛い声で歌をうたっていました。
クルクルは途中でちょっとだけ泣いていました。今までずっと一匹だったからね。友達ができて、みんなと遊べて嬉しいって。僕は膝の上に降りてきたクルクルをそっと撫でてあげます。そうだよね、一匹は寂しいよね。ボクもフィルと家族になれて、とっても嬉しかったし。
家族……あっ!! そうか、そうだよ。もう少しクルクルとの生活に慣れたら、クルクルに聞いてみよう!
メリーゴーランドが終わったら、やっぱりクルクルが乗りたがっていたコーヒーカップに移動します。
「うにょおぉぉぉ~」
『おもしろいなのぉ!!』
『クルクルいっぱい!!』
『もっと回すよ!! それぇ!!』
ま、周りが見えない!? 体が飛ぶ!? 今日はアリスターが、コーヒーカップを回転させるためのハンドルを持ちました。
すると、アリスターは思いっきりハンドルを回したんです。なんとか体が飛ばされないように、一生懸命クラウドにしがみつきます。
でもコーヒーカップから降りたら、完全に目が回っていました。
ベンチに移動して、僕が落ち着くのを待っていると、アリアナがアイスを買ってきてくれます。これで少しは頭がスッキリするかも。
『アリスター様、フィル様もクルクル様も、あまり無理をしてはダメですよ。カナデ様と乗るときは、もう少し優しくです!』
『回しすぎてごめんね、次は気をつけるね』
『うんなの。カナデ、ごめんなさいなの』
『ごめんなさい』
うん、わざとじゃないのは分かってるよ、だから大丈夫。でも、やりすぎは気をつけてね。
アイスはバニラ味でした。他にも色々な味があるけど、バニラ味が基本なんだって。アイスがあるってことは、ソフトクリームもあるのかな? かき氷は? 今度聞いてみよう。
美味しいアイスを食べて、頭もスッキリ、ふらつきもなくなりました。帰るまでもう少しだけ時間があったから、最後になんで遊ぶか相談します。そのときでした。
カンカンカンッ!!
背後から大きな鐘の音が聞こえて、思わず振り向くと、里の門の方に赤い花火みたいなものが浮かびました。
そして、クラウドが僕とフィルを抱き上げて、アリアナさんがアリスターと手を繋ぎます。クルクルはクラウドに言われて、僕が抱っこしました。
『何かあったのかな?』
『アリスター様、鐘の音だけなので、すぐそこまで迫った危険ではないでしょう。ですが、カナデ様、フィル様、クルクル様、今日はこのまま屋敷へ帰ります』
『ボク、これ知ってる。ちょっと注意してって音だよね』
「クルクル、ちょ? ちゅ?」
『カナデ様、屋敷に戻ってからお話を。アリアナ、行くぞ』
『はい!』
公園遊園地から帰るのは、僕たちだけじゃありませんでした。他のドラゴンたちもすぐに遊ぶのをやめて、みんなが帰りはじめます。帰らないドラゴンたちもいたけど、それは公園を管理しているドラゴンです。
『パパ、帰るの? まだ遊べるよ』
『鐘が鳴ったからな。これからパパはちょっと用事ができちゃったんだ。少し早いが今日はもう帰ろう。また今度遊びに連れてきてやるからな。そうだ、帰りに飴を買ってやろう。今日はそれで我慢してくれ』
『うん!!』
そんな会話が聞こえてきます。みんな帰っているけど、だからといって、そこまで慌てている感じもありません。
こうして僕たちはお屋敷に帰ることになりました。一体何が起きたんだろう?
*
お屋敷に帰ってきたら、いつもより周りがざわついている気がします。ドラゴンや人型ドラゴンたちがいつもより多いしね。ただ門番さんはいつも通り、ニッコリ笑って『お帰りなさい』と言ってくれました。
玄関ホールに着くと、階段の上からエセルバードさんの声がします。相変わらずの高さの階段で、その上からなのに、すぐそばで呼ばれたくらい、大きな声でした。
「こえ、おきにぇ」
『とう様の声は、本気を出すともっと大きいんだよ。お家から里の門くらいまで聞こえるの。でも、それをすると喉が痛くなるからやらないって』
え? そんなに? 凄いね。僕なんてこの前、部屋の端っこでアリアナを呼んだら、ぜんぜん気づいてもらえなかったのに。まあ、大きな大きな部屋だけどさ。それでかなり近くまで――部屋の半分くらいかな――そこまで移動して呼んでも気づいてもらえませんでした。でも、たまたまそのときくしゃみをしたら――
『カナデ様、部屋が寒いですか?』
僕の声よりもくしゃみの方が聞こえるって……
それはともかく、クラウドがエセルバードさんに呼ばれ、交代で別の人型ドラゴン騎士さんが来てくれて、僕たちはリラックスルームへ行きました。
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<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

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神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
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これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)
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