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1巻
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「危ない‼」
なんて中学生の僕――望月奏の言葉が分かるわけもなく、狭い道の真ん中に座り込んでいる子犬。そこに、車が猛スピードで迫ってきます。
ドンッ‼
次の瞬間、とっさに子犬を抱えた僕は、体にかなりの衝撃と、息ができないほどの痛みを感じました。抱えた子犬をなんとか見ようとするけど、頭を動かすことはできなくて……どうにか目で確認すれば、ぐったりしている子犬の姿がチラッと見えました。そして、すぐに意識が遠のく感覚が強くなっていきます。
僕はいいんだ。別に僕がいなくなっても、悲しむ人はいないし。保護者と言われている人たちはいるけれど、彼らにとって僕はただの邪魔者でしかないし、本当の家族じゃないから。
でも子犬は……もしかしたら、子犬の家族が探しているかも。子犬のことを大切に思ってくれている家族がいるかも。それだったら、なんとか無事に帰ってもらいたいんだけどな。
そんなことを思いながら、僕は目を閉じました。
*
「ん?」
僕は目を開けました。一瞬何が起こっているのか分からなくて、キョロキョロと周りを確認します。だって、今までに見たことのない光景が広がっていたから。今、僕は何もないただの白い空間にいました。
あれ? さっきまでどうしていたっけ? 確か学校の帰りに、すぐに家に帰りたくなくて、いつもとは別の道を通って帰ってたんだよね。それで、道の真ん中でうずくまっている子犬を見つけて。危ないなと思って、子犬を道の真ん中から動かそうと考えていたら……
そうだ‼ スピードを出した車が‼ 僕は子犬を庇って、車に轢かれたはず。そして、子犬をしっかり確認することもできずに意識が……
でも……ここは? 病院……なわけないよね。ここは何もないただの白い空間。一体僕はどこにいるの? 轢かれてからどうなったの? 子犬は?
自分が車に轢かれたことまでは思い出したけど、次から次に疑問が湧いてきます。そのとき、ちょっと離れた場所で声が聞こえました。
「望月奏」
僕は声がした方を見ます。そこには今の白い空間よりも、さらに白く、そして輝いている玉が浮いていました。
な、何? なんで白い玉から声が? 僕は警戒しながら、白い玉から少しだけ距離を取ります。だって絶対におかしいし。
『おかしくはないぞ』
「⁉」
なんで僕の考えたことを⁉
『まあ、お主が警戒するのは当たり前じゃが、怪しい者ではない。それに、わしがお主の考えていることが分かるのも、不思議ではない』
僕の考えていることが分かる⁉ 一体どういうこと⁉ 大体白い玉は何なんだろう? 危険なものなんじゃ? 勝手に人の考えていることを当ててくるし、僕の名前知ってたし。
なんて、また色々考えてると、そのときまた声がしました。
『神様‼ いきなり現れて自分のことは何も話さずに、考えていることを言い当てたら、誰だって驚きます‼ 大体、勝手に人の考えていることを読むなんて、何をしているんですか‼』
今度は女の人の声とともに、白い玉の横に、ポンと黄色く輝く玉が現れます。
そして、その黄色い玉が白い玉に体当たりを始めました。
……今、神様って言った? 僕の聞き間違いじゃない? 白い玉が神様?
僕はさらに頭の中が混乱しました。その間も、黄色い玉の白い玉に対する攻撃は続きます。
『い、痛いじゃろう‼』
『痛いじゃろう、ではありません! 普段だったらまだしも、今回は神様のせいでこんな状況になっているんですよ‼ そこへ来て勝手に考えを読んで、彼を警戒、混乱させるなんて‼』
『そ、それはすまん。つい、いつもの調子でのう。これからは気をつける』
『そう言って、何回失敗すれば気が済むんですか‼』
僕の名前を知っていた白い玉。そしてその白い玉を叱る黄色い玉。なんか僕のこと忘れてない? う~ん、危険か危険じゃないか、あんまり話しかけたくはないけど……でも、今の状況も全然分からないし、ここはあの玉たちに、話を聞いた方がいいのかな? それに、さっきの神様って言葉も気になるし。
仕方なく、僕は玉に声をかけてみることにしました。
「あ、あの」
『今回のこともこれからのことも、色々話すことはあるんです。なのにまったく!』
『じゃから、すまんかったと……』
喧嘩してるせいで、僕の声が聞こえてない? 僕はさらに大きな声で話しかけます。
「あの‼」
『何⁉』
『すまんかった‼』
二つの玉がこちらを向いた気がしたので、僕はビクッとしてしまいます。そして、白い空間は静まり返りました。
「あ、あの……」
『あ、あらごめんなさい。大きな声を出しちゃって』
『まったくじゃ。お主が大きな声を出すから、完璧に警戒しておるではないか』
『何を言っているんです‼ それは神様の……と、危ない危ない。またこのバカ神のせいで、話が進まなくなるところだった』
バカ神。今バカ神って言ったよね⁉ え? 白い玉はやっぱり神様? ……いや、本当にそうなのかな? そもそも、僕の知っている神様と違うかもしれないし。
『お主の知っている神で、あっているぞい』
「⁉」
『……いい加減に』
『し、しもうた‼ す、すまんすまん‼』
『考えを読むなと言っているでしょう‼』
思いっきり黄色い玉がぶつかり、向こうへ吹っ飛ぶ白い玉。これが僕の、新しい生活の始まりになるなんて、このときは思ってもいませんでした……
*
『望月奏、本当にすまんかった! この通りじゃ』
『本当にごめんなさい。このダメ神のせいで‼』
白い玉だった神様が、人の姿――お爺さんの姿に変わって、僕の前で土下座をしています。
その隣では、神様の部下らしき、黄色い玉から変わった綺麗な女の人が、一緒に土下座した後すぐに立ち上がり、どこからか出したピコピコハンマーみたいなもので神様のお尻を叩いていました。
『いたっ! 今謝っとる最中じゃろうが!』
『全然足りないくらいです‼』
「あ、あの! 分かりましたから、とりあえずこれからの話を聞かせてください‼」
僕の言葉にハッとして、女の人はすぐに正座に戻りました。一方、神様はお尻をさすりながら、姿勢を正します。今までも、神様が脱線する度に女の人が怒って、何度も話が止まっていました。いい加減話を進めて、これからのことを決めたいのに。
うん、結論から言うと、白い輝く玉は、本当に神様でした。どうして神様と分かったか? う~ん、僕も神様に会うのは初めてだし、神様って証拠を見せてもらったわけじゃないけど。
でも、話を聞くうちに、そして色々なものを見せられているうちに、自然と本当に神様なんだって分かったような、そう感じるようになったんだよね。
そして、神様や部下の女の人から聞いたのは、僕が本当は死ぬはずじゃなかったのに、神様の手違いにより死んでしまったってこと。
まず僕があの子犬を助けたとき、本当はあの道を通るはずじゃなかったんだって。別の男の人があの子犬を助けようとして、亡くなる予定だったみたい。
でも、何かの影響で僕があの道を通っちゃったらしい。それに気づくのが遅れた神様は、僕を助けようとしたんだけど……今度は、僕を止めるために使う力を間違えてしまいました。それで慌ててさらに力を間違えて……そんなことをしているうちに僕は……っていうのが真相なんだとか。
神様が力の使い方を間違うってどうなのかな? だって神様なんだよ。なんでも分かって、なんでもできちゃうのが、神様のはずなのに。
でもねこの神様、女の人が言うには、どうにもおっちょこちょいの神様みたいで。今まで僕のように、死んでしまう人はいなかったけど、危なかった人は何人もいるって。いつもいつも女の人が、落ち着いてしっかり力を使いなさいって怒ってるらしい。
それから、こういったことが起こらないように、しっかりと世界を見なさいとも。今回神様が気づくのが遅れたのはおやつを食べていたからだそうです。
もちろん本来なら神様はそういうときでも、しっかりと色んなことを感じ取れるはずなのに……お菓子に夢中になりすぎだよ。
……こう、本当に神様なのって感じはしても、やっぱりお爺さんは神様で、そして僕は自分が死んだことを納得できました。
「それで、これからのことなんだけど。僕はどっちを選んでもいいんだよね、この子と一緒に」
『ええ、もちろんよ。その子もあなたと離れたくないみたいだし、どちらを選んでも必ず一緒に行けるようにするわ』
話によると、神様は僕を死なせてしまったお詫びに、新しい世界へ行くか、このまま自然に生まれ変わるまで神様の世界でゆっくり過ごすか、選ばせてくれるみたいです。
もちろん、すぐに新しい世界へ行くのならば、今の記憶はそのままに、色々必要なものを持った状態で運んでくれるとのこと。いきなり知らない場所に行くんだもんね。最低限の物は持っておかないと。
あっ、新しい世界。どこに行くかは行ってからのお楽しみだって。お楽しみ……お詫びなんだから、どこに行くかくらい教えてくれてもいいのにね。
そして、僕が『この子』と呼んだのは……僕が助けようとした子犬のこと。子犬の方は元々の寿命だったみたいで、あのとき僕以外の人が助けようとしても、結局死んでしまっていたんだとか。
本来は生まれ変わるはずだったところ、僕のことを好きになってくれたみたいで、神様や女の人が色々話をしても、僕から全然離れません。だから、このまま僕がどっちを選択したとしても、一緒にいさせてくれることになりました。
僕も、そんなに僕のことを好きになってくれた子犬と別れるのは寂しいし、一緒にいられるのなら、その方がいいに決まってるよね。
う~ん。すぐに新しい世界へ行って生活するか、それとも次の生まれ変わりを待つか。新しい世界、一体どんなところなんだろう? 僕はまだ見たことのない特別な世界だって、さっき説明されたんだけど……
せっかくなら、特別な世界へ行くのもいいかな。どんな生活が待っているかは分からなくても、話を聞いたときから、ワクワクしてるんだよね。僕は子犬を抱き上げて聞いてみることにしました。だって一緒にいるんだから、子犬の気持ちも聞かないとね。
「僕は新しい世界へ行こうと思うんだけど、どうかな?」
「くう~ん……ワンッ‼」
子犬は少し何かを考えるような表情を見せたあと、元気よく吠えました。
『その子も、それでいいって言っているわ』
「そっか‼ よし、それじゃあ決まりだね‼」
「ワンッ‼」
神様と女の人は、子犬の考えもバッチリ分かるからね。そう、神様たちは人の考えていること、思っていること、なんでも分かっちゃいます。
じゃあどうして、最初神様は女に人に怒られたか。それは、勝手に人の心を読むのはいけないことだからです。もちろん神様なので、何か悪の気配を感じたり、よくないものを感じたりするときは、すぐにその人の心や考えていることを読むそうです。僕の場合はそんな嫌な気配はしないはずだし、しかも今ここにいる原因は神様にあるからね。
そんな僕の考えを許可なく、しかもあのときはなんの説明も受けていなかったから、女の人は神様を怒ってくれたんだとか。
『よし、決まりじゃな‼ では、すぐに必要なものを用意する』
そう言うと、神様がパンッと手を叩きました。そして準備はできたって言います。え? それだけ? 手を叩いただけで準備ができちゃうの? さすが神様、すごいね。
『詳しい説明をすると長くなるからの。向こうに着いたら、とりあえずステータスオープンと言っとくれ。そうすれば、お主の能力と、お主が疑問に思っていることへの回答がされるじゃろう』
ん? ステータスオープン? それって、あの小説とかアニメとかでよく見る?
『とと、長く話しすぎたわい。この空間もそろそろ閉じるぞ』
ええ? まだ色々聞きたいことあるんだけど。なんで急にそんなバタバタに?
『神様、十分に時間は取っておいてくださいと、あれほど‼』
『す、すまん。思っていたよりも少なかったわい』
『だからいつもいつも、しっかりしてくださいと。まだ彼は聞きたいことがあるんですよ!』
神様は女の人にピコピコハンマーでお尻を叩かれます。それを見て、へっと笑うような表情を見せる子犬。ダメだよ、そんな顔したら。可愛い顔が台なしだよ。僕は子犬の顔をモミモミ揉みます。
『じゃが、もうこの空間は閉じる‼ 奏、すまんがあとは向こうで確認してくれ。それと、すぐにではないが、お主が向こうの世界に馴染めば馴染むほど、我々との繋がりが強くなり、そのうちまた会うことができるじゃろう。それまでなんとか頑張ってくれ』
なんとか? なんとかって何⁉ なんて話をしているうちに、神様と女の人の姿が歪みはじめました。僕は慌てて子犬を抱きしめます。
どうしてこんなバタバタなの? なんでちゃんと最後まで話ができないんだよ? そう思って神様に文句を言いたかったのに、歪んだ部屋全体が光りはじめて、僕は目を瞑ります。そのとき――
『しもうた! 色々と間違えてしもうた‼』
『なんですって⁉ このバカ神‼ 今度は何をしたんですか‼』
という声が聞こえてきました。神様、本当に今度は何をしたの⁉
*
『いや、色々間違えてしもた』
『どうするんです、あの森は……すぐに見つけてもらえれば大丈夫だとは思いますが……それにカナデの体、あれは完全に幼児じゃありませんか! 送る場所にも送れない、体もそのままにできない。まあ、若返ったことはいいですが。まったく、本当にそれでも神ですか!』
『お主が最後、焦らせるからじゃ』
『せめてステータスだけでも、しっかり見せてあげないと』
『…………』
『……神様、まさか?』
『ぴゅろぉぉぉ~』
『……この、バカ神ぃぃぃ‼』
1.間違いだらけ? 僕と子犬の変化
『ねえ、おきてなの』
「う~ん」
『おきてなの、カナデ』
「うう~ん、にゃあに? だれぇ?」
本当に誰? なんか小さい子が近くにいるみたいだけど。僕は寝てるから静かにしてね。
『ついたなのカナデ。あたらしいせかいちゅいた! あっ、きをつけないと、ことばがあかちゃんになっちゃうなの』
新しい世界?
「⁉」
僕はガバッとうつ伏せの状態から起き上がります。でも、そのまま後ろに倒れそうになって――そのとき、誰かが僕を支えてくれました。どうも、今聞こえていた声の主が支えてくれたみたい。
『カナデ、だいじょぶなの?』
「う、うん、ありがちょ」
ん? 変な感じがしたまま振り返ります。そこにいたのは大きなもふもふで、ふわふわの、とっても可愛い犬でした。他には誰もいません。
『カナデ、すぐついたねえ。ちゃんといっしょ、よかったねなの』
話し続ける白い可愛い犬。いやいやいや、なんで犬が喋ってるの? 僕は思わず犬から離れようとして立ち上がったところ、よろけて再びその場に座ってしまいます。
『カナデ、まだからだなれてない、きをつけるなの。ボクもさいしょフラフラ』
「なりぇてにゃい? ん? ありぇ? しゃべっちぇりゅのはぼく?」
『カナデ、ボクよりもあかちゃんみたい。からだもちいさくなっちゃったなの』
可愛い犬にそう言われて、僕は自分の体を確かめます。すると……
とっても小さい手に、小さい足に、小さな子供が履くような可愛い靴。つまり、小さな体に小さい服を着ている僕……え? 誰? 本当に僕? なんで僕こんなに小さくなってるの?
『かみさま、バイバイのとき、まちがったっていってたなの。だからちいさくなっちゃったのかなあなの』
そうだ‼ 僕は神様とその部下の女の人に会ったんでした。それで、僕が助けようとした子犬と一緒に、新しい世界で生活するって決めて……まだまだ聞きたいことがあったのに、神様が間違えたみたいで、僕たちがいた空間が消えはじめちゃって……
それから最後、聞こえてきた声は……
僕はゆっくりと顔を上げて可愛い犬を見ます。大きさはゴールデンレトリバーと同じくらいかな? 毛はもふもふのふわふわな感じで、抱きしめたらとっても気持ちが良さそうです。
ただ、体は大きいのに、顔つきや表情はまだまだ子供みたい。そしてその顔は……
「こいにゅ?」
『うん! あのねえ、ここにきたら、からだがおおきくなってたなの。それで、カナデはからだがちいさくなってて、きっとかみさまがまちがえたなの。ダメダメなかみさまなのぉ。まちがいいっぱい』
うん、ダメな神様だよね……って、そうじゃなくて。まずは、今の状況から把握しなくちゃ。
大きく深呼吸して気持ちをどうにか落ち着かせ、ゆっくりと周りを見渡します。
たぶん神様のあの言葉――
『しもうた! 色々と間違えてしもうた‼』
あれは、今の体がかなり小さくなっちゃって、言葉も赤ちゃん言葉になっちゃってる僕と、体は大きいけどやっぱり子犬なこの子のことだと思うんだけど……他にもね。
僕たちの周りには今、たくさんの木が生えていて、草や花もいっぱいで、どう見てもここは森か林の中です。確かに、新しい世界に連れていってくれるとは聞いていたものの、絶対にここじゃないと思います。
僕たちのところだけちょっと開けていて、その中央に座っていると、綺麗な小鳥の鳴き声が聞こえてきました。
『ぼくねえ、カナデがねてるとき、まわりみてみたなの。でもずっときばっかりなの』
「しょか……きばっかり、にゃにもない?」
『うん、なにもないなの。あっ、それよりカナデのことば、ボクみたいになれてきたら、もとにもどるかもなの。でも、ボクもときどきまだあかちゃんのことばになりゅ。あっ、またなっちゃったなの』
そうか、子犬の言う通りなら、この言葉遣いはどんどん話したら元に戻るかも。ここは積極的に話した方がいいよね。どのくらいで元に戻るかは分からないけど。
だってどう考えても、この言葉遣いはこの小さな体にあってるから。ただ、もう少しだけでもなめらかに話せたら楽だよね。
さて、子犬が見てくれた感じ、周辺は木ばっかりで何もないなら、僕たちはこれからどうしたらいいんだろう。こんな小さな子供と、体は大きいけどやっぱり子犬の一人と一匹だけで。どのくらいの規模の森か林かは分からなくても、僕たちだけでは絶対に危険だよ。なるべく人のいる場所に行きたいなあ。でもその前に……
確か神様は『着いたらステータスオープン』って言えって話していました。そんな魔法みたいなこと、本当に僕にできるのかな? でも、何をしたらいいか分からないし、とりあえずやってみよう。
そうすれば、どうして子犬と話ができるのかも分かるかもしれません。そもそも、子犬と話せるって普通じゃないよね。僕は子犬と話ができて嬉しいけど。
というか神様、大丈夫かな? 何も起こらなかったら困るなあ。そこも間違ってたなんてことになってたら……
僕が不安そうにしているのに気がついたのか、子犬がそばに座って、心配してくれます。
『カナデ、だいじょうぶ、しんぱいなの?』
「だいじょぶ、かみしゃまいっちゃ。すちぇーちゃしゅおぷん、やっちゃみる」
『そかっ‼ やってみるなの!』
ちゃんと言えてないけど大丈夫かな? 僕は大きく息を吸って――
「すちぇーちゃしゅおぷん‼」
そう言った瞬間、僕の前に薄い青色の透明な画面が現れました。おお‼ 本当に小説やアニメみたいにできました‼ これは神様も失敗してなかったみたいだね。よかったよかった。
『カナデ、なんかでたなの⁉』
「うん、こりぇが、すちぇーちゃしゅみちゃい」
『そか! かみさま、これはまちがえなかったなの!』
「うん、しょだね!」
出てきた透明の画面を覗き込む僕と子犬。
『ねえ、これなになの? ボクぜんぜんわかんないなの』
「うんちょ、こりぇわぁ……」
最初に表示されているのは僕の名前。カタカナでカナデって書いてあって、その次は種族かな。『人間』って書いてあるよ。それから……年齢が二歳になっていました。これ、絶対神様のせいだよね。
その他には、なんか変な文字と記号が並んでいて、ぜんぜん読むことができません。これで何を説明しようっていうのかな? ただ、その分からない文字と記号だらけの中に、少しだけ分かる部分もありました。契約魔獣って表示があって、子犬に名前をつけてあげるように書いてあります。
そっか。いつまでも子犬って呼ぶのはおかしいよね。だって、僕たちはこれから一緒に過ごすんだから。う~ん、僕が考えてもいいけど、子犬は自分で、何か気に入った名前があるかもしれません。よし、早速聞いてみよう。
他にも分かる部分はあるものの、それは後回しにして、まずは大切な名前から。
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