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ズレ
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「別れよう」
そう碧斗に言われた時、またいつものかと軽く流した。
時々碧斗はこういうことを言い出す。
大体俺がなにかやらかした時だ。
そう言われてもおかしくないことを俺はしてきた。
飲みに行っては見知らぬ人と仲良くなり、終電を逃すとノリと勢いで部屋に連れて帰った。
自分の部屋のこともあったが大抵碧斗の部屋だった。
だって俺の碧斗を見せたかったんだ。
みんなには話してないけど、話してないからこそ俺の男だぞ!って自慢したかった。
言えない分、見せつけたかった。
碧斗は俺の自慢の恋人なんだ。
でも碧斗にしたら迷惑でしかなかった。
夜中に知らない人を連れ込まれて朝まで雑魚寝させるなんて怒って当然だ。
何度も怒られた。
今度やったら別れるからな!と何度も言われた。
怒る碧斗を見て悪いことしたと反省するんだけど、怒る碧斗もかわいくてつい手を出しちゃう。
「セックスに持ち込んで誤魔化すな!」ってそれも怒るんだけど、体を合わせるとお互い溺れて気持ちよくて…
そんな碧斗が好きで、ずっと大好きで…
初めて出会った時、互いにサークルの勧誘にうんざりしていたところだった。
「義務かよ…」
いい加減嫌になってたから碧斗の腕を掴んで逃げた。
全然知らない奴だったけど、そんなことにうんざりしているところが似てて面白かった。気が合いそうと思った。
それからつるむようになったが思っていたとおりだった。
とにかく一緒にいて疲れない、楽。
遊んでても何も話さなくても、そばにいるだけで不思議と心が落ち着けた。
海の家のバイトをやった時にマンスリーを借りて二ヶ月くらい一緒に過した。
碧斗とずっと一緒にいたくて、離れたくなくて、碧斗にもそう思っていて欲しくて、最後のバイトの日に想いが溢れた。
碧斗は俺と繋がってくれた。
同じ想いでいてくれたことが本当に嬉しかった。
友達を超えてくれたことが嬉しかった、
碧斗を離したくなかった。
なのに、どこで、どこからズレてしまったのだろう。
あの時の
「別れよう」
は軽く流していいものではなかった。
碧斗はもう二度と俺を受け入れようとはしなかった。
いつものように体を合わせれば元に戻る。
ごめんと謝って一晩経てば許してくれる。
そう思っていたのに、碧斗は俺から本当に離れようとしている。
なんで?
そんなの嫌だ。
なにがいけなかった?どこで間違った?
なにもかもダメで、全て間違えたのか?
原因は一つかもしれないし全部かもしれない。
碧斗を失うのだけは嫌だった。
耐えられない。
飲みに行くのを控えた。
飲みに行っては碧斗の部屋に知らない奴らを連れ込むのがそもそも悪い。
これは自覚がある、だからそこから改めようと思った。今更すぎる。
部屋に行ってもドアを開けてくれない。
合鍵は自分がいない時に他人を連れ込まれるのは絶対に嫌だからとくれなかった。
だから持ってない。
今日はいつもの癖で、ついうっかりといった様子で開けてしまっただけのようだった。
なんとか話したい。
触れたい。
そうすればなんとかなるんじゃないか、
そうすることに縋るしかなかった。
もうどうしていいのかわからなかった。
セックスしか思いつかなかった。
碧斗を悦ばせられれば、気持ちよくさせてあげられれば、戻ってきてくれる、そう思いたかった。
碧斗は気持ちよくなると泣くことがある。
泣かせてしまったと慌てたこともあったが、碧斗は
「生理現象で悲しくないのに涙出てきちゃうだけだから気にすんな」
と照れながら笑っていた。
そんな碧斗が愛おしいと思った。
なのに…
今日の碧斗の涙は違った。
悲しみの涙だった。
どうして泣くの?どうして悲しいの?
俺とのセックスで悲しくならないで、碧斗…
だってこれじゃまるでレイプじゃないか…
その涙を見て別れたいという碧斗が本気だということが嫌でもわかってしまった。
嫌だ、嫌だ…
碧斗を失いたくない。
お願い、やり直させて…
そう碧斗に言われた時、またいつものかと軽く流した。
時々碧斗はこういうことを言い出す。
大体俺がなにかやらかした時だ。
そう言われてもおかしくないことを俺はしてきた。
飲みに行っては見知らぬ人と仲良くなり、終電を逃すとノリと勢いで部屋に連れて帰った。
自分の部屋のこともあったが大抵碧斗の部屋だった。
だって俺の碧斗を見せたかったんだ。
みんなには話してないけど、話してないからこそ俺の男だぞ!って自慢したかった。
言えない分、見せつけたかった。
碧斗は俺の自慢の恋人なんだ。
でも碧斗にしたら迷惑でしかなかった。
夜中に知らない人を連れ込まれて朝まで雑魚寝させるなんて怒って当然だ。
何度も怒られた。
今度やったら別れるからな!と何度も言われた。
怒る碧斗を見て悪いことしたと反省するんだけど、怒る碧斗もかわいくてつい手を出しちゃう。
「セックスに持ち込んで誤魔化すな!」ってそれも怒るんだけど、体を合わせるとお互い溺れて気持ちよくて…
そんな碧斗が好きで、ずっと大好きで…
初めて出会った時、互いにサークルの勧誘にうんざりしていたところだった。
「義務かよ…」
いい加減嫌になってたから碧斗の腕を掴んで逃げた。
全然知らない奴だったけど、そんなことにうんざりしているところが似てて面白かった。気が合いそうと思った。
それからつるむようになったが思っていたとおりだった。
とにかく一緒にいて疲れない、楽。
遊んでても何も話さなくても、そばにいるだけで不思議と心が落ち着けた。
海の家のバイトをやった時にマンスリーを借りて二ヶ月くらい一緒に過した。
碧斗とずっと一緒にいたくて、離れたくなくて、碧斗にもそう思っていて欲しくて、最後のバイトの日に想いが溢れた。
碧斗は俺と繋がってくれた。
同じ想いでいてくれたことが本当に嬉しかった。
友達を超えてくれたことが嬉しかった、
碧斗を離したくなかった。
なのに、どこで、どこからズレてしまったのだろう。
あの時の
「別れよう」
は軽く流していいものではなかった。
碧斗はもう二度と俺を受け入れようとはしなかった。
いつものように体を合わせれば元に戻る。
ごめんと謝って一晩経てば許してくれる。
そう思っていたのに、碧斗は俺から本当に離れようとしている。
なんで?
そんなの嫌だ。
なにがいけなかった?どこで間違った?
なにもかもダメで、全て間違えたのか?
原因は一つかもしれないし全部かもしれない。
碧斗を失うのだけは嫌だった。
耐えられない。
飲みに行くのを控えた。
飲みに行っては碧斗の部屋に知らない奴らを連れ込むのがそもそも悪い。
これは自覚がある、だからそこから改めようと思った。今更すぎる。
部屋に行ってもドアを開けてくれない。
合鍵は自分がいない時に他人を連れ込まれるのは絶対に嫌だからとくれなかった。
だから持ってない。
今日はいつもの癖で、ついうっかりといった様子で開けてしまっただけのようだった。
なんとか話したい。
触れたい。
そうすればなんとかなるんじゃないか、
そうすることに縋るしかなかった。
もうどうしていいのかわからなかった。
セックスしか思いつかなかった。
碧斗を悦ばせられれば、気持ちよくさせてあげられれば、戻ってきてくれる、そう思いたかった。
碧斗は気持ちよくなると泣くことがある。
泣かせてしまったと慌てたこともあったが、碧斗は
「生理現象で悲しくないのに涙出てきちゃうだけだから気にすんな」
と照れながら笑っていた。
そんな碧斗が愛おしいと思った。
なのに…
今日の碧斗の涙は違った。
悲しみの涙だった。
どうして泣くの?どうして悲しいの?
俺とのセックスで悲しくならないで、碧斗…
だってこれじゃまるでレイプじゃないか…
その涙を見て別れたいという碧斗が本気だということが嫌でもわかってしまった。
嫌だ、嫌だ…
碧斗を失いたくない。
お願い、やり直させて…
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