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最終話 鳥籠の伊純
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─監禁当日─
「雪平!」
裸のままで雪平に抱きつく。
「妬いた?」
嬉しくて笑みが溢れる。
「ねえ、これ持って帰ろうよ。
雪平も僕に使ってよ、信じられないくらい興奮するよ」
「…その腑抜けた顔はなんですか!」
雪平の怒りが収まらない。
伊純の腕をぐいっと掴む。
「このクソガキ…いい加減にしろっ!」
とうとう雪平の怒りが爆発する。
ゾクッ
怒ってくれる。
またやらかした僕に怒ってくれる。
雪平だけが怒ってくれる。
ゾクゾクする。
囲われていることに、
自由になれないことに。
嬉しすぎて涙が溢れる。
僕は不自由が好きだ。
縛られているのが好きだ。
そうされると自分の存在を確認できる、
居場所が見える。
ここに居ていいと言われている気がする。
父さんと母さんが用意してくれた、生まれてからずっと居る鳥籠は大きすぎて僕には不自由さを感じない。
なんでも揃って、なんでも手に入る、
一つの国のような巨大な鳥籠。
羽を広げても誰とも触れ合うことはない。
どれだけ羽ばたいても誰もいない。
いるみたいだけど見えないんだ。
僕の周りにはたくさんの人たちがいるけど、みんな僕を透かして見ている。
僕にもみんなが透けて見える。
みんなが見ているのは僕というフィルターを通した父さんや会社なんだ。
僕をそのまま愛してくれる人は、
父さんと母さんしかいないんだ。
父さんと母さんは僕に自由をくれた。
そんなのいらない。
自由は責任を伴うと父さんは言った。
僕はいらない。
もっともっと僕を囲んで、閉じ込めて、
小さな箱に入れていつも眺めて愛でて欲しい。
雪平はいくら羽ばたいても終わりの見えない鳥籠にいる僕の止まり木になってくれた。
雪平という止まり木で羽を休めるととても安心する。
僕は好んでその止まり木を求めた。
雪平に辿り着く前までは恋人と呼べる人もいた。
恋をすると気持ちを縛られる、
それに喜びを得ていた。
心も体もその人のものでいたい。
でも物足りなかった。
何かが足りなかった。
そんな時沖田さんと知り合った。
彼は僕を閉じ込めたいと言った。
胸がときめいた。
この人はわかってくれるかもしれない。
雪平から監禁の恐れがあると警告されたが、それを聞いてワクワクしている自分がいた。
そして沖田さんに監禁、拘束された。
高揚した。
閉じ込められることに、拘束されて自由を奪われることに気持ちが昂った。
沖田さんは僕に危害を加えるようなことは決してしなかった。紳士だった。
監禁して紳士というのもおかしいかもしれないが。
紳士すぎて少し物足りないこともあった。
もっと強引でもいいのにって思った。
キスされた時にもっとして欲しくてつい欲が出た。
早々に舌を絡ませてしまった。
沖田さんはそんな僕に
「慣れてるのは萎える」
と言った。
僕は間違えた。
こうじゃなかった。
沖田さんが求めているのは弱々しい、
壊れそうな僕。
そうか、そっちか。
僕はそっちの方が得意だし好きだ。
そうさせてくれる沖田さんは僕のことをわかってくれているようで嬉しかった。
演じなくても素でいられた。
沖田さんのセックスは優しかった。
監禁、拘束というスパイスが加わってとても刺激的で興奮した。
僕は溺れそうだった。
この状況に、気持ちよさに抗えなかった。
セーフワードの『祥人さん』は雪平と二人で決めた。
「どうして名前なの?」
と聞いたら、
「あなたが彼の名前を呼ぶのは許し難い」
雪平はそう言った。
普段は何も言ってくれないけど、きっと妬いてくれている。
何度も抱かれて意図せず口にしていたセーフワード。
でもどれだけその言葉を口にしても雪平は助けに来なかった。
どうして?
僕を助けに来てくれる雪平を見たいのに。
僕を奪いに来て欲しいのに。
雪平は来てくれた。
助けに来てくれた。
僕を奪いに来てくれた。
「ご無事ですか?」
と言われた時にゾクゾクと興奮した。
どうして今?
あんなにセーフワードを言ったのに。
その時はすぐにわからなかった。
でもわかった。
僕と雪平が決めたセーフワードは『祥人さん』だったけど、雪平のセーフワードがあったんだ。
『好き』
雪平の理性を壊すワード。
僕がそれを言ったから雪平は怒り狂っている。
鳥籠の中の止まり木は僕を癒す。
その手で疲れた羽を優しく撫でる。
いつしかその優しい手によって僕の羽は少しずつもがれていた。
お前はここにいろとでも言うように、
気づかないうちにもがれた羽は、まだ飛べるけど着実に僕の自由を奪う。
自由は責任を伴う。
父さんはそう言ってた。
雪平が責任取ってよ、雪平が悪いんだよ。
奪ったなら今度は与えて。
不自由な愛が僕は欲しい。
だから僕は鳥籠の鍵を内側から閉める。
声が聞こえる。
「君は自由だよ」
「雪平!」
裸のままで雪平に抱きつく。
「妬いた?」
嬉しくて笑みが溢れる。
「ねえ、これ持って帰ろうよ。
雪平も僕に使ってよ、信じられないくらい興奮するよ」
「…その腑抜けた顔はなんですか!」
雪平の怒りが収まらない。
伊純の腕をぐいっと掴む。
「このクソガキ…いい加減にしろっ!」
とうとう雪平の怒りが爆発する。
ゾクッ
怒ってくれる。
またやらかした僕に怒ってくれる。
雪平だけが怒ってくれる。
ゾクゾクする。
囲われていることに、
自由になれないことに。
嬉しすぎて涙が溢れる。
僕は不自由が好きだ。
縛られているのが好きだ。
そうされると自分の存在を確認できる、
居場所が見える。
ここに居ていいと言われている気がする。
父さんと母さんが用意してくれた、生まれてからずっと居る鳥籠は大きすぎて僕には不自由さを感じない。
なんでも揃って、なんでも手に入る、
一つの国のような巨大な鳥籠。
羽を広げても誰とも触れ合うことはない。
どれだけ羽ばたいても誰もいない。
いるみたいだけど見えないんだ。
僕の周りにはたくさんの人たちがいるけど、みんな僕を透かして見ている。
僕にもみんなが透けて見える。
みんなが見ているのは僕というフィルターを通した父さんや会社なんだ。
僕をそのまま愛してくれる人は、
父さんと母さんしかいないんだ。
父さんと母さんは僕に自由をくれた。
そんなのいらない。
自由は責任を伴うと父さんは言った。
僕はいらない。
もっともっと僕を囲んで、閉じ込めて、
小さな箱に入れていつも眺めて愛でて欲しい。
雪平はいくら羽ばたいても終わりの見えない鳥籠にいる僕の止まり木になってくれた。
雪平という止まり木で羽を休めるととても安心する。
僕は好んでその止まり木を求めた。
雪平に辿り着く前までは恋人と呼べる人もいた。
恋をすると気持ちを縛られる、
それに喜びを得ていた。
心も体もその人のものでいたい。
でも物足りなかった。
何かが足りなかった。
そんな時沖田さんと知り合った。
彼は僕を閉じ込めたいと言った。
胸がときめいた。
この人はわかってくれるかもしれない。
雪平から監禁の恐れがあると警告されたが、それを聞いてワクワクしている自分がいた。
そして沖田さんに監禁、拘束された。
高揚した。
閉じ込められることに、拘束されて自由を奪われることに気持ちが昂った。
沖田さんは僕に危害を加えるようなことは決してしなかった。紳士だった。
監禁して紳士というのもおかしいかもしれないが。
紳士すぎて少し物足りないこともあった。
もっと強引でもいいのにって思った。
キスされた時にもっとして欲しくてつい欲が出た。
早々に舌を絡ませてしまった。
沖田さんはそんな僕に
「慣れてるのは萎える」
と言った。
僕は間違えた。
こうじゃなかった。
沖田さんが求めているのは弱々しい、
壊れそうな僕。
そうか、そっちか。
僕はそっちの方が得意だし好きだ。
そうさせてくれる沖田さんは僕のことをわかってくれているようで嬉しかった。
演じなくても素でいられた。
沖田さんのセックスは優しかった。
監禁、拘束というスパイスが加わってとても刺激的で興奮した。
僕は溺れそうだった。
この状況に、気持ちよさに抗えなかった。
セーフワードの『祥人さん』は雪平と二人で決めた。
「どうして名前なの?」
と聞いたら、
「あなたが彼の名前を呼ぶのは許し難い」
雪平はそう言った。
普段は何も言ってくれないけど、きっと妬いてくれている。
何度も抱かれて意図せず口にしていたセーフワード。
でもどれだけその言葉を口にしても雪平は助けに来なかった。
どうして?
僕を助けに来てくれる雪平を見たいのに。
僕を奪いに来て欲しいのに。
雪平は来てくれた。
助けに来てくれた。
僕を奪いに来てくれた。
「ご無事ですか?」
と言われた時にゾクゾクと興奮した。
どうして今?
あんなにセーフワードを言ったのに。
その時はすぐにわからなかった。
でもわかった。
僕と雪平が決めたセーフワードは『祥人さん』だったけど、雪平のセーフワードがあったんだ。
『好き』
雪平の理性を壊すワード。
僕がそれを言ったから雪平は怒り狂っている。
鳥籠の中の止まり木は僕を癒す。
その手で疲れた羽を優しく撫でる。
いつしかその優しい手によって僕の羽は少しずつもがれていた。
お前はここにいろとでも言うように、
気づかないうちにもがれた羽は、まだ飛べるけど着実に僕の自由を奪う。
自由は責任を伴う。
父さんはそう言ってた。
雪平が責任取ってよ、雪平が悪いんだよ。
奪ったなら今度は与えて。
不自由な愛が僕は欲しい。
だから僕は鳥籠の鍵を内側から閉める。
声が聞こえる。
「君は自由だよ」
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