自由を知らない籠の鳥は淡く甘い夢を見る

秋臣

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監禁①

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─監禁─

「伊純くんは寝顔もかわいいね」

「ん…誰…?」
「起きた?」
「え…ここどこ…?」
上体を起こしキョロキョロしてる。
無意識にベッドから降りようとする。
ガシャン。
伊純くんがよろける。
「おっと、危ない」
彼の体を支える。
「…え?なに?え…」

ようやく違和感に気づく。
「なにこれ…」
伊純くんの両手首、両足首には手枷、足枷がついている。
足枷は鎖でベッドのフレームに繋がれていた。

「嫌だ!外して!」
「伊純くん、落ち着いて」
「え……店長…?」
「そうだよ」
「どうして…」
怯えている。
「ここは俺の部屋。やっと来てくれたね、嬉しいよ」

「怖い、外して!帰りたい!」
暴れる伊純くんを抱きしめる。
「そんなに暴れないで」
俺の腕の中でパニックになって暴れる伊純くん。
「店長…外して…助けて…」

ゾクゾクする。
怯えてる姿に、
足枷をつけたその姿に、
俺に助けを求める姿に。


急におとなしくなった。
もしかして…
「伊純くん、トイレかい?」
昨日二人で飲んで伊純くんが寝てしまってから、彼はトイレに行っていない。

「外してください、お願いします…」
ゾクッ
「早く…」
ああ…
「俺が連れて行くから、ゆっくり歩いて」
伊純くんの体を支えてトイレへ連れて行く。手枷と足枷はつけたまま、長い鎖を引き摺り歩きづらそうだ。
「これ…外してください…」
手枷がついてるので排泄に困っているようだ。

「心配しなくていいよ、俺がしてあげるからね」
伊純くんのズボンのファスナーを下ろす、下着に触れる。
「…嫌だ!触らないで!」
「でも漏れちゃうでしょ?いいの?」
「や…」
目に涙をいっぱい溜めている。
ふっ
「冗談だよ、揶揄ってごめんね」
手枷を外す。
「終わったら教えてね、手洗いも付いてるから」

怖がらせすぎてはいけない。

しばらくすると伊純くんがトイレから出てきた。
「外してくれて…ありがとうございます…」
こんな時にでさえ礼を言う彼の律儀さが奥ゆかしい。

「お腹空いただろ?朝食にしよう」

ダイニングへ連れて行く。
手枷は外したままにしてある。
「座って」
テーブルの上にはたくさんの料理が用意されている。
「どうぞ、召し上がれ。君の口に合うといいけど」
「……」
「このメニューは嫌いかい?作り直そう」
「…どうしてこんなことするんですか?」
ふふ
「それはね、俺が君のことを好きだから」 
「え…」
涙目で俺を見る。

「俺の部屋に君を閉じ込め、俺だけが君を愛でたい。誰にも見せたくない、俺だけのものにしたい」

「怖い…」
涙をポロポロ溢して泣く伊純くん。
なんてかわいらしいんだ…

「泣かないで」

堪らなくなるから。


「ゆっくり食べて」
伊純くんはひとしきり泣くと、なにか思うところがあったのか、少しずつ食事を摂り始めた。
前にも思ったが食事の所作が綺麗だ。
「よかった、食べてくれて」
フルーツをほんの少ししか食べられなかったけど、お腹が空いたら、またすぐ作るから問題ないよ。食べられる時に食べようね。
「…ごちそうさまでした」
足枷をつけられながらも食事への礼を言う君が素敵だと思った。

「お茶を淹れよう。
紅茶がいいかな?コーヒー?
紅茶にしようか」
「……」

リビングのソファーに座らせ、
カップをローテーブルに置く。

「家に帰りたい…」
また思い出したように口にする。
「どうして?」
「…怖い…帰りたい…」
「君の家はここだよ」
「やだ…」
「ここで俺と暮らそう」
「やだ…お願い、帰らせて…」
「俺のこと嫌いかい?」
「…怖い」

隣に座り伊純くんの手をそっと俺の手で包む。
ビクッと体を強張らせる。

「大丈夫、なにも怖くないよ。
俺は君を大切にしたいだけだよ」
「……」
「怖がらせたいんじゃない、ここに居て欲しいだけ。君とずっと一緒に居たいだけだよ」
「……」
「ねえ、見て。君の好きな薔薇だよ。
君に喜んでもらいたくて、ありったけ集めたんだ」

リビングは彼の好きな薔薇でいっぱいだ。
実は寝室も薔薇で埋め尽くされていた。
気づいていなかったみたいだけど。

「クリスティアーナ …」
「そう!君は本当に覚えが早いね」
「花弁が多くて淡い繊細なピンク色…」
「好きなんだよね」
コクンと頷く。

「薔薇が一番美しい状態の時に君に来てもらえて嬉しいよ」
「帰らせて…」
「そんなこと言わないで。こんなに薔薇が美しいんだよ?君のための薔薇だよ?」
君の魅力を引き立てるに相応しい美しい薔薇だ。
君に堪能して欲しい。

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