ショートショート集

秋臣

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「明日の夜会える?」
そう海聖かいせいに呼び出された。

なんだろう?同棲の話かな?
いい物件見つかったのかな?

俺たちは付き合ってからもう3年ほど経つ。
お互い合鍵は持っているが、行ったり来たりは面倒だしもっと一緒にいたい。
どちらからともなく、一緒に住もうという話になった。
嬉しくてすぐに物件を探し始めた。
どんなところに住みたいか想像して探すのはとても楽しくてワクワクする。
駅近でキッチンは三口コンロがいいとか、あんまり高層じゃない方がいいとか、風呂に追い焚きは欲しいとか、いろいろ意見を出し合った。

そして海聖に呼び出された。
物件の話だろう。
ウキウキしながら海聖の部屋へ行く。

「ごめん、呼び出しちゃって」
「ううん、全然」
だって楽しみだし。
リビングに通されるとコーヒーを淹れてくれた。海聖の淹れるコーヒーは美味い。
一緒に住んだら毎日淹れてくれるんだって!

「いい物件見つかった?」
コーヒーを飲みながら聞くと、
黙ったまま、テーブルの上に何かを置いた。
俺の部屋の鍵だった。
あ、そっか、同棲するならもう必要ないもんな、なるほど。
「鍵なんていつでもいいのに」
そう言った俺に
「別れてください」
海聖はそう言った。

え?
今なんて言った?
え?

「俺と別れて」

海聖は俯いたまま顔を上げない。

「…待って…わかんない、何言ってんの?」
「別れて…」
「なんで!」
「…………」
「だって…一緒に住もうって…あんなに二人で楽しみにしてたのに…なんで?」
「ごめんなさい…」
「…俺のこと嫌いになった?」
海聖がハッと顔を上げる。
目に涙をいっぱい溜めながら首を振る。
「じゃあなんで?言ってよ、海聖」
「……」
「俺別れたくない、一緒にいたい、一緒に住みたい。言って?なんで?」


「猫…」

ん?

「…猫怖い…」

ん?
んん??

「猫?」
「怖い…」

口元が緩んでしまう。
「…待って、海聖、猫怖いの?」
「…うん」
ふっ…
ふふ…
ふははははは!
「待って…w猫?怖い?w」
「…犬も…」
もうダメw
あははははは!
ヒーヒー!お腹痛いww


「……敦也あつや、犬とか猫飼いたいって言ってたから…」
あ……
「俺、動物怖くて…でも言えなくて、怖いなんて言えなくて…」
「だって猫の写真とか映像見てかわいいって言ってたじゃん?」
「写真とか映像ならかわいいって思うけど、側にいるのは怖い…だから…」
「だから別れたいって言ったの?」
「うん…だって敦也、飼うの楽しみにしてるのに、俺といたら一生飼えない…俺どうしたらいいかわからなくて…」

海聖のおでこに俺のおでこをくっつける。
「ねえ、俺、海聖がいてくれれば犬も猫も要らないんだよ?」
「でも…」
海聖を抱きしめる。
「ペット不可の物件を見つけよう」
「だってあんなに楽しみにしてたじゃないか」
「それは海聖と住めるのが楽しみなんだよ、犬や猫じゃない」
「ごめんなさい…」
「なんで謝る?ちゃんと言ってくれればいいのに」
そう言って海聖にキスする。
「海聖、俺と住んでくれる?」
「…うん」
「毎日コーヒー淹れてくれる?」
「うん」
「じゃあ一緒に物件探そう」
「うん」

190cm ガチムチ、ゴリマッチョの元ラガーマン。
あだ名は壁と言われるこの男がまさかの動物怖いって…
かわいい!
こういうところがすごくかわいい。
涙目の海聖が大好きだ、早く一緒に住みたい。
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