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帰り方を教えて
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「藤田、気をつけて帰れよ」
「おう」
放課後、帰ろうとする俺にいつも声をかけてくる佐伯。一年の時クラスが一緒だった、それだけ。すごく仲がいいわけじゃない、会えば世間話する、それだけの仲。
「今日は曇ってて雨降り出しそうだから早めに帰れよ」
「おう」
「風が強くて物が飛んでくるかもしれない、気をつけろ」
「おう」
「雨が降ってきたぞ、滑らないようにな」
「おう」
「かなり酷い雨だ、川に近寄るなよ」
「おう」
「晴れてて気持ちいいからって、ボーッとするなよ」
「おう」
「電車が遅延してるらしい、確認しろ」
「おう」
「そっちで生活指導の安井が張ってる、西門から出ろ」
「おう」
「雪が積もってかなり滑るから、ゆっくり歩け」
「おう」
「夕焼けが眩しくても目を細めてたら危ないぞ」
「おう」
なんなの?
毎日毎日なんなの?
オカンかよ。
言われ慣れてなんとも思わなくなり始めてる俺もどうかと思うけど、佐伯なんなの?
「藤田、正門のところで…」
「うるせえな、なんなんだよ、毎日なんなの?」
「あ…あの…」
イライラする。
「なに?」
「正門のところで島野さんが待ってるって…」
「え?」
「藤田に伝えてくれって頼まれて…」
「あ、あーそうなの?ごめん」
「うん…」
佐伯を置き去りにして正門へ向かう。
よくわかんねえやつだな。
島野さんは同じ2年のロングヘアの似合うかわいい子だ。
「島野さん、何か用?」
「ごめんね、あの、あのね…一緒に帰ってもいい?」
「え?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど…」
「駅まで一緒に帰ろ?」とかわいらしい笑顔で俺の顔を覗き込む。
なにこれ、なんかいい感じじゃない?
一緒に駅まで向かう。
島野さんはずっと声掛けたかったと言っていた。
「藤田くんは付き合ってる人いる?」
「いないよ」
「よかった!」
どういう意味?期待しちゃうよ?俺。
それから島野さんと一緒に帰ることが増えた。
と同時に佐伯の送り出しは減った、と言うより無くなった。
元々要らないんだけどね。
島野さんはかわいいし、話してて楽しい。いい子だなと思う。並んで歩いて、手がほんの少し触れたら真っ赤になって照れてる。
これって押していいのかな、勘違いじゃないよな?
ふわふわした気持ちは心地いい。
でも何か足りない。
帰ろうとしたら雨が降ってきた。
「滑らないようにな」
そう言ってたっけ。
帰ろうとしたら電車遅延してた。
「確認しろ」
そう言ってたよな。
帰ろうとしたら生活指導の安井に捕まった。
「西門から出ろ」
そう言ってくれなきゃわからないだろ。
晴れてたら気持ちよくて、
風か強かったら飛来物に警戒して、
雪が降ったら一歩一歩踏みしめて、
夕焼けが眩しかったら目を細める。
目を細めながら綺麗だなって思う。
なのに物凄く寂しいのはなんで?
帰ろうとしている背中に
「晴れてたらどうするんだっけ?」と聞く。
「え?」
佐伯が振り返る。
「晴れてたらどうするんだ?」
もう一度聞く。
「晴れてたら…気持ちいいからってボーッとするなよ」
「ボーッとしちゃったら?」
佐伯が俺を見る。
「危なくないように隣を歩く」
「俺、ボーッとしてる」
「……」
「危ないよな?」
「……」
「隣、歩いてくれねえの?」
「……」
「歩いてよ」
「…うん」
「ちゃんと俺の面倒みて、何もできないんだ、俺」
「…うん」
「一緒に帰ろう」
「おう」
放課後、帰ろうとする俺にいつも声をかけてくる佐伯。一年の時クラスが一緒だった、それだけ。すごく仲がいいわけじゃない、会えば世間話する、それだけの仲。
「今日は曇ってて雨降り出しそうだから早めに帰れよ」
「おう」
「風が強くて物が飛んでくるかもしれない、気をつけろ」
「おう」
「雨が降ってきたぞ、滑らないようにな」
「おう」
「かなり酷い雨だ、川に近寄るなよ」
「おう」
「晴れてて気持ちいいからって、ボーッとするなよ」
「おう」
「電車が遅延してるらしい、確認しろ」
「おう」
「そっちで生活指導の安井が張ってる、西門から出ろ」
「おう」
「雪が積もってかなり滑るから、ゆっくり歩け」
「おう」
「夕焼けが眩しくても目を細めてたら危ないぞ」
「おう」
なんなの?
毎日毎日なんなの?
オカンかよ。
言われ慣れてなんとも思わなくなり始めてる俺もどうかと思うけど、佐伯なんなの?
「藤田、正門のところで…」
「うるせえな、なんなんだよ、毎日なんなの?」
「あ…あの…」
イライラする。
「なに?」
「正門のところで島野さんが待ってるって…」
「え?」
「藤田に伝えてくれって頼まれて…」
「あ、あーそうなの?ごめん」
「うん…」
佐伯を置き去りにして正門へ向かう。
よくわかんねえやつだな。
島野さんは同じ2年のロングヘアの似合うかわいい子だ。
「島野さん、何か用?」
「ごめんね、あの、あのね…一緒に帰ってもいい?」
「え?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど…」
「駅まで一緒に帰ろ?」とかわいらしい笑顔で俺の顔を覗き込む。
なにこれ、なんかいい感じじゃない?
一緒に駅まで向かう。
島野さんはずっと声掛けたかったと言っていた。
「藤田くんは付き合ってる人いる?」
「いないよ」
「よかった!」
どういう意味?期待しちゃうよ?俺。
それから島野さんと一緒に帰ることが増えた。
と同時に佐伯の送り出しは減った、と言うより無くなった。
元々要らないんだけどね。
島野さんはかわいいし、話してて楽しい。いい子だなと思う。並んで歩いて、手がほんの少し触れたら真っ赤になって照れてる。
これって押していいのかな、勘違いじゃないよな?
ふわふわした気持ちは心地いい。
でも何か足りない。
帰ろうとしたら雨が降ってきた。
「滑らないようにな」
そう言ってたっけ。
帰ろうとしたら電車遅延してた。
「確認しろ」
そう言ってたよな。
帰ろうとしたら生活指導の安井に捕まった。
「西門から出ろ」
そう言ってくれなきゃわからないだろ。
晴れてたら気持ちよくて、
風か強かったら飛来物に警戒して、
雪が降ったら一歩一歩踏みしめて、
夕焼けが眩しかったら目を細める。
目を細めながら綺麗だなって思う。
なのに物凄く寂しいのはなんで?
帰ろうとしている背中に
「晴れてたらどうするんだっけ?」と聞く。
「え?」
佐伯が振り返る。
「晴れてたらどうするんだ?」
もう一度聞く。
「晴れてたら…気持ちいいからってボーッとするなよ」
「ボーッとしちゃったら?」
佐伯が俺を見る。
「危なくないように隣を歩く」
「俺、ボーッとしてる」
「……」
「危ないよな?」
「……」
「隣、歩いてくれねえの?」
「……」
「歩いてよ」
「…うん」
「ちゃんと俺の面倒みて、何もできないんだ、俺」
「…うん」
「一緒に帰ろう」
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