霧晴れる時、君は

秋臣

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最終話 プロポーズ

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昨年同様、いつもよりオシャレして行く。
スイートに泊まってもおかしくない格好で行きたい。
「今年はタキシード着ないの?」と姉ちゃんに言われたけど、今年は要らない。あれはあの時が最高だったと思うから。
助手席の悠馬が抱えていた俺のバッグを落として車内にぶちまける。
「わあ、ごめん!」
だから後部座席に置いていいって言ったのに自分で持つって聞かないんだから。
慌てて拾う悠馬の手が止まる。
「ん?どうした?」
「…ねえ」
「ん?」
「これ…本気?」
「え?」
悠馬の手にゴムの箱が二つ。
「だって足りないと困るでしょ?」
「足りるように使ってよ!こんなにいらない!」 
使う気ではいるんだ、かわいい。
「頑張ろうぜ!」
「頑張らない!湊くん、最低!」


あっぶね、バッグに入れておかないでよかった…
ホッとしてジャケットのポケットを触る。
小さな箱の感触を確かめる。
今日は俺が男気を見せる、そう決めてた。
あのスイートで悠馬にプロポーズする。
その指輪が俺のポケットに入ってる。
受け取ってくれるかな、喜んでくれるかな、引かれるかな…
どういう反応を悠馬がするかわからなくて俺はずっと緊張してる。
でもきっとあの夜景と海の景色が助けてくれる。だから怖くない。
そしてまた来年の予約をする。
この先何年も何十年も3月にはここに来る、悠馬と一緒に必ず来る。
だって悠馬が作ってくれた『この先を支えられる思い出』があるから。
それを二人で更新して行くんだ。
プロポーズの言葉はそれでいいよな?
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