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一年後
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一年後
「晴れて良かったね!」
車の窓からの景色を眺めて悠馬が嬉しそうにしてる。
今日は3月最初の土曜日。
あの日からもう一年経ったのか。
この一年の間に俺は大学生になり、悠馬は受験、そして晴れて大学合格、そして先日高校を卒業した。
卒業式はしれっと保護者席で参列した。
入口で悠馬のお母さんに会ったのでご一緒させてもらった。
「相変わらず仲がいいわね」と言われちゃった。というか勝手に来ただけなんだけど…
高校生の悠馬を見られる最後の日だから見届けないとね。
「香坂先輩!」
声がする方を見ると坂井くんと水口くんが手を振ってる。その横には悠馬がいるが目を見開いて、なんでここにいる?って顔してる。来ちゃった。
ぷいっとそっぽを向いちゃったけど、ちっちゃく手を振ってくれたのを俺は見逃してないぞ。
式が始まる。
悠馬が高校生ではなくなる、知り合った高校を卒業する…感極まって序盤から涙が溢れる。
隣に座ってる悠馬のお母さんが笑いを堪えながら慰めてくれる。
結局ずっと泣きっぱなしだし、後輩たちに
「香坂先輩ウケるw」とか言われちゃうし、
先生たちには
「お前なにしに来たんだ?」と呆れられるし、
「湊くんが面白くて全然泣けなかったわよ」と悠馬のお母さんに言われちゃうし、ダメ押しに
「泣きすぎ!恥ずかしいからやめて!」と悠馬に怒られた。
悠馬は俺の通う大学とは違う大学に通う。
同じ理系だし、あわよくば一緒の大学ならいいなと思っていなかったわけではない。
でも
「この先ずっと同じ道を歩けるわけではないから、遅かれ早かれ違う場所で生きなきゃね」と自分の歩みたい道を選択した。
その考え方は正論だけど寂しい。
俺はその寂しさにどうしても慣れなくて辛い。
「そのために『支えられる思い出』を作ったんでしょ?」
悠馬の方が大人だった。
地方とかではなかったのが唯一の救いだ。遠距離になったら耐えられない。
そう思うことで自分を慰めるしかなかった。
それから数日後が今日だ。
一年ぶりにあのホテルのスイートに泊まる。
今回は俺が全額持つことになっている。
そのあまりにも高額な料金にこれを昨年悠馬はやったのかと思うとその男気に改めて惚れ直す。しかも高校生で。
すげえ、俺の彼氏、すげえかっこいい!
そのためにバイトはかなり頑張った。
バイトは相変わらず浅野さんのところでやってる。
高校生、未成年の縛りがないとできることも増えるので、ヌードモデルとまではいかないが、なかなか際どいラインを浅野さんに求められるようにもなってきた。
あまりにも際どいと浅野さんと話し合って決める。モデルのくせにこれはちょっと…と苦言を呈しても浅野さんはちゃんと意見を聞いてくれる。その上で説得されることもあるけど、話し合いに応じてくれるのはありがたいと思ってる。
おまけにモデル名を公表しないでくれているのがなにより助かってる。様々な媒体で自分の姿を目にすることも増えたが、身バレはしていない。それは全部浅野さんの仕事で、モデル名は一切明らかにしないという方針と条件でOKなところでしか受けていないから。他のファッションモデルとかだとこうはいかないだろうから、浅野さんに声をかけてもらえてよかった。
「晴れて良かったね!」
車の窓からの景色を眺めて悠馬が嬉しそうにしてる。
今日は3月最初の土曜日。
あの日からもう一年経ったのか。
この一年の間に俺は大学生になり、悠馬は受験、そして晴れて大学合格、そして先日高校を卒業した。
卒業式はしれっと保護者席で参列した。
入口で悠馬のお母さんに会ったのでご一緒させてもらった。
「相変わらず仲がいいわね」と言われちゃった。というか勝手に来ただけなんだけど…
高校生の悠馬を見られる最後の日だから見届けないとね。
「香坂先輩!」
声がする方を見ると坂井くんと水口くんが手を振ってる。その横には悠馬がいるが目を見開いて、なんでここにいる?って顔してる。来ちゃった。
ぷいっとそっぽを向いちゃったけど、ちっちゃく手を振ってくれたのを俺は見逃してないぞ。
式が始まる。
悠馬が高校生ではなくなる、知り合った高校を卒業する…感極まって序盤から涙が溢れる。
隣に座ってる悠馬のお母さんが笑いを堪えながら慰めてくれる。
結局ずっと泣きっぱなしだし、後輩たちに
「香坂先輩ウケるw」とか言われちゃうし、
先生たちには
「お前なにしに来たんだ?」と呆れられるし、
「湊くんが面白くて全然泣けなかったわよ」と悠馬のお母さんに言われちゃうし、ダメ押しに
「泣きすぎ!恥ずかしいからやめて!」と悠馬に怒られた。
悠馬は俺の通う大学とは違う大学に通う。
同じ理系だし、あわよくば一緒の大学ならいいなと思っていなかったわけではない。
でも
「この先ずっと同じ道を歩けるわけではないから、遅かれ早かれ違う場所で生きなきゃね」と自分の歩みたい道を選択した。
その考え方は正論だけど寂しい。
俺はその寂しさにどうしても慣れなくて辛い。
「そのために『支えられる思い出』を作ったんでしょ?」
悠馬の方が大人だった。
地方とかではなかったのが唯一の救いだ。遠距離になったら耐えられない。
そう思うことで自分を慰めるしかなかった。
それから数日後が今日だ。
一年ぶりにあのホテルのスイートに泊まる。
今回は俺が全額持つことになっている。
そのあまりにも高額な料金にこれを昨年悠馬はやったのかと思うとその男気に改めて惚れ直す。しかも高校生で。
すげえ、俺の彼氏、すげえかっこいい!
そのためにバイトはかなり頑張った。
バイトは相変わらず浅野さんのところでやってる。
高校生、未成年の縛りがないとできることも増えるので、ヌードモデルとまではいかないが、なかなか際どいラインを浅野さんに求められるようにもなってきた。
あまりにも際どいと浅野さんと話し合って決める。モデルのくせにこれはちょっと…と苦言を呈しても浅野さんはちゃんと意見を聞いてくれる。その上で説得されることもあるけど、話し合いに応じてくれるのはありがたいと思ってる。
おまけにモデル名を公表しないでくれているのがなにより助かってる。様々な媒体で自分の姿を目にすることも増えたが、身バレはしていない。それは全部浅野さんの仕事で、モデル名は一切明らかにしないという方針と条件でOKなところでしか受けていないから。他のファッションモデルとかだとこうはいかないだろうから、浅野さんに声をかけてもらえてよかった。
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